吉川 俊介 院長の独自取材記事
よしかわ動物病院
(千葉市花見川区/幕張駅)
最終更新日: 2023/01/22
「よしかわ動物病院」の吉川俊介院長は商社で働いた経験があるというちょっと変わった経歴を持った獣医師だ。そんな吉川院長の診療スタイルには、商社時代の経験がそこかしこに生かされている。整理整頓がしやすい院内構造、重要なことはすべてトップページで一覧できるホームページ、そして広くさまざまなことを学び続けようとする姿勢。吉川院長の診療には獣医師としての腕を見せびらかすところがなく、徹底的にペットと飼い主が主役だ。その理由は吉川院長が獣医師へと舵を切ったときに抱いたある想いが関係している。吉川院長が獣医師になった経緯や診療に際して気をつけていることなど詳しく話を聞いた。 (取材日2016年04月14日)
商社マンから動物医療の道へ
どのようなペットを持つ飼い主さんが来院されていますか?
犬、猫、うさぎやハムスターのほか、最近はデグーなどを連れて来られる方もいます。一次診療で求められることは一通り対応できますので、症状としては内科全般、眼科、耳鼻科、皮膚科、不妊手術、軟部外科などさまざまな分野で来院されますね。地域の方々のさまざまな相談に対応できるよきホームドクターでありたいと思っていますので、今後も幅広く対応していければと思います。整形外科、脳神経外科、心臓外科やCT、MRIによる診断が必要な疾患は、大学病院など二次診療機関と適切に連絡を取り対応しています。また、飼い主さんが高齢でペットを連れて来られない場合には往診に行ったり、それでは充分でない場合はペットを連れ帰って当院で処置しておかえしすることもあります。この地域には、動物と程よい距離感を保った飼い方をしていらっしゃる方が多いように思いますね。
夜間対応もされていると聞きました。
夜間に病院にかかってきた電話を携帯電話に転送して対応しています。1人で対応しているので、きついなと思うこともありますが、結局好きでやっていることですから頑張っていきたいと思います。実は、もともと商社マンだったんですよ。充実した仕事でしたが、46歳の時に人生をがらっと変えてみようと思い方向転換をしました。いい大人がなんという夢を見ているんだ、と言われてしまうかもしれません。でも、そうやって始めた動物病院ですので、夜中だろうが困っている人に私ができることはしてあげたいのです。
なぜ商社マンから獣医師になろうと思ったのですか?
せっかく方向転換するのだから、まったく違うことのほうが人生二度楽しめるだろうと夢想したからです。もともと動物は好きだったので、この世界もおもしろいかなと、思い切って獣医師になりました。妻もはじめは驚いたというかあきれていましたね。けれど、最終的には「しょうがないか、これはこれでいいかもしれない」と納得してくれました。とても感謝しています。そして、私の両親や妻の実家も「自分の人生だから好きにしなさい」と応援してくれたんです。本当に周りの方々に恵まれていると思います。
町の頼れるホームドクターでありたい
治療内容を説明する際、気を付けていることはありますか?
獣医師のほうで「これがベストの選択肢だ」と思い込まないようにしています。例えば、重病の患者さんが来たときに、なんとかしなければと説明も不十分のまま検査や治療を行い、最終的に多額の費用がかかってしまうようではいけません。もちろん私にも「可能な治療をできるだけしてあげたい」という想いはあります。けれど物事にはバランスがあると思います。当院では飼い主さんと動物、そして飼育環境や費用のことなど飼い主さんの状況をお聞きしながら、バランスの良い提案を心がけています。いくつか治療の選択肢が用意できるときはそれぞれについて説明し、今何が起きているのかをまず理解してもらいます。しかし、ただ選択肢を提示されただけでは、飼い主さんはどの治療法を選べばいいのかわからないこともあるでしょう。そこで、私だったらどうするかというアドバイスもしています。そのアドバイスも決して強制的にならないよう気をつけています。
治療ではどのようなことを心がけていますか?
基本に忠実に、手間をいとわずに診療を行うようにしています。獣医師は診察の早い段階でどの病気かだいたいわかるものです。しかし、思い込みで判断してしまうと、ときに迷路にはまることもあります。そこで、他に懸念される病気がある場合は、基本に忠実に、検査でその可能性を取り除いていきます。いくつか病気が疑われる場合は、飼い主さんに病気の候補とそれに必要な検査をメモしてお渡ししています。視覚化できる病気の場合は、スケッチも描きます。メモを渡しているのは、飼い主さんが病院で受けた説明を家族にしようとしてもうまくできないことがあるからです。医学用語を使わずに例え話で説明することはわかりやすいようで、実は論点がぼけてかえってわからなくなることがあるので、専門用語を使いつつも時間をできるだけかけて説明しています。メモを書いて渡すのは説明に使った医学用語を後から調べられるようにする意味もありますね。
メモがあると、治療方法をじっくり検討したいときにも役立ちそうですね。
はい。治療開始までに若干の余裕がある場合は説明しながら書いたメモを渡して、「ご家族で治療方法をじっくり検討なさってください」と言って帰すこともあります。緊急度が高い場合はそうも言っていられませんが、結論を急がせずによく考えていただいています。もしも、診察が混みあっていて時間内に全部説明できなかった場合は、メモを渡しておいて後から電話で説明したり、ご近所の方でしたら時間のある時にもう一度当院に立ち寄ってもらったりすることもあります。そんな時は、二度手間で申し訳ないと思いますが、一方で他の人たちをあまりお待たせするわけにもいけないですしね。
緊急対応が必要か迷う場合にも遠慮なく電話を
休日はどんなことをされていますか?
千葉市管弦楽団というアマチュアオーケストラでチェロを弾いています。チェロを弾き始めたのは20年ほど前。妻と銀座を歩いていて、チェロを買ったのがきっかけです。私は以前にブルースをやっていたことがあり、エレキギターを弾いていました。妻もあれこれ楽器を演奏するので、二人で何か合奏を、と試みたのですが、エレキギターじゃどうにも合わないので、チェロを買ったんです。妻は現在フルートを演奏しています。私は音が出るものはなんでも好きで、変わり種としては、インドのシタールという民族楽器も持っています。学生時代にインドを3ヵ月ぐらい放浪していたことがあって、その時現地で習ったんです。
将来の展望について教えてください。
今後も、基本に忠実に、頼ってもらったことに対してしっかりと応えていきたいです。便利に使ってもらっていいんです。そのかわり、徹底的に便利な存在でありたい。皆さんが満足できるよう、この病院を磨き上げていきたいです。勉強することはいくらでもあります。旧来の治療法に留まらず、新しい知見も取り込んで、患者さんや飼い主さんに還元できればと思っています。商社マンの時代もそうでしたが、とにかく広く、なんでも勉強していることが大事だと思うんです。どういう病気があり、その病気の手がかりにはなにがあるか、ということを知っていて、また治療法にしても正統なものからちょっと裏技まであれこれもの知りでないと、できることが広がりません。語学は得意なので、海外の論文もまめに読んであれこれ勉強しています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
動物の状態について迷うことがあれば電話でも構いませんので、聞いてください。可能な限り対応します。「夜中だから」と尻込みしてしまう患者さんは多いと思います。でも、本当に困っていたらすぐ電話してください。動物の場合は夜間の半日が命取りになることもあります。特に危険なのは、呼吸が苦しそう、目を痛がっている、尿が出ていない、大量に吐いているといった症状です。こうした症状が出ていたら、迷わず連絡してほしいです。呼吸が苦しいときはいつ死んでもおかしくない状態ですし、目は痛みだしてから1、2日で失明してしまうこともあります。こうした症状を判断するのが難しいときにも、電話で相談してくださいね。