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佐藤 義広 院長の独自取材記事
平成動物病院
(川口市/東浦和駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR武蔵野線・東浦和駅からバスで約10分、建物が動物の顔の形になっている「平成動物病院」の待合室には、さまざまなお知らせのポスターが貼り出されている。院長の佐藤義広先生は「僕は口下手で、押し付ける治療も嫌いなので、ポスターにして待合室に貼っています」と笑顔で話す。同じ待合室には22年飼われている亀のイチローや、生薬の見本など、見ていて飽きることがない。佐藤先生はいろいろな治療法を調べては、それをとことん突き詰め実践に生かす勉強熱心なドクター。時間があれば本を読んで勉強し、情報を得ているのだという。なんとか治したいと思う佐藤先生の気持ちが多くの飼い主の共感を呼び、県外からの患者も多いという。動物医療にかける熱い思いを語ってもらった。 (取材日2017年9月15日)
基本は西洋医学、その先に別な治療の選択肢がある
いつ頃開業されたのですか?
開業は1991年です。もう26年がたちました。最初の4年は、すぐ近くの柳崎で11坪の店舗を借りて診療していましたが、自分のクリニックを持ちたくて、現在の場所に移転しました。川口市を選んだのは、僕の出身地だからです。今でこそ多くの動物病院がありますが、開業当時はここから半径2kmの範囲に動物病院を見かけることはありませんでした。それも川口で開業しようと思った理由の一つです。どんな病気でも、自分でできる範囲で疾患にこだわらず対応したかったので、飼い主さんたちが気楽に入って来られるよう、建物は動物の顔の形にしたのですが、気付きましたか?
動物たちのためにさまざまな診療を考えられているそうですね。
当院は、一般の西洋医学の治療と併せて統合的な医療も取り入れ、飼い主さんにアドバイスをしています。開業前に勤務していた医院の先生からは獣医師はどうあるべきかといった、心構えを教わりました。開業すると、さまざまな病気を持った動物たちが受診します。その子たちをどう治療しようかという模索が、統合的な医療と出会うきっかけをつくってくれました。以前に勤務した開業医の先生からは、動物のために自分ができる限りのことをやるべきだと教わっていたし、何よりも獣医師の仕事が好きなので、治療のことを考えるのはまったく苦にはならないんです。
動物診療は間に飼い主さんが入るので大変なこともありますよね。
例えば飼い主さんに「漢方で治してください」と言われたら、それは違いますとはっきり言います。あくまでも治療の基本は西洋医学です。統合的な医療は、すべて西洋医学の治療があってこそだと僕は思っています。また、動物病院の治療は、必ず金銭的なことが出てくるので、僕はその子の治療を決める際、必ず見積書を作ります。飼い主さんも、お金はいくらかかってもいいから、できる限りのことをやってもらいたいという方から、金銭的な問題でできないという方までさまざまです。でも自分の家族だから、できる限りのことはやってあげたいという気持ちは同じだと思うのです。飼い主さんの意向に沿った治療を行うためにも、前もって費用は必ず説明するようにしています。過剰な検査も行いませんし、できるだけ必要最小限の治療で、飼い主さんの希望に応えてあげたいと思っています。
動物にも飼い主にも、ストレスを与えない治療が大事
先生が飼い主さんと接する中で心がけていることは?
治療に透明性を持たせるようにしています。最近は、治療の際、動物たちを奥に連れていって、飼い主さんに見えない所で治療を行うところも増えているようですが、これでは飼い主さんも不安ではないかと思ったんです。ですので僕は昔ながらのやり方で、必ず飼い主さんの目の前で、ほとんどの処置を行います。動物たちも、飼い主さんといるときが一番ストレスなく安心できるので、飼い主さんには保定をお願いすることもあります。動物たちもすんなりと治療を受け入れてくれることが多いんですよ。理解と納得をしていただきながら治療を進めるには、隠さないことは大事なことだと思います。また、遠方の方はどうしても来院が困難で、動物のことで悩んでいる飼い主さんも多いので、昨年よりインターネット通話サービスを使った相談も始めました。
日々の診療の中で、考え方に変化などはありましたか?
開業当時は、犬は番犬として屋外飼育。猫は屋内と屋外を自由に放し飼いという、昔ながらの飼い方をしているご家族が多かったですが、少しずつ、犬も猫も、ペットは家族という考えにシフトしてきました。そんな家族が病気になったとき、いつも僕は、自分が病気だったらどうしてもらいたいかと考えて治療を提案するようにしています。例えば治療の選択肢が手術しかないと言われるよりも、マストな治療法は手術だけれど、ベストとベターの治療には、こういった治療法もあるよと提案すれば、飼い主さんも納得して治療を選べると思うからです。
先生はなぜ獣医師になろうと思われたのですか?
やはり、動物が好きだったからです。小さい頃から哺乳類から爬虫類、甲殻類のカニや昆虫も飼っていました。あるとき、飼っていた柴犬が若くして死んでしまい、もっと早く気付いてあげられたらと思い、獣医師になろうと強く思いました。当時は獣医師はメジャーな職業ではなく、通っていた高校の500人中、獣医学部の受験は、僕を含めて2人くらいしかいませんでした。特に親は大反対でしたね。まだ獣医師の診療は家畜がメインでしたし、「人間と関わらない仕事なんて」とよく言われました(笑)。父は銀行員でしたから、将来はきちんと企業に勤めてほしいと思っていたのでしょうね。説得してくれたのは、担任の先生でした。その説得がなかったら、僕はこうしていなかったかもしれません。高校の担任の先生もそうですが、開業医の先生や大学病院の先生、そして一緒に働いているスタッフなど、人の巡り合わせのおかげでここまで来れたのだな、と思います。
飼い主の笑顔が見たいから、自らの勉強を欠かさない
先生は勉強熱心だとお聞きしています。
若い頃ならともかく、50歳を過ぎてからの勉強は本当に大変ですが、きちんと勉強すれば、飼い主さんへの説明も順序立てて行うことができます。なぜそうなるのかがわかっていれば、例えば治療の効果がなかったときに、多角的な応用を考えることができ、新たな選択肢を考えるのに非常に役立ちます。だからこそ、基礎から勉強する必要があると思っています。やはり、動物たちが元気になったときの飼い主さんの笑顔が見たいので、何とかしてあげたいと思ってしまいますね(笑)。だから休みの日も、本を読んで情報収集をしていることが多いです。
飼い主は動物の健康を守るために、何に気を付ければいいでしょうか。
僕も一番興味を持っているのはそこです。やはり、食生活でしょうね、食事のバランスと、ちょっと変だなと思ったら、症状が出る前に動物病院に行って診察を受けるのが重要でしょうね。特にアレルギーの子は、食生活は大事です。ペットフードはバランス面においてもいいと思います。ただ、最近は手作りフードがいいという飼い主さんも多いですね。また、具合が悪くなってペットフードを食べなかったりすると、自分で作る飼い主さんもいるので、動物たちの食事のアドバイスも行っています。
最後に、飼い主さんに向けてメッセージをお願いします。
とにかく諦めないでほしいですね。極端な話、飼い主さんが看病するだけでも病状は違ってきます。たとえ困難と言われても、それを越えるための方法があるかもしれません。例えば人間でも、「がん=死」ではないのと同じように、動物も一緒です。難しい病気ほど、何とかしてあげたいという気持ちで診療にあたっているので、飼い主さんが前向きになれるよう、今後もいろいろな情報を得て、発信していきたいと思っています。もう一つ、当院は、いろいろな特殊な治療を中心に行っているクリニックではなく、一般的な診療や予防を主軸としているクリニックだということを理解していただけたらうれしいですね。