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噛む、吠えるなどの問題行動を 行動学と脳神経学の視点で診療

渋沢どうぶつ愛護病院

(秦野市/渋沢駅)

最終更新日: 2024/03/11

犬や猫の噛む、吠える、鳴くといった問題行動や、ふらつき、震えるなどの普段と異なる行動が気になる人もいるだろう。小田急線・渋沢駅近くで診療する「渋沢どうぶつ愛護病院」の渡部伸一院長は、悩む飼い主が多いという犬猫の問題行動への診療を提供している。「完全にゼロにすることは難しくとも、3ヵ月で50%以上の改善を目標に診療しています」と話す渡部院長。行動学と脳神経学の視点を併せ持ち、行動の背景にある原因をトータルに探り、対処することが特徴だ。その知見とノウハウを頼り、遠方から相談に訪れる人も多いという同院の行動診療について、詳しく話を聞いた。(取材日2024年2月15日)

悩む飼い主も多い問題行動は、丁寧に要因を探り対処することが重要

  • Q.噛む行動をはじめ、さまざまな相談があるようですね。

    A.

    ▲小田急線渋沢駅から徒歩3分ほどにある

    犬や猫の噛む行動は、人間や他の動物がけがをしてしまうなど、大きな被害を及ぼしてしまう恐れがあることから最も相談が多いです。その他、犬の吠える、うなるといったご相談から、猫では、夜鳴き、家具に爪とぎ、トイレの失敗などもあります。自宅に迎えたばかりの子犬・子猫から2〜3歳といった若い世代の相談が多いですが、ある程度成長した成犬や成猫のご相談も少なくありません。よくあるのが、「これまで我慢してきたのですが」とご相談されるケース。仕方がないと諦めていたり、様子を見ていたが、問題行動が許容範囲を超えたことで、改めて改善の糸口を求めて来られます。程度の差はあれど、問題行動に悩む飼い主さんは多いのです。
  • Q.そもそも問題行動とはどのようなものでしょうか?

    A.

    ▲飼い主との対話を大切にする

    獲物を追って噛みついたり、脅威に向かって吠えたりといった行動自体は、動物の本能的な習性に基づくものも多く、受け止める人間側が「問題だ」と感じない限りは問題のないものです。飼い主さんや関わる人たちが問題だと感じる行動、あるいは、人間社会と協調できない行動が、問題行動と定義されるのです。つまり、動物の行動自体が正常か異常かに関わらず、人間が困れば、それは問題行動とみなされます。とはいえ、一部の問題行動には、その背景に特定の障害や疾患が関わっているものもあり、そうしたケースでは早期に適切な治療につなげることが求められます。問題行動の要因を丁寧に探り、それに即した対応をしていくことが大切なのです。
  • Q.行動学的問題と脳神経疾患の見極め方を教えてください。

    A.

    ▲説明の際は、パンフレットなどを用いてわかりやすく説明する

    行動学的問題と脳神経疾患との区別は、容易ではありません。少なくとも当院においては、両者を厳格に区別することはしていません。どちらの可能性も考えられるという立場で、両者を同時並行的に診療しています。行動学的問題と脳神経疾患による問題行動の両者を区別することなく、問題行動として大きく捉え、改善に向けて飼い主さんと一緒にトータルに取り組んでいくというのが、当院の行動診療の基本的なスタンスです。なお、行動診療を行った際、問診や診察、検査により脳神経疾患が強く疑われる場合には、確定診断のために二次診療施設をご紹介するかどうかを見極めています。
  • Q.行動診療について教えてください。

    A.

    ▲日常の様子を話すことも解決の糸口になることも

    行動診療には、初期対応と行動修正法、薬物療法が含まれます。初期対応では、まず問題行動の背景にあるペットの心理状況をひもとき、ポジティブな遊び行動なのか、不安や恐怖といったネガティブな感情に基づく行動なのかを見極めます。その上で、問題行動のきっかけを排除できるよう自宅での対応をアドバイスしていきます。具体的にお願いすることとしては、安全対策や罰の禁止、有り余るエネルギーを発散させることなどです。自宅の飼育環境や声がけが行動を悪化させているケースも多く、ペット自身が安心して過ごせる環境を整えることが大切になります。並行して、行動のもとにある感情にアプローチする薬物療法も行います。
  • Q.こちらで実施している認知症・てんかんの外来とは?

    A.

    ▲オンラインでの相談にも対応している

    文字どおり、認知症やてんかんの犬や猫とともに暮らす飼い主さんのために設けた外来です。認知症では夜鳴きや徘徊を50%以上軽減すること、てんかんでは発作を3ヵ月に1回以下まで減らすことをめざしています。認知症やてんかんは、行動の変化を起こす疾患でもあります。気になる行動が、行動学的な問題なのか、認知症やてんかんをはじめとする脳神経疾患によるものなのか、わからなくても受診できるよう、行動診療と抱き合わせた外来を設け、「行動」を入口にご相談いただける体制としています。また、近年増加傾向にある認知症の犬や猫と暮らすのは、飼い主さんにとって負担が大きいものです。治療とケアの両面で助けになれたらと思います。

動物病院からのメッセージ

渡部伸一院長

問題行動とは、あくまで人間目線で定義された概念です。ある意味、人間がつくり出してしまっている行動とも言えます。私は、動物に非があるというポジションは取らず、人間側の誤解をとき、対応を変える方向で改善をめざす診療を行っています。その上で、行動が脳神経疾患に由来すると考えられる場合には認知症・てんかんの外来で対応し、それ以外の疾患によると疑われる場合には一般診療で対応するというスタイルをとっています。つまり、飼い主さんがペットの行動にお困りになった際、当院にご相談いただければ、「行動」を起点として、一気通貫で診療させていただけるというわけです。動物たちの行動にお困りであれば、気軽にご相談ください。

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