山崎 堅一 院長の独自取材記事
山崎どうぶつ病院
(さいたま市大宮区/大成駅)
最終更新日: 2023/01/22
大宮駅から車で約10分のバス通り沿いにある「山崎どうぶつ病院」。駐車場は約10台分完備され、ペットを連れてアクセスしやすい環境だ。1998年の開院以来、地域のペットの健康を見守り続けてきた。犬猫を始めうさぎ、フェレットなどにも対応し、院長が対応できない場合は専門の医師の診察が受けられる。山崎堅一院長は誠実な人柄で、気さくにハキハキと話しかけてくれて、ペットだけでなく飼い主への配慮も欠かさない。専門の医師による高度な診察が受けられるようになった経緯や、診療方針、力を入れている治療などについて詳しく話を聞いた。 (取材日2016年7月21日)
「1.5次診療施設」として、専門的な治療を提供
同院は各科目専門の医師による診察が受けられるそうですね。
地域のクリニックが1次診療施設で、大学病院など高度な医療を提供する病院を2次診療施設だとすると、当院は1次診療のように間口は広く、可能な限り2次診療のように深い医療を提供するスタンスですので、「1.5次診療施設」と言えるでしょう。科目と日数は限られますが眼科や外科、エキゾチックアニマルの専門の医師による診察が受けられます。エコーやX線など診断に必要な機器はそろっています。大学時代にお世話になった教授に、定期的に当院に来てもらったりもしています。患者さんは最初はご近所の方が中心でしたが、ホームページやクチコミをきっかけに群馬や茨城など遠方からも来るようになり、リピーターも増えました。1.5次診療施設としてここ数年で定着してきたと感じています。
人間のように細かい科目に分けて診察する動物病院は珍しいですね。
ペットも人間と同じく、1人の獣医師が全ての病気を診察するには限界があります。1人で全て受け持ち、わからないままにしておいては、医師としてストレスが溜まりますし、ご家族にいいサービスが提供できません。だから地元の患者さんのニーズがある科目についてはより高度な医療を提供したいと思い、専門の医師による診察を始めました。初めはエキゾチックアニマルから。大学の同級生や知人の紹介で科目を増やしました。ペットの医療として大きく捉えても、科目の細分化は時代の流れとも言えるでしょう。主治医である1次診療施設からの紹介で来院されるケースがよくありますが、診察後主治医の医師に報告書を渡し、その後の治療をお願いしています。セカンドオピニオンとして主治医には言わずに来院される場合もありますが、専門の医師が診断した後に、主治医と連携をとって治療することがペットのためになると考えています。
エキゾチックアニマルの診察について教えてください。
エキゾチックアニマルとは一般的には犬猫以外の愛玩動物のこと。当院では月1回、エキゾチックアニマルの専門の医師による診察を行っています。うさぎ、フェレット、ハリネズミ、ハムスターは、私が1次診療として見られる範囲で随時診察しています。エキゾチックアニマルを飼う方は、来院前にご連絡をくださる方が多いです。その時に私が犬猫を診察している獣医師であることや、範疇を超えた場合は専門の医師の診察を受けてもらうことを話して、ご了承いただけたら診察しています。専門の医師とは連携して対応しています。
ペットに合わせて負担をかけない治療を行う
診察時の心構えを教えてください。
動物病院としてきちんとした診療ができるのは当たり前のこと。それに加えて、動物たちに恐怖や痛み、ストレスをなるべく与えないようにしています。例えば、治療時に動物をただ抑えるだけなら誰でもできますが、当院ではただでさえ具合の悪いペットに、いかに負担をかけずに抑えられるか配慮します。入院したペットと食事をあげたりして時間をかけてコミュニケーションをとると、退院後ワクチン接種などで来た時に、逃げたりしないでいい子でいることがよくあります。ワンちゃんや猫ちゃんは言葉は喋らないけれど、態度で示してくれているのかもしれませんね。
犬と猫、どちらの診察が得意ですか?
犬と猫は両方好きですし、どちらか一方が得意というのはありません。ただ、診察時の接し方は正反対です。一般的にワンちゃんは声をかけてあげたり、スタッフみんなで応援してあげるとうれしそうなので、喜んでいるうちに治療するようにしています。一方猫ちゃんは初対面だと警戒心が強く、声をかけられたり、触られたりすることを好まないようです。声をかけずに、そっと治療したほうが円滑に進む場合が多いですね。
力を入れている治療はありますか。
ペットに病気が見つかった場合、その後の治療や食事療法などで予後に差が出ます。ですからペットも人間と同じく病気の早期発見・早期治療が大切です。当院はその一環で歯科診療に力を入れています。歯周病になると、歯茎が腫れてご飯が食べられなくなったり、心臓や腎臓などに悪影響を与えたりするためです。ペットは歯磨きを大抵嫌がるものですが、歯磨きガムや歯垢の蓄積を抑えるフードやおやつもあります。また、当院には歯科診療のための機器も充実しています。
ペットを元気に、飼い主の悩みを解消したい
印象的なエピソードがあれば聞かせてください。
犬が病院に迷い込んできたと思ったら、当院に通っているペットでした。自宅から脱走して当院に来てしまったようです。飼い主さんに連絡したところ、そのワンちゃんは当院が好きで、散歩の時も、当院をじっと見ていたり、中に入りたがったりするとのことでした。もしお話ができたら、当院が快適なのか聞いてみたいものですね。また、カルテがカルテケースに入らず、バインダー4冊分になるほど長く通ってくれたワンちゃんもいました。子犬の頃のワクチン接種から、今年の春にお亡くなりになるまで診させていただいて、感慨深いものがありました。
休日は何をしていますか。
友人の獣医師に誘われて、数年前からトライアスロンをしています。運動量が多いので、最初は疲れて診察に差し支えがあるのでは心配しましたが、体力がついたのか逆に疲れにくくなりました。日頃は前のめりに仕事をしているので、思いっきり体を動かすと精神的にリフレッシュできます。静と動のバランスは大事ですね。ライバルは若い頃の自分でしょうか。あの頃に負けないくらいの体力をつけたいですね(笑)。
獣医師の仕事を通して、気付いたことはありますか。
実は最初は薬学部に入学しましたが、学生生活を送るうちに、大好きな動物の医療に従事したい思いが強くなり、休学して獣医大学に入り直しました。でも、獣医師は動物が好きな人がなるのは当たり前のことで、それだけではいけません。獣医師の仕事を通して飼い主さんとのコミュニケーションが大切だと気が付きました。動物との暮らしは、飼い主さんの生活を豊かにしてくれますが、もしペットが病気になったら、一転して暗い気持ちになってしまいます。獣医師としてペットの病気を治すのはもちろんですが、飼い主さんのネガティブな気持ちを、ペットを治療することで解消してあげたいと思っています。病気のペットを連れてくる飼い主さんは悩み苦しみ、普通の心理状態ではないかもしれません。そんな時に病状や治療についてご理解、ご判断をいただくのですから、細心の注意を払っています。
最後に読者にメッセージをお願いします。
ペットも病気の早期発見・早期治療がカギを握ります。当院では早く病気が見つかって良かった、クリニックに来て良かったと思っていただけるような対応を心がけています。特に猫ちゃんは、ゲージに入れて病院に連れてくることがストレスになるせいか、ワンちゃんに比べると来院回数が少なく、飼い主さんが異変に気付いた時には悪化していることが多いです。猫ちゃんが連れて来やすい環境作りや、入院の際にはなるべく大きなスペースを用意するなどの配慮をします。スタッフ一丸となって動物を大切にすることを心がけています。気になることがあればぜひいらしてください。