小笠原 良一 院長の独自取材記事
ならしの動物医療センター
(習志野市/京成大久保駅)
最終更新日: 2024/09/11
京成大久保駅から西に5分ほど歩くとしゃれた建物が見えてくる。それが「ならしの動物医療センター」だ。エントランスを入ると吹き抜けの空間が広がり、まるでホテルのような雰囲気が漂う。院内にはドッグカフェやドッグランなどもあり動物病院とは思えないほど。だが、診療室に一歩入れば、さまざまな医療機器が並び高度な獣医療を提供していることがすぐにわかる。小笠原良一院長は、「爪切りやトリミングなどの日常的なケアから難しい手術までワンストップで対応できるよう設備を整えています。物言わない動物たちの病気を早期発見するためにも気軽に立ち寄っていただきたいですね」と話す。病院の特徴や力を入れている治療などについて話を聞いた。(取材日2023年2月15日)
スペシャリストによる高度な獣医療を提供
病院のコンセプトについて教えてください。
当院は「最良の獣医療を動物に、最高のホスピタリティを飼い主さまに、動物と飼い主さまが幸せに暮らせるように」をモットーに日々診療をしています。先進の機器を各種取りそろえ、診療科も腫瘍内科、腫瘍外科、皮膚科、循環器科、放射線科など幅広く、それぞれ専門性の高い診療を行っています。CTなどもありますので、精密な検査な高度な治療・手術が必要になった時、大学附属動物病院などの二次診療施設に行かなくても当院で対応できます。飼い主さまにとって大学附属動物病院までペットを連れて行くのはかなりハードルが高いのではないでしょうか。こうした高度な医療を提供するためには獣医師の知識や技術、経験がとても重要です。当院では腫瘍科、皮膚科、循環器科など各分野のスペシャリストをアドバイザーとして迎えており、診療や手術、指導にあたっていただいています。中でも皮膚科、循環器科は月に2回専門的な外来を行っています。
飼い主へのホスピタリティという点ではいかがですか。
大半の方が病院に対して怖いイメージを持っていると思います。ですので、少しでもリラックスしていただけるよう病院らしくない雰囲気になるよう内装を工夫しました。飼い主さまと動物がゆっくり過ごせるようテラス席やドッグカフェ、さらに屋上にドッグランなども設置しています。飼い主さまに対するホスピタリティも大切にしています。動物や飼い主さまへの挨拶や言葉遣い、態度など、動物病院だからといっておろそかであってはなりません。獣医師や医療スタッフである前に一人の人間として、また社会人として一人前になることが重要と考えています。そのためマナー講師による講習会なども開いてスタッフ全員受けるようにしています。
診療の際、どのようなことを心がけていますか。
不安や緊張感などを和らげるよう飼い主さまや動物にはできるだけ優しく丁寧にお話しています。治療や手術は難しい内容のことが多いので、専門用語は使わずわかりやすい言葉に置き換えて説明しています。治療方法はいくつかありますので、飼い主さまの考えなども考慮して選択肢を提示し、よく理解、納得してもらった上で選択してもらっています。どの治療法を選んでもらうにしても、飼い主さまとの信頼関係が重要だと思います。いくら高度な設備や技術があっても飼い主さまから信頼されなければそれらはすべて宝の持ち腐れです。飼い主さまに信頼していただいて、ここに来て良かった、ここで治療して良かったと思っていただけるよう努めています。
高齢化に伴い増加する腫瘍の治療、手術に注力
最近、力を入れている治療はございますか。
動物も高齢化が進み腫瘍が増えてきています。当院でも腫瘍の治療、手術が多く、力を入れています。腫瘍の中でも特に多いのが犬、猫の鼻腔内腫瘍の治療です。鼻の腫瘍の手術ができる医療機関はほとんどないため、千葉県内だけでなく関東近県からも来られていて豊富な治療実績があります。また犬の上皮小体と呼ばれる組織の腫瘍の摘出手術も多いですね。上皮小体とは甲状腺の上にある組織で、カルシウム濃度を調整する働きがあります。腫瘍化しても4ミリくらいの大きさなので発見がとても難しい疾患です。腫瘍化が進むと血中のカルシウム濃度が上がり高カルシウム血症になります。さらに高カルシウム血症が進行すると腎臓病を引き起こします。そうなるとずっと闘病生活を続けなくてはなりません。
そんな事態にならないためにはどうすればいいのでしょう。
こうした事態を防ぐためには、腎臓病が発症する前の段階での血液検査が大切です。もし血中カルシウム濃度が高ければ、他の病気の可能性を排除しながら精密検査をすることで、そもそもの原因である上皮小体の腫瘍の発見につながるのです。犬は高カルシウム血症の状態でも元気ですから、飼い主さまは上皮小体の異常に気づくことはできないでしょう。このように腫瘍を早期発見するためには定期的な健康診断がとても大切なのです。飼い主さまは動物の元気がなくなってから動物病院に連れて来られますが、元気な時こそ動物病院に連れて来てほしいですね。
トリミングやペットホテルも提供しているのですね。
トリミングやペットホテルでお預かりする時には獣医師による診察を必ず行い体調をチェックしています。トリマーだからこそ気づけることも多くありますね。皮膚疾患やしこり、耳の汚れなどちょっとした変化もトリミング中に確認できます。ペットホテルは365日体制で対応しています。高齢になった動物も獣医師がそばでフォローしていますので、海外旅行などで長期不在になさる時も安心してお預けいただけると思います。このように当院は日常的なケアから高度な治療、手術までワンストップで対応できるように体制を整えています。
病気の早期発見のために気軽に来院を
先生が獣医師をめざされたきっかけを教えてください。
子どもの頃から動物が好きで、特に犬が大好きでした。犬の雑誌なども読んでいたんですよ。一番影響を受けたのが、ある有名な動物の研究家の先生が動物たちとじゃれあっている姿をテレビで見たことです。自分も将来獣医師になって動物に囲まれて暮らしたいなあと。今でこそ獣医師は子どもたちに人気の職業ですが、当時は、まだ世間的にほとんど認知されていませんでしたね。今は獣医療も進化していて、私が獣医師になった頃と比べると雲泥の差があります。助けることができる病気も増えてきています。獣医療の最新知識や技術を修得することが動物たちの命をより長く守るために必須ですので、当院では専門の獣医師による研修にも力を入れています。
これまでで何か心に残ったできごとはございますか。
いろいろありますが、最近ではスタッフの小学生のお子さんが、友達を当院に連れてきて「ここが僕のお母さんが働いている病院だよ」と友達に自慢気に話していたことでしょうか。スタッフがお子さんに当院でのできごとをいろいろと話しているのでしょうね、きっと。動物病院は地域に密着してこそ存在意味がありますが、本当に地域の人々に親しまれているのだなと実感できてうれしかったです。
ところで、お休みの日はどのようにお過ごしですか。
ルアーフィッシングが趣味で、休診日は房総のほうまで出かけて楽しんでいます。ただこの3年間はなかなか行けずにいましたが。休診といっても入院患者さまもいますし、緊急手術が入ることもありますので、すぐに帰れる環境にいなくてはなりません。チームスポーツだったら一人で勝手に帰るわけにもいきませんよね。その点、釣りならすぐ時間を調整できます。釣りをしていると無心になれて、気分がリフレッシュします。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
これからも地域の飼い主さまと動物たちができるだけ長く幸せに暮らせるよう、その動物にとって適切な医療を心のこもったホスピタリティとともに提供していきたいと思います。今、医科のクリニックではホームドクターといわれるような総合診療が重視されるようになりました。一方、獣医療ではもともと動物すべての部位をトータルに診られることが大前提で、その上にプラスして専門性の高い診療が必要とされます。獣医師としてトータルな診察をするとともに各診療科の高い専門性も併せて、子どもの時から老年期までそれぞれの動物に即したより良い医療が提供できるよう努めていきたいと思います。動物たちも高齢化が進み病気のリスクが高くなっています。物言わない動物たちだからこそ、早期発見のために気軽に連れて来てください。