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安部 晶子 院長の独自取材記事
あべ動物病院
(新座市/志木駅)
最終更新日: 2023/01/22
商業施設が建ち並ぶにぎやかな街の一角にある「あべ動物病院」。院内は白を基調として、淡いピンクをアクセントカラーに使用したやわらかな雰囲気。院長の安部晶子先生をはじめ、看護師、トリマーもすべて女性。女性ならではのこまやかな配慮で、それぞれに対してベストな獣医療を提供している。「本当に動物が大好きで、触れ合っているときが何より幸せ」と話す安部院長は、ペットが怖がることなく治療が進められるよう、治療以外の場面でも触れ合いを大切にしているという。東京大学附属動物医療センターなどで経験を積んだベテランの安部院長に、開業の経緯や、診療方針などを聞いた。 (取材日2016年6月16日)
元気で明るいベテランスタッフも心強い存在
開院にあたり、この地を選んだ理由をお聞かせください。
幼稚園のころからこの地域に住んでいますので、地元なんです。学生時代など、ここから離れていた時期もありますが、このあたりの変化を見守ってきた感覚です。昔と比べると、駅が大きく立派になったこともあり、随分と都会になったなぁと思います。新しいマンションもどんどん増え、マンション内でペットを飼われている方も多いですね。小さいころから地元で地域密着の動物病院を開院したいと思っていましたので、それが実現してうれしく思っています。
医院の特徴はどのようなところですか?
当院は、犬と猫に限定させていただいて治療を行っています。またトリミングや、ペットホテルのご利用も可能です。開院して10年以上経ちますので、長いお付き合いの飼い主さんもたくさんおられます。最近は猫ブームということもあり、子猫も増えましたが、割合的にはまだ犬のほうが多いですね。一次診療を中心に行っており、重症の場合は二次診療を行う病院をご紹介しています。また骨折などの外科手術が必要な場合は、提携している外科の先生に来ていただいて処置を行うこともあります。スタッフは全員女性で、看護師とトリマーで構成していますが、開院時からほぼ変わっていないのも特徴ですかね。長く一緒にいるため、仲も良くチームワークは良いと思います。とにかく彼女たちは動物の扱いには慣れているので、私よりもなついているケースも多いです(笑)。
こちらに来るペットの症状には、どのような傾向がありますか?
一般的な下痢や嘔吐、皮膚疾患など内科的な疾患が多いです。最近では、動物の老齢化により心臓疾患、腎疾患、肝疾患、関節疾患などが目につきますね。また、当院に来られる飼い主さんたちはとても熱心な方が多いです。例えば、フィラリアの予防のためのお薬ですが、当院の飼い主さんの9割以上の方がフィラリアの薬をきちんと飲ませていただいていますね。皆さまとても熱心に取り組んでくださっていると感じています。
治療は100人100通り。それぞれに寄り添う選択を
獣医師になろうと思われたきっかけや、開院までの経歴について教えてください。
動物が好きだというのが大きいですね。子どものころから「動物園のお医者さんになりたい」と思っていて、犬や鳥などいろいろペットを飼っていました。父は内科の医師で、親族にも医師が多いですが、私は動物が好きだったので獣医師の道に進みました。大学を卒業後、勤務医として都内の動物病院に勤めました。その時代は内科や外科など専門制度がなく、何でもこなせないといけませんでした。とても多忙な病院で、さまざまな経験をすることができました。その後は東京大学附属動物医療センターでも勤務しました。ここは重症患者が集まる施設で、あらゆる延命のための措置などを行っていました。当時は、動物に対する抗がん剤治療の導入が始まったばかりで、まだ副作用に対する対策なども確立されていませんでした。もう少し研究が進んでいれば、レスキューできたのにと思ったこともありましたね。その後地元に戻り、2003年に当院を開院しました。
先生が専門的に学ばれた分野について教えてください。
大学病院に勤めていた時代ですが、内科に所属して皮膚科の勉強を専門的に行っていました。犬の皮膚の病気には、一見同じように見えても様々な原因が関与していることがあります。そのため、皮膚病を知るためには、他の内科的疾患を知らなければなりませんでした。多岐にわたる皮膚疾患の臨床経験を重ねながら、知識や技術を修得するべく励んでいました。
診療にあたり大切にされていることを教えてください。
ペットは言葉を話すことができませんので、様子を見たときに不調に気付くことができるように観察眼を養うことですね。また高齢化が進み、発見される病気の種類が増えてきました。がんや心臓病などはほとんど人間と同じような症状をたどります。それに伴い医療のレベルも上がってきているため、治療の選択肢が広がりました。そこで大切になるのが、どのような治療方針をとるかということです。
治療方針はどのように決めていかれるのですか?
飼い主さんが、どこまで望むのかよく話し合って決めることが肝要です。金額的なことや体力的なことなどさまざまな問題が出てきます。そしてその選択がペットにとって良いことなのかを考えることも重要です。治療を頑張りすぎて飼い主さんが疲弊してしまうと、ペットもそれを感じとってしまい、みんなが苦しい思いをすることもあります。どのような治療が良いのかは100人いたら100通りありますので、患者さんとよく相談をして決めるということを大切にしています。そして、自身の方針としてはどんな病気であれ、病状と照らし合わせながら、いかに快適に長生きしてもらうか考えています。
これからもホームドクターとしてペットの健康を守る
獣医師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか? また逆に難しいと感じる部分は?
やりがいというか、やはり私は動物が大好きなので、触れ合っている時がとても楽しくて幸せを感じます。本当にかわいくて。特にうれしいと感じるときは、当院で看取りを行った飼い主さんが、また新たにペットを迎えられて、当院に来てくださることですね。ペットロスなどで、もうペットを飼いたくないと言われる方もいらっしゃいますので。難しいと感じることは、動物が抵抗してしまって治療を受け入れてくれない時です。やはり人間と違って、同意して病院に来ているわけではない、という点が大きいです。病院やお手入れが苦手という場合には、普段からなるべくスキンシップを心がけて、人慣れさせるということが大切だと思います。
かかりつけ医を選ぶときのポイントは何かありますでしょうか。
医療のレベルが格段に上がってきているため、どの病院を選んでも大きな医療格差はないと考えています。ホームドクターを選ぶのなら、通いやすさや得意としている分野がある病院など、なるべくご自身やペットの状況に合った、相談しやすい所に行っていただくのが良いと思います。重症であったり、難しい病気で行く専門病院はまた違った価値観だと思いますが。
今後の展望についてお聞かせください。
地域密着のホームドクターとして、現状を維持し続けていくのが一番だと思っています。しかし、ペットも人間も年を重ねるにつれて、さまざまな問題が出てきます。最も大きなところだと、病院までペットを連れてくることができない高齢の飼い主さんが増えつつあることです。訪問診療はできる治療に限りがあるため、十分に治療を行えないという理由からこれまでは対応していませんでした。今後、そういった病院にお越しいただくのが難しいケースに関して、どのような対策を取っていくかということが課題です。さまざまな状況に合わせて、これからも地域の皆さまと大切なペットに寄り添った医療を提供していきたいですね。