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- 山本 祥子 院長、春原 瑠美 副院長
山本 祥子 院長、春原 瑠美 副院長の独自取材記事
しょうこ動物病院
(草加市/新田駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武スカイツリーラインの新田駅から徒歩13分。駐車場や玄関にかわいらしくれんがをあしらった3階建てのビルが「しょうこ動物病院」だ。スタッフの優しい笑顔や、看板犬の「なつちゃん」たちに迎えられ、病院なのに心が和む。「動物たちのお母さん」という言葉がぴったりの山本祥子院長は、穏やかな人柄から慈愛の心があふれる、この道29年のベテラン医師。山本院長と副院長の春原(すのはら)瑠美先生から感じられる、話しやすさと物腰のやわらかな対応は、女性の医師ならではともいえる。院長のもとで治療全般を支える春原先生は、「飼い主さんの不安をしっかり受け止めたい」と語る頼もしい存在。そんな2人に、気になる動物たちの疾患や、診療に対する思い、今後の夢などを語ってもらった。 (取材日2017年8月1日)
話しやすく、親しみやすい病院でありたい
この地で病院を開業するまでの経緯を教えてください。
【山本院長】開業したのは1994年ですから、23年になりますね。大学を卒業してからは、大学の先輩の病院に勤務し、その後もうひとつ別の病院を経て開業しました。私が開業した頃は、女性が動物病院を開業するというのが、まだ珍しかったんです。なので、あえて女性とわかるように「しょうこ」という名前を病院名にしました。皆さんが思う獣医師って、少したくましい男性のイメージがあるじゃないかなと思うんです。「頼りない」と見られてしまうこともありますが、女性だからできることもあるわけです。「女性の先生だから話しやすい。行きやすい」と思って来ていただけたらな……との思いがありました。
診察をするにあたって心がけていることは何ですか?
【山本院長】いろいろなお話をしながら、その飼い主さんや動物たちに合った治療を提案するのが一番かなと。そのためにも、親しみやすく、何でも相談してもらえるような雰囲気づくりを心がけています。動物たちは、どこが痛いとか自分で言えないので、その分飼い主さんとしっかりコミュニケーションをとっていくことが大切です。それがいい治療につながると思っています。 【春原先生】病院へは、何か不安を感じて来ていらっしゃると思うので、それをまずはしっかり受け止めたいなと。心配なことは全部言ってもらって、すっきりして帰ってもらえるように。私はそこを大切に思っています。治療を進める上では、「何がなんでも自分で」ではなく、こちらが必要性を感じた場合やご希望があった場合には、総合病院などの二次医療施設をご紹介するようにしています。
相手の立場に立った診療ですね。診察時間についても工夫があると聞きました。
【山本院長】猫はとてもストレスを感じやすい動物なので、猫専用の診療時間を設けてみました。4~5月は犬の予防接種の時期にあたるので、犬が多く来院するんですよね。それで待合室でたくさん犬がいる中で猫が待っているのを見て「かわいそうだな……」と思って。みんなで相談して毎週火曜の15~16時を猫専用の診察時間にしたんです。猫の飼い主さんには、安心して連れて来れると喜んでいただけているようです。
ホームドクターとして身近な存在でありたい
開業時の20年前と比べて、多く見られるようになった疾患はありますか?
【山本院長】やっぱり犬や猫も高齢化してきているので、循環器や腫瘍の病気が増えてきていますね。小型犬に多く見られるのですが、心臓弁膜症が増えてきているように思います。心臓の弁がうまく閉じなくなって、心臓内で血液が逆流する病気です。小型犬を飼う人が多いので、それに比例して多く見られるようになったんだと思います。20年前と比べて、今の生活に病気の原因が潜んでいるというよりは、医学が進歩して病変を見つけやすくなっているのだと。エコーの機械も良くなっていたり、診断の方法も確立されてきていますので。昔はわからなかったのが、今はわかるようになってきた、ということでしょうね。 【春原先生】あとここ数年、飼い主さんの意識が高まったからだと思いますが、歯石や口の臭いの解決を求めるケースや、歯槽膿漏などの疾患についての相談が増えてきたように思います。
病名を聞いていると人間と同じですね。未然に防ぐ方法はありますか?
【山本院長】やはり人もある年齢を過ぎますと、1年に1回は必ず血液検査など検査を受けると思いますが、動物もやはり必要だと感じています。定期的に健康診断を受けることで、何か異状が出たときには早期発見につながります。早めに手を打つ、病気を治す、進行しないようにすることができるので。 【春原先生】若いと病気にかからないというわけではないので、若い子でも年1回、シニアの子は年2回の血液検査が理想です。病院嫌いの子が病院の環境に慣れるためにも、気軽に健康診断に来ていただけたらと思います。
終末期医療についてのお考えをお聞かせください。
【山本院長】終末期においては、治療の方法や最期をどのように迎えたいかということをご家族が選択できることが大切だと思います。どこまで治療してあげるのか、どこで最期を迎えたいのか。これは医師の考えというより、飼い主さんの考え方次第だからです。治療全般に言えることですが、一方的な治療にならないように、常に相手の立場に立って何が一番大切なのかを、ご家族と一緒に考えていくことが何よりも重要だと考えます。最期まで突き詰めて治療をしたいという方もいれば、「この子にはもう痛い思いはさせたくない」という考えの方もいるでしょう。例えば、がんでしたら、ある時期までは積極的な治療をして、それ以降は「もう痛みをとるだけの治療でいい」というご希望があれば、痛みをコントロールするケアに切り替えるなどの方法もあると思います。
病院というよりサロンのような場にしたい
先生にとっての癒やしやリフレッシュ法は何ですか?
【山本院長】家に猫を2匹飼っているんです。1匹は小さいときに病院の前に捨てられていた子をミルクで私が育てた子。もう1匹はトンキニーズで、病気で産めなくなった子をブリーダーの方から引き取りました。その子たちに日々癒やされていますね。リフレッシュ法は、ホットヨガです。体を動かして汗を流すのって気持ちいい! 家で猫たちに癒やされ、たまにホットヨガで汗を流して充電しています。 【春原先生】私はフルートで気分転換をしていますね。まだ習ってそんなにたっていないので、必死なんですよ……練習が。ほかのことは一切考えずに練習するとリフレッシュできます。癒やしは、ボストンテリアの愛犬との時間。うちの家族はみんな短頭種の犬が好きで、ペットショップで一目惚れした子なんです。帰宅したらいつもで迎えてくれて。遊ぼう!遊ぼう!って言われて、癒やしのはずがヘトヘトになる、なんてこともあるけど。でも楽しいですね。
看板犬の「なつちゃん」も癒やしキャラですよね。
【山本院長】そうですね。院内には犬3匹と猫3匹がいます。なつは生まれたときからこの病院の看板犬で。いま13歳のミックス犬です。患者さんのところで生まれた子をもらったんです。とってもおとなしい女の子。供血犬としてここでお仕事をしていたんですけど、今は高齢なので供血は引退しています。病院のロゴマークに描かれている犬も「なつ」なんですよ。盲導犬のキャリアチェンジ犬として譲り受けたラブラドールの「ゴルフ」も、人間がとにかく大好き。なつと一緒に別室にいたり、診察室にいたり。皆さんにもかわいがっていただいています。
今後どんな病院にしていきたいですか?
【山本先生】病院という枠ではなく、いつかはサロンのような場所にしたいですね。飼い主さんが動物を連れて「ちょっとお茶飲みに行こうよ」みたいなノリで集える場所。情報交換もできて、しかも病院の役割も担っている場所。そんなふうにならないかな、と模索中です。それ以外には、いま「動物を飼いたいんだけど、自分が先に死んじゃうから飼えない」という高齢の方が多い。そこの不安を解消できるような受け皿をつくりたいですね。「じゃ、その時はうちの子になりな!」って手を挙げてくれるような人が出てくるコミュニティーであったり、老犬ホームであったり。そういった、医療に限らず大きな枠で、人間と動物が一緒に安心して暮らせるための「何か」に取り組みたいなと。いつかは実現させたい夢ですね。