勝間健介 院長の独自取材記事
勝間動物病院
(草加市/獨協大学前〈草加松原〉駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武スカイツリーライン松原団地駅東口を下車し、商店が立ち並ぶ通りを直進すると、目の前に現れる大きな橋と立ち並ぶ松の木。「松並木」の相性で地元の人に愛されている通りだ。この松並木が長年、愛犬との散歩コースだったと話すのは、「勝間動物病院」の勝間健介院長。幼い頃から自宅で犬を飼い、当たり前のように一緒に暮らす中で、自然と獣医師をめざした。一般診療から高度な救急医療まで診る病院で実力を養ったのち、生まれ育った故郷で開業。気軽に立ち寄ってほしいという思いを込めて、松並木を歩いている人からもよく見えるガラス張りの作りにした。地域の頼れる獣医師になるために続けている努力などについて、勝間院長に伺った。 (取材日2015年8月7日)
「されちゃった」ではなく、納得してもらえる治療をめざす
ガラス張りの窓から見える松が見事ですね。松原団地は、院長のご出身だとか?
3歳からこの町に住んでいて、目の前の松並木は、私と愛犬の散歩コースでした。近くには広い公園もあって、ペットを飼うには最高のロケーションですよ。団地やマンションが多いので小型犬を飼う方が増えており、飼い主さん同士のお友達もできやすいんです。それで、開業するならこの町と決めていました。ガラス張りにしたのは、散歩している人から院内が見えるように。いざというときのかかりつけ医になるには、入りやすく、親しみやすい環境を作ることが大切ですから。また、院内から見える松の景色も気に入っています。待合室を白で統一したのは、嫌な臭いや毛だらけのイメージがある動物病院をきれいなイメージにしたかったから。掃除が大変ですが、スタッフも頑張ってくれています。
クリニックの概要や治療について教えてください。
小さな病気を逃さずに確実な一時診療を行うことを目標にしているので、専門性を特化せずに、あらゆる症状を診ています。動物の種類は犬、猫、ハムスター、ウサギ、フェレットなど。特に多い犬と猫の割合はそれぞれ6対4くらい。猫は、地域柄、野良猫や保護猫が多いかもしれません。そのため、ウイルス性の風邪やノミの症状での来院が多い。犬はまんべんなく、嘔吐や下痢、吐き気、熱中症などさまざまです。ウサギは食べ物が胃から動かない食滞(しょくたい)や、歯が伸びたことによる不正咬合などを訴えて来られます。飼い主さんたちの意識は、比較的高いのではないでしょうか。治療の選択肢を提示すると、熱心に話を聞いて賛同してくれます。また、情報を自ら調べて勉強している方もいますね。
治療においては、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。
極力詳しい説明をし、飼い主さんの同意と納得を得られるように心がけています。とりわけ、納得していただくことは重要。たまに「手術をされちゃった」と言いながら転院してくる患者さんがいます。手術の意義を理解し、納得されていないので「されちゃった」なのです。誰でも必要のない手術や根拠のない手術はしたくないでしょうから、「必要だ」と納得してもらえるように説明する義務が、獣医師にはあると思っています。月並みですが、インフォームドコンセントが大事だということですね。今は、院外でCTやMRIの撮影もすぐに可能ですから、撮りに行っていただくこともあります。腫瘍がはっきり見つかったり、原因が明確になったりすることも、納得度を高める一つの方法だと考えています。
来院した動物にはストレスをかけないように留意する
動物に対しては、どのようなことを心がけていますか。
治療中にストレスをかけないように心がけています。同じ病気でも、その子の状況によって、かかってくるストレスが違うんですよ。例えば、来院の頻度が増えれば、動物の負担も増え、結果的にストレスが増します。嫌がり方が違うので、見ればわかりますね。そういう場合は、自宅で療養できる方法や薬物療法などで対処できるように計らうこともあります。また、ウサギの場合は診察台に乗ることすら嫌がることが多い。そういう場合は、なるべく下に降ろして診察してあげるようにしています。
院長は最近、栄養管理アドバイザーを取得したと伺いました。きっかけは何ですか。
私だけでなく、スタッフ全員が栄養管理アドバイザーの資格を取得しました。飼い主さんに「このフードがいいですよ」と勧めることが多いのですが、その成分を説明したり、病気のステージによってフードを使い分けたりすることで、より安心していただけると考えたのです。患者さんに自信をもってお話しをできるようになりましたから、院内全体がレベルアップしたと思っています。実際に患者さんからの相談も増え、コミュニケーションの活性化にもつながっていますね。
楽しそうに仕事をしていらっしゃいますが、とりわけ、やりがいを感じたことはありますか。
ある猫が腎不全にかかり、毎日来院して点滴などの治療を受けていました。残念ながら、猫は1年くらいで亡くなりました。でも、その飼い主さんは、もはや家で猫を飼っていないにもかかわらず、いまだに当院に顔を出してくださったり差し入れをしてくださったりするんです。「スタッフの方も本当によくしてくれたので」と感謝してくださるんです。それは、本当にうれしいですね。その患者さんにとって亡くなった猫は家族以上の存在だったと思います。少子高齢化の影響もあり、ペットがわが子の代わりだと考える人が増えていると感じています。そんな愛猫が病気にかかったけれど、1年の闘病生活をよく診てくれた、いい最期を迎えられた、と思っていただけたのは、獣医師としての喜びですね。
診療の幅を広げ、気軽に来てもらえるジェネラリストな獣医をめざす
獣医師をめざした理由を教えてください。
昔から犬を飼っていました。ヨークシャ-テリア、ミニチュアダックスフンド、小学生以降は秋田犬など。家族も犬が好きだったので、私も自然とそうなりました。私にとって動物は、癒やしてくれる存在。くつろいでいる時に寄って来てくれるだけで、最高ですよね。それで、高校生の時に動物に携わる仕事に就こうと自然に決意し、治したり助けたりできる獣医師という仕事に興味を持ったんです。日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)を卒業後は、ACプラザ苅谷動物病院日光街道病院(東京都足立区)などで経験を積みました。24時間診療で、胃捻転、けいれん、発作、誤食などで夜に駆け込む患者さんも相当数おり、さまざまな手術にも携われたことは貴重な経験です。
仕事以外ではどのようにお過ごしですか。スポーツなどをなさるのですか?
大学時代はウィンドサーフィン部に入り、鎌倉の海の家に月1〜2回ほど行きました。泳ぎが得意ではないのですが、ウィンドサーフィンだと、風を受けてどんどん進んで、比較的遠くの沖まで行けますからね。それが楽しみでした。真っ黒に日焼けした姿で大学病院に行き、怒られたこともありましたよ(笑)。今は、入院している動物たちも多いですからまとまった休みを取ることができず、ウィンドサーフィンはおろか、遊ぶこともできませんね。
最後にメッセージをお願いします。
地域に密着するためにはジェネラリストになる必要があると言いましたが、そのためにはもっと幅を広げていく必要があると思っています。設備も充実させていきたいと思っています。そして、患者さんが気軽に来院できる病院にしたい。患者さんからよく聞くのが「ちょっと様子を見た」という言葉。でも重症化することもあるので、できればすぐに来てほしいと思っています。もし来ることが難しいなら、電話でもいいので状況を教えてください。猫がトイレを行ったり来たりするのも、雄と雌では事情が違います。ハーハーしているのも、犬と猫では理由が違います。変わった点に気付いたら、すぐに獣医師にご相談ください。また、まだ動物病院にかかったことのない方は、ご自宅の近くで探すことをお勧めします。気軽に通うためには、やっぱり近くであることが大事。当院でも、遠くから来てくださっている患者さんがいらっしゃいますが、「近所にも顔をつないだほうがいいですよ」とお話ししています。いざというときに、それが命を救うことになるからです。来てくれるのは本当にありがたいのですが、動物のためを思うと、近くの獣医師がいいんですよね。