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伊藤 俊太 院長の独自取材記事
くじら動物病院
(府中市/府中駅)
最終更新日: 2023/01/22
東京都府中市、東京農工大学にほど近い住宅街の一角に、大きなくじらが描かれた看板が目印の「くじら動物病院」がある。遠方からも気軽に来院してもらえるよう、専用駐車場が4台設けられている。シンプルな清潔感を感じる院内で、待合室はL字型になっており、ペット同士が離れて待てるなど、視覚的にお互いが見えない工夫がされている。大型犬と猫などは離れて診療を待ちたいであろうという、伊藤俊太院長の飼い主目線の配慮がうれしい。2015年4月に開院し、主に犬、猫、うさぎを診ている。動物病院として一般的な診療を全般的に行い、中でも眼科を専門的に診ることができる希少な動物病院である。来院する飼い主からも「じっくり話を聞いてくれて、温かい先生」との信頼も厚い、伊藤院長に話を聞いた。 (取材日2016年6月23日)
ペットの目を守りたい。思い立ったらすぐ受診可能
くじら動物病院との院名ですが、どのようにお考えになられましたか。
学生時代に教科書や筆箱などに書く名前の代わりにくじらをモチーフにしたサインを使っていたので、そちらからとって「くじら動物病院」としました。また、ひらがなでシンプルなほうが地域の方々からも覚えてもらいやすいかな、と思いました。くじらと海のイメージで水色や青の爽やかな病院内装ができたので、病院名とマッチしていてけっこう気に入っています。くじらということなので、飼い主さまにはくじらの大きな背中に乗ったつもりで、安心してペットとの未来を考えていただけたら、と思っています。
こちらの地域を選ばれた理由や、開院の経緯をお聞かせください。
僕は府中市の出身なので、幼少の頃からなじみのある地域でした。このあたりに動物病院がないのも知っていたので、この地域を選びました。僕も昔から動物を飼っているので、やはり自分の身近な場所に何かあった時に任せられる動物病院があると安心だと思います。そのために、全科について総合病院レベルの治療のできる病院を整え、また、得意分野である眼の病気を気軽に診られる病院を作りたいと考えました。眼科はどの病院でも受診件数が多く、緊急疾患も多いのですが、その割に自信を持って診られる獣医師が少ないのが現状です。多くの眼科専門病院は紹介制や予約制ですので、ハードルが高いと思われている飼い主さまも少なくないんです。そのため、当院は飼い主さまが診てほしいと思った時に気軽に来院していただけるように、予約や紹介は不要としてあります。
なぜ眼科の診療を始めたのか、教えていただけますか。
実は、昔から眼科が特別に好きだったというわけではないんですよ。大学の時は神経科の研究室にいて、神経漬けの毎日でしたから。でも、卒業後実際に動物病院に就職してみると眼科を診られる獣医師が少なくて、きちんと診られればな、ってはがゆく思っていたんです。動物が失明した時に、それが神経の病気が原因なのか、眼の病気が原因なのかわからないこともありました。それで、他の人が診れないなら、僕が眼科を診れる獣医師になろうと決意し、勤務医時代に麻布大学へ通い、眼科専科研修獣医師として4年間、学ばせていただきました。他の科もそうですが、特に眼科って経験値が重要な診療科だと思います。大学病院でたくさんの症例を実際に診て学ばせていただいた経験が、今も大きな力となっています。
見える喜びは動物も同じ
診療のモットーとされていること、心がけていらっしゃることはございますか。
飼い主さまはもちろん治療や医療行為を求めて来院されます。ですが、僕が本当に解決したいのは飼い主さまが抱えている不安です。なので、治療はもちろんですが、その過程で飼い主さまの不安や疑問を解消するということを心がけています。飼い主さまのモヤモヤした気持ちが病院から帰るときには無くなっている、病院に連れてきてよかったなと思っていただけると一番うれしいです。また、治療というのは飼い主さまの協力なしにはできません。僕たち獣医は病院の診察室でしか動物の様子を見ることはできませんし、お家で薬をあげてもらうのも飼い主さまです。何の治療をしているのか、どんな治療が必要なのか、なるべくわかりやすい説明でお話しさせていただいて、理解してもらった上で、一緒に治療を進めていくというのが理想だと思います。
開院に辺り、こだわった設備などはありますか。
まず、一般病院にはないものとして、眼科手術用に白内障手術の乳化吸引装置や手術用顕微鏡を導入しています。また、麻酔管理用のモニターや人工呼吸器、麻酔器も先進のものを備え、麻酔管理を注意して行っています。避妊や去勢、一般外科、眼科のいずれの手術においても、当院の獣医師である妻に麻酔の管理をしてもらい、僕は手術だけに集中できるようにしています。手術時には疼痛管理も麻薬などを使用して、しっかり行っています。麻酔をかけるというのは呼吸を止めたり、血圧を下げたり、生命を抑制することなので、重要視しています。そのため、こだわったということであれば麻酔設備だと思います。また、動物病院ですが、ペットホテルも行っており、近所の方や投薬、点眼、心臓病などで心配がある場合などに利用していただいてます。
治療をして、喜びを感じるときはどのようなときでしょうか。
どんなときでも治ってくれるとうれしいですが、白内障の手術をした後などは、感動的です。中には、犬や猫は眼が見えなくても平気だよ、と言ってしまう方も残念ながらいるんですね。実際、真っ白な眼でお外をヨタヨタ散歩している犬もよく見ると思います。でも、おびえた様子で歩いていた犬が、術後スタスタと軽快に歩いている様子を見てもらえれば、手術の必要性が理解してもらえると思います。生活の質も上がりますし、コミュニケーションもとりやすくなります。もちろん、手術の必要性やタイミングなど、飼い主さまと相談しながら提案をしています。お悩みの場合には、まずご相談いただければと思います。
真っすぐな気持ちで、飼い主とペットに寄り添う獣医師
獣医師になられたきっかけはどのようなことでしょうか。
昔から動物はたくさん飼っていましたが、本格的にめざし始めたのは中学生の頃です。動物病院に行くと、説明もあまりなく預かりますねと言って、連れて行かれちゃうんですよ。ブラックボックス的な感じがなんだか好きではなくて、いったい何をされているんだろうと不安に感じたんです。そこから、自分でどうにかしたいなって思うようになり、獣医師を意識し始めました。その頃の体験から、まず必要な処置は何かをお伝えして、注射や採血などその場でできる処置や検査はなるべく飼い主さまの前で行うようにしています。
お休みの日など、先生のプライベートな時間はどのように過ごされていますか。
休みは週に1日あるんですけれど、ペットホテルや入院している動物がいますので、実際には病院に来ています。それ以外の時間は読書をしたり、実家のDIYをしたりしています。自宅の和室を改装したり、院内で使うものも作ったりしています。院内のものですと、気管チューブをかけるものも無かったので、作ったり、棚もちょうど具合のいいものを見つけられなかったので、作ってしまいました。動物用のものってちょうどいいものが売っていなかったりするので、自分で作らなければいけない場合もあります。動物の治療も一緒で、病気の重さや置かれている環境、できる治療がそれぞれ違います。それぞれに合わせたオーダーメイドな治療を工夫しながら行っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
僕もペットを飼っていて、亡くした経験もあります。ですから、その悲しい気持ちは痛いほどわかっているつもりです。僕は飼い主さまが納得いくまで話したいと思っています。診察をしている時に自分が飼い主だったらこのくらいの説明は欲しいな、と思う部分までお話しさせていただきます。それでも足りない部分に関しては気軽に聞いて欲しいと思いますし、そこに応えられる様に日々勉強しています。なるべく専門用語は控えて、飼い主さまにとってわかりやすい言葉で説明するよう心掛けていますので、何でも遠慮なく聞いてもらえるとうれしいですね。