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海馬澤 邦彦 院長の独自取材記事
KAI動物病院
(さいたま市見沼区/七里駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武野田線七里駅より徒歩5分、旧岩槻街道沿いにあるのが「KAI動物病院」だ。埼玉県内にある動物病院で副院長として重要な役割を担ってきた海馬澤邦彦院長が2016年3月に開院した。キャットフレンドリーの考えに基づき、犬と猫の待合室、診療室、入院室を分け、動物どうしが怖がらずに来院できるように配慮している。手術に関する設備も充実しており、シーリングシステムという、手術の短時間化、止血の確実性が向上された医療機器や体温の変化を防ぐ保温マットなど、安全性の高い手術環境を整えた。ひとごとにしない医療を提供することをモットーにしている海馬澤院長に、日々感じていることや動物に対する医療への思いを聞いた。 (取材日2016年6月15日)
獣医師であることは自然なことだった
とてもおしゃれな内装ですが、こだわった点はありますか。
当院がコンセプトとしているのは来てもらいやすい病院というものです。獣医が私一人ですので、来院前にウェブで時間帯予約ができるシステムを導入して、できるだけお待たせしない工夫をしました。犬と猫はキャットフレンドリーの考えに基づき、待合室、診察室、入院室を分けています。また飼い主さんは車で来院されることが多いので、駐車場は広く、かつ停めやすく、目印になりやすいように看板も大きくしました。清潔できれいというのは基本的なことですが、気をつけていなければ臭いは出てしまいますので、スタッフと一緒に朝晩必ず掃除をして、清潔な状態を保てるようにしています。
診療において心がけていることは何でしょう。
コミュニケーションにおいて飼い主さんとのあいさつや自己紹介は大切だと実感していますので、欠かさず行うようにしています。それから主訴や症状などの話をしっかりと聞いて診療にあたっています。ワンちゃんの場合、診察時もいきなり診察台に上げるのではなく、まずは入ってきたままの状態で顔つきや全身状態を観察し、目線を合わせてわしゃわしゃっと体を触ったり話しかけたりして、きちんとコミュニケーションが取れてから診察台に上げています。意識してやっているわけではないのですが、自然とそうなりました。
先生はなぜ獣医師を志そうと思われたのですか。
この道に進もうと思ったのは高校2年生の頃ですね。祖父も父も獣医だったのですが、祖父は保健所の職員でしたし、父は共済の獣医師。家で動物と触れ合う生活があったという環境ではなかったので、特に強い思い入れはありませんでした。自分自身で進路を決めるときに、人の役に立ち、感謝される仕事がしたい、それは何だろうと考えた時、身近にいる父のことが思い浮かびました。父が農家さんから慕われていたのを思い出し、獣医もいいな、と思ったことがきっかけです。獣医という仕事は、仕事という意識を持たずにでき、苦に感じることがない。僕にとっては獣医であることは自然なことなんです。テンションが変わらないからか、動物にも慕われているように思いますね(笑)。
町の獣医師として、状況に合わせた診療を心がける
得意な診療はありますか。
特に専門性を持つことはなく、地域のかかりつけ医として幅広い診療を行うことを意識して診療しています。勤務医時代は腫瘍を専門として診療し、所沢のがんセンターで2年間研修を行っていました。腫瘍は健康診断で偶発的に発見できることが多いので、定期的に検診を受けてほしいですね。当院ではフィラリアの予防接種に合わせて血液検査を安い金額で行えるキャンペーンを行っていますので、そこに合わせて受けていただくのも良いと思います。
もし腫瘍が発見された場合などは、こちらで手術は行えるのでしょうか。
はい、当院では手術室や入院室も完備しておりますので、こちらで手術を行えます。去勢や避妊手術でもシーリングシステムという、糸を使わず血管をシールして出血させずに切断できる医療機器により、短時間で止血の確実性が向上された負担の少ない手術をしています。手術中も体温が下がらないように保温マットを使用するなど最善を尽くしていますので、安心してご相談ください。腫瘍やその他の重篤な病気になってしまった場合、できるだけ多くの選択肢を提示して一緒に考えていく方針にしています。ただ、選択肢ばかり出しても決められない方も多いですので、飼い主さんの背景や環境に合わせて話をするようにしていますが、難しさを感じることも多いですね。
飼い主さんと接するときに心がけていることはありますか。
病気が進行してしまい、大学病院などに行っても「緩和ケアしかできない。」と言われてしまったときこそ、僕らのような町の獣医師が動物たちや飼い主さんの生活の質を上げるお手伝いができると思っています。基本的に終末期を迎えてしまったときには病院で過ごすのはかわいそうなので、自宅にいながら診療を受けられるように、訪問診療を提案しています。生活の向上は飼い主さん次第の所もあるのですが、具体的なアドバイスも行えますので、どんなことでも相談してください。自宅療養しているときは飼い主さんも精神的にきつくなってしまうと思います。気持ちを吐き出すだけでも楽になることがありますので、話を聞くことも役目ですね。訪問診療をして感謝していただけることは多く、やりがいを感じています。
「ひとごとにしない」をモットーに
先生は動物と接する中で何か感じることはあるでしょうか。
我が家でも動物を飼っています。自分の子どもたちを見ていると、動物を飼ったり、触れ合うことで学んでいることは多いと思います。我が家で飼っていた犬が亡くなったとき、普段はそっけない態度をとっていた子どもたちが泣いていたんです。彼らは触れ合う中で何かを感じ取り、感情が育ってくれていたことがわかりました。これは実際に経験してみないとわからないことだと思うので、そういったことを伝えていけたらいいなと思っています。その一つの取り組みとして中学生の職業体験を受け入れることにしました。犬のシャンプーやブラッシング、そのほかにも経験させてあげられることは何かと考えると、今からとても楽しみです。今後も地域貢献につながることができたらいいなと思っています。
お忙しいとは思いますが、リフレッシュのためにされていることはありますか。
開院してからはなかなか行く機会がありませんが、趣味でサーフィンをしています。海が好きでよく行っていました。今は子どもと遊ぶことが多いですね。とはいっても休日が木曜日しかなく、上の子どもは小学校に行っていますので、朝早起きして一緒に散歩するなど、意識的に共有できる時間を作るようにしています。子どもと過ごす時間がリフレッシュタイムです。
今後どのような動物病院にしていきたいか、思いをお聞かせください。
基本理念にしているのは「ひとごとにしない」ということ。動物たちや飼い主さん、スタッフに対し、相手の立場に立ってものを考えるようにしています。勤務医だった頃、忙しくて人任せにしてしまい、全てを診きれない時がありました。自分の中にはひとごとにしないという気持ちはずっと持っているつもりでしたが、ときに難しく、そしてとても大事なことだと感じたのです。そんな後悔の念があり、自分で開院した時にはこれを形にしたい思い、スタッフと共通した理念としていけるよう病院のカードにも書きました。例えば誰かが困っているとき、自分の仕事の領域ではないときでも、私には関係ないというのではなく、お互いがお互いの立場に立ってものを考え、ひとごとにしないという意識をもって病院を作っていければ、誰にとっても気持ちの良い場所になれるのではないかという気持ちを込めています。