米元 仁 院長の独自取材記事
ぶし動物病院
(入間市/仏子駅)
最終更新日: 2023/01/22
西武池袋線仏子駅より徒歩3分のところにある「ぶし動物病院」。院内は明るく清潔感があり、居心地の良い雰囲気がある。運が良ければ同院で飼われている大きなカメの「もんちゃん」や「ふじこ」が出迎えてくれる。院長の米元仁先生はユーモアのある、明るくて謙虚な優しい獣医師だ。責任感が強く、「自分の行った診療に責任を取るつもりで、診断内容や検査内容、現在の状況を紙に書いて渡しています」と語る。間違った診断をしたときにはきちんと謝れる覚悟で、とのことだが、今はまだその事態に至ったことはないという。誠実で正直な診療を心がける米元先生に、いつも心に留めている思いなどを語ってもらった。 (取材日2016年10月24日)
自分の診療に責任を持ち、メモを残す
開院から来年で20周年と伺いました。
20年間を振り返ってみると、月並みではありますがあっという間でした。初めは隣のペット美容室にしている小さなところで、妻と2人で開院しましたが、幸せなことにたくさんの方が通ってくださり、手狭になったので現在の場所に移転しました。実はここは駐車場として借りていた土地なんです。病院を大きくしようと思ったときに駐車場の貸主である地主さんに相談に行ったら、「先生が私のところに土地を売ってくれと頼みに来る夢を見た」と言われましてね。びっくりして鳥肌が立ちました。人生というのは運命とか、流れとか、あるんでしょうか。そのまま話はとんとん拍子に進み、今に至ります。ここは駐車しやすく、車通りも多すぎず、理想的な場所だと思っています。
初診のときはどんなことをするのでしょうか?
初診で来られたとき、まずは若い先生が担当になることが多いのですが、任せきるのではなく、院長として一緒に立ち会うようにしています。そしてどんな症状で来たとしても必ず聴診器を当て、全身を診るように指導をしています。獣医の仕事は専科に分かれているわけではないので、全身に気を配らなければなりません。足を痛がっていても余病があるかもしれないし、内臓疾患からきた症状かもしれない。関連付けを考えて診療しています。私が常に心に留めていることは、1つの症状からできるだけたくさんの病気を想像すること。2、3の病気から1つに絞ってしまうと誤診につながります。また、わからないといって最初から検査に頼らず、五感を使ってしっかり診察できる人間になるように伝えています。
日頃心がけていることを教えてください。
いつも間違いのない、正しい診療をするように心がけています。初めて来院された場合、本当に初診のときもあれば、途中で病院を変えての来院というときもあります。ということは、当院から離れて他の病院へ行ってしまう方もいるでしょう。そのときには告げられた病名、受けた説明や検査を伝えるはずです。私は自分の診療に責任を取る気持ちで、標本なども使ってわかりやすく説明し、診断内容を紙に書いて飼い主さんに渡すようにしています。メモを残すことで、嘘はつけないよ、ごまかしは効かないよと自分を戒めているんです。院内で、自分だけで診ているつもりでも、外にも目があることを意識し、飼い主さんが他の獣医に相談したとしても「間違った診断じゃないですよ」と言ってもらえるように診察しています。
動物にとって良いことを優先して機器を導入
獣医師を志したきっかけを教えてください。
私は福島の、乳牛がたくさんいるような田舎の環境で育ちました。父は東京出身なのですが、開拓者として福島に土地を買い、酪農の勉強のためにアメリカへ渡り、帰ってきて地域の人に酪農を広めたらしいのです。父は私が生まれる前に亡くなってしまったので会ったことはないのですが、父が携わった酪農家さんが残ってくれていましたので、そんな話をよく聞かせてくれました。そういった話を聞いているうちに、獣医師になって北海道で牧場経営をしたいという夢を抱いたのがきっかけですね。
こちらでは機器が充実していますね。
必要と思える機器はすべてそろえました。中でもICU設備は導入してとても良かったと実感しています。また、内視鏡も導入していますよ。当院で使用する機器については、動物にとって何が良いかを考え、優先して導入しています。
飼い主さんへの気配りなど、工夫されていることはありますか?
飼い主さんに治療の説明をするときに、なにもしない、という選択肢を必ず入れるようにしています。飼い主さんによっては、さまざまな生活背景の中で何もしてあげられないという場合もある。我々が治療を押し付けてはいけないのです。そのつもりはなくても、会話の中でやらなければいけないというプレッシャーを与えてしまってもいけない。治す対象が人でない場合、選択するのが本人ではない、というのが難しいところですね。できるだけ動物のためになるようなことを提案できるように心がけています。
信頼関係を築くため、誠実で正直な診療を
お休みの日のリフレッシュ法などはありますか?
休日に会議などが入っていなければ、妻とデートしていますよ(笑)。車もバイクも好きなのですが、だいたい車でドライブに出かけていますね。本当はバイクの後ろに妻を乗せていきたいんですが、最近は断られちゃっています。ハーレーに乗っているので、音も大きいし、バイクは日焼けもするし、人に見られて恥ずかしいと。ですので、高速道路を使って夕方までに帰って来られるくらいの場所を見つけて、おいしいものを食べたり、ちょっと観光したりするのを楽しみにしています。スポーツも好きで、空手もやっています。今は指導がメインですが、地域の大会で優勝したこともあります。冬になるとスタッフみんなでスキーにも行きます。運動することで良い息抜きになり、診療にもより集中できるんです。
診療において大切にしている思いはありますか?
どうしたら信頼関係を築くことができるかをよく考えています。それにはやはり、説明をしっかりして、書いて渡すことが大切だと思っています。手術をした後には取ったものをお見せするようにしていますが、それは信用の問題はもちろんのこと、何を取ったかインパクトのある記憶としてしっかり残るようにするためでもあります。今後私以外の先生が診る機会があったとして、どんな手術をして何を取ったかを飼い主さんが伝えることで、正しい診断の材料になりますから。飼い主さんと動物たちがどこへ行っても困らないような診療を心がけています。飼い主さんには「説明をよくしてくれる」と言ってもらえます。そう言われると、あ、間違っていないんだなと思えますね。誠実で正直であることは常に念頭においています。
今後の展望に合わせてメッセージもお願いします。
これ以上病院を大きくしたいとは思っていません。自分としてはこぢんまりとやっているのが性に合っていると思っていますので。今若い先生に来てもらっていますが、許容範囲を越えていないか、いつも自問自答しています。自分に自信がないんですね(笑)。自信は過信につながりますので、これでいいと思っています。若い先生たちは勉強する意欲が強いので、育てがいがあります。皆が学んできたことや新しい情報をこちらも教えてもらい、与えられるものは与える。勉強は一生続きますね。飼い主さんにはできるだけ病院に関わってほしいです。自分で解決しようとせず、何かあったら連絡をください。犬や猫は話ができないから、とよく言いますよね。でも診察することで私がかわりに話せるかもしれない。何かあったらとりあえず連絡をください。電話でも緊急事態なのか、そのままでも大丈夫なのか、振り分けはできますから。