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- 杉井 太市郎 院長、杉井 めぐみ 副院長
杉井 太市郎 院長、杉井 めぐみ 副院長の独自取材記事
アポロどうぶつ病院
(志木市/志木駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武東上線志木駅より徒歩12分。賑やかな駅前通りを抜け、落ち着いた住宅地に向かう県道113号線沿いに進むと、一面ガラス張りが印象的な「アポロどうぶつ病院」がある。健康診断や予防接種、一般診療のほか、腫瘍科、眼科、皮膚科、産科、歯科、循環器科と幅広くトータルに頼れる上、子犬のしつけを行う「パピークラス」を実施。「動物の行動学に基づき配慮した優しい診療を大切にしている」と語るのは、院長の杉井太市郎先生。公私にわたるパートナーである杉井めぐみ副院長とは、大学時代の同級生であり、お互い勤務医時代を経て、2008年にクリニックを開業した。プライベートでは、北海道や関西の「日帰りツアー」を行うという多忙な先生方に、獣医としての信念、診療方針などを息ぴったりに語ってもらった。 (取材日2016年4月14日)
動物のため、飼い主のために「役に立ちたい」
開業は2008年ということですが、この場所に決めた理由は?
【杉井先生】もともと馴染みがあった土地ではなく、マーケティングをしながらいろいろな土地を歩いて見て回る中で、純粋に「この場所良いね」とピンときたんです。先輩たちからも「開業したらずっと住み続けるのだから、自分がそこで暮らしていけるかどうかがすごく大事」と聞かされていて、そういう視点で見たときにいいなと思いました。そんな中、たまたま良いテナントにも巡り合えて。イチからのスタートということで、最初は地域の皆さんに自分たちのことを知っていただきたいと、チラシを作って自分たちでポスティングをするなど広報的なことも頑張りました。いまではクチコミで来ていただけることも多いですね。
一面ガラス張りがとても開放的で、清潔感がありますね。
【杉井先生】ありがとうございます。東南向きなので、ずっと太陽の光が入って明るいんです。院内は、消毒を徹底して行い、空気清浄機と脱臭機も使っています。においがついているということは汚れているということですし、汚れているということはそこに病原性のあるものがあるかもしれないということですので、そこはすごく気をつけていますね。
院長先生はなぜ獣医になろうと思われたのですか?
【杉井先生】中学時代の理科の先生が、かつて海外青年協力隊員として東南アジアで生物系の授業をされていた方で、授業の合間にそのお話をしてくださいました。先生のその活動に感銘し、「自分も動物に関わる仕事で世界の人の役に立ちたい! 」と思ったのが最初のきっかけです。普通、飼っていた犬が死にそうになったのを助けたかったとか、美談的なきっかけがある場合が多いと思うのですが、僕の場合は「役に立ちたい」というのがまず先に立って、動物のためであったり、人間である飼い主さんのためであったり、そこは現在もブレずに「役に立てている」と実感することで続けていられるように思いますね。
副院長先生のきっかけはいかがですか。
【めぐみ先生】小さい頃から動物や生き物、自然が大好きでした。小学校の頃にテレビ番組での動物と戯れる姿や、アニメ映画の威嚇する野生動物を目の前にしても「大丈夫、怖くない」と、野生動物と心を通わせていく名シーンにすごく憧れていました。その後、高校の進路指導の時期にちょうど獣医師のマンガが流行っていたり、学研の科学マンガの影響で遺跡発掘に興味を持ったものの、動物にあまり触れた経験がないため、現代の動物を勉強して過去に遡っていくのもおもしろいかなとか……本当にあれこれミーハーなんですが(笑)。大学では動物行動学研究室で行動のおもしろさに触れるなどしながら獣医師としての勉強を楽しんでいました。
幅広い患者さんの要望に、優しく真摯に寄り添いたい
子犬のしつけ教室などはまさにやりたい分野だったわけですね?
【めぐみ先生】動物が好きで獣医や看護師になることが多いですけど、病院に来る動物は病院が嫌いなんですよね。勤務医時代、「好きなのに嫌われる」を目の当たりにしてショックを受け、「嫌われない」「むしろ好きになってもらえる」方法として「パピークラス」を設けたり、行動学に配慮した診察を行うと良いという裏付けから、自分たちの病院を持ったときにはぜひ実現したいと思っていました。
2001年に東京農工大学を卒業後は、それぞれの勤務先に?
【めぐみ先生】私が見学に行った病院の院長先生から、「彼氏と将来一緒に開業するつもりなら、別の病院であっても同じような方針でやっているところに進んだ方がいい」とのアドバイスをいただきました。ご縁もあってその病院に杉井先生が勤務し、私はそこの病院から独立された先生の病院に勤務することになったんです。一緒に勉強会をするような関係の病院だったので、方向性も近かったですね。
勤務医時代、別々の病院でどんなことを学びましたか?
【杉井先生】お金をいただいて、命を預かって、責任を持って治療するということの重大さ、これは相当の努力が必要だし、自分の時間を割くことはもちろん、生半可な気持ちでやってはいけないこと。僕が勤務していた病院の先生はあまり言葉にせず、背中を見てついてこいというタイプの先生だったんですけど、先生を見ていて、プロとして動物と関わっていくというのはこういう姿勢なんだなというのを、すごく学んだ気がしますね。 【めぐみ先生】「こうしなさい」ではなくて、患者さんの要望に対して「これだけ方法があって、それぞれ良い点・悪い点がありますが、どれが良いですか?」と選択肢をご提示して、相談しながら患者さんに決めてもらうスタイルが勉強になりました。「なんでもいいよ、なんでもやるよ」という優しいスタンスで、幅広い患者さんに対応できるのがとても良かったです。
動物に好きになってもらうために「動物受け」を第一に
当クリニックの一番の特徴は?
【杉井先生】動物から好きになってもらうために、動物の気持ちの動き方や考え方を重視して診るようにしています。それはなかなか看板的に言葉でアピールできるものではありませんが、来院いただければ「いつもの病院と違うな」と気づいてくださると思うのです。例えば、予防注射で初めて来院されて、犬が慣れていなかったりした場合、診察台に上げずに下で10~20分歩かせておくこともあります。犬はにおいを嗅いで、気持ちがアガってくるとおしっこしたりするんですが、それくらい待ってあげたほうが、最終的に診察台の上で診察するときも落ち着いていて診させてくれるんです。そういう行動学的な裏付けに気をつけて診察しています。
そういう工夫があると、病院の前で嫌がるワンちゃんもいなくなりそうですね。
【杉井先生】病院嫌いな動物を飼っている飼い主さんは、病院に行くことのハードルがすごく高くなってしまっているんですね。病院を好きでいてくれれば気軽に足を運んでいただけて早期発見にもつながり、結果的に動物のためになるわけですね。【めぐみ先生】動物のしぐさから、彼らの気持ちを翻訳して伝えると、飼い主さんが動物のことを、より深く理解してくださるようになります。その方が飼い主さんと動物も良い関係が築けるので、みんなハッピーになります。
読者に向けて、動物を飼う上でのアドバイスをお願いします。
【杉井先生】家族構成や生活様式によって合う犬種、合う猫の種類が変わったりもするから、見た目だけではなく、自分が飼いやすい犬・猫を選んでもらうのも大事ですね。2頭目飼うときの1頭めとの相性とかも、犬同士のボディランゲージをきちんと見てあげないといけません。もととなる学問的な知識がないとわからないですから、行動面でのアドバイスもさせていただくようにしています。 【めぐみ先生】病院には動物を連れてこないといけないイメージがあるかもしれませんが、むしろ飼う前に相談に来てアドバイスさせていただきたいと思います。またどんな小さなことでも早めに相談いただけるとうれしいです。
お2人の今後の展望をお聞かせください。
【杉井先生】スタッフに動物と関わっていく楽しさ・醍醐味を伝えていきたいです。当院で学んだ動物との関わり方を財産と感じてくれる人が増えていくといいですね。【めぐみ先生】病院嫌いな子ほど一度来てもらいたいです。怖がりであっても、少しずつ慣らしていって、その子の世界を広げてあげられるといいなと思っています。動物の笑顔は、飼い主さんも笑顔にするパワーがありますから。飼い主さんにとっても、動物にとっても、スタッフにとっても、好きになってもらえる病院をつくっていきたいです。