福田 貴英 院長の独自取材記事
らく動物病院
(東久留米市/東久留米駅)
最終更新日: 2024/12/20

東久留米駅より徒歩16分、2010年に開院した「らく動物病院」がある。この地域はファミリー層が多く暮らす、東京のベッドタウン。皮膚科に力を入れる同院では、シャンプーや保湿といったスキンケアも重視している。マイクロバブルを使ったシャンプーも導入。動物も人間と同じで、優しく泡で洗うのが理想だと福田貴英院長は話す。飼い主にもシャンプーの仕方を、わかりやすく人間に置き換えて説明している。院内は北欧デザインのおしゃれな内装に仕上がり、カフェにいるかのような居心地。福田先生の愛犬・ミニチュアシュナウザーの「ちょいちょい」くんが出迎えてくれる。名前と同種では珍しい白の被毛で、患者もすぐに覚えてくれるそうだ。同院や診療について、福田先生に聞いた。 (取材日2016年7月15日)
清潔感のある白を基調にした北欧デザイン
開院された経緯や病院名の由来などを教えてください。

勤務医は、その病院の院長の考え方に沿う必要がありますよね。私もそうやって勤務してきましたが、獣医師として経験を重ねていくうちに、診療や病院作りに対してこうしたいという自分の思いが出てきたんです。自分が理想とする医療を提供したいと。病院名の「らく」は、私の出身地である京都・洛西の「らく」と楽しく生きるをかけ合わせて名づけました。電話でも聞き取りやすいよう、短いネーミングにはこだわったつもりです。この地域は、私が勤務していた所沢からも近くて土地勘もあり、妻の実家が東久留米なので、近隣で探して辿り着いた場所なんですよ。
先生が理想とした動物病院を教えてください。
待ち時間が長いのは嫌という飼い主さんもいて、自分ならどうだろうと患者さん目線で置き換えてみたんです。満員電車のような混雑・臭い・汚い。そんな病院は嫌だと思いました。ペットを家族だと思う方が増えていますから、尚更です。きちんと説明する時間を確保するため、忙し過ぎないことも大切で、一つ一つしっかり時間をかけて診察しています。外観からデザインにこだわり、より良い医療を提供する動物病院という印象を持ってもらえるとありがたいですね。臭いのきつい塩素系消毒剤は使わず、無臭の消毒・消臭剤を使っています。
北欧調の内装が印象的ですね。
もともと北欧家具が好きでした。開院を決意した時にインテリア雑誌を参考にし、こうしたいとデザイナーに提案したんです。私は皮膚科診療を得意とするので、患部の写真を撮る機会が多く、白を基調にしたほうが反射してきれいに撮れるだろうと想定した内装に仕上げてあります。正確な診断のため、一通りの検査機器を導入していますが、今後もさらに充実させていこうと思っています。
犬と猫どちらが多いですか?

犬のほうが多いですね。予防しなくてはいけないことが犬のほうが多いですし、当院でも予防医療にはペットのドック検診も導入して力を入れています。ワクチン・ノミ・ダニ予防も、院内感染リスクを軽減するため、お預かりする際やトリミング時もやっていただくようにしています。犬は、散歩でも移される可能性はあるので、しっかり予防をとお伝えしているんですよ。予防がきちんとできた上で、病気の早期発見を目的に、年1回のペットドックなどを行うのがお勧めです。一方で、猫は症状が見えにくくかなり進行してから病気が見つかることも多いので、高齢期に入ったら犬と同様に年1、2回は検診を受けていただきたいですね。
皮膚病はスキンケアで改善をめざす
動物の皮膚疾患について教えてください。

これから、心臓病・がん・皮膚病は増え続けていくと思います。動物たちの寿命が長くなるにつれ、人間と同じ疾患にかかるリスクも高くなっているんです。増え続ける病気の中で、私が最も興味を持ったのは年齢に関係なくかかる皮膚病です。飼い主さんも自分の目で見て、治ったと実感しやすい病気ですよね。皮膚病の原因で多いのは、人間と同じく、カビや細菌による感染症。実は、原因を見つけて対処する治療があまりなされていないようです。
皮膚に感染症が起こるのはなぜですか?
皮膚表面には、もともと住んでいる常在菌がいるんですね。その常在菌が、何らかのきっかけで増えすぎてしまう。もともとの皮膚構造が関連し、アトピー性皮膚炎やアレルギーを回避できない事例が7〜8割を占めています。やはり皮膚病は原因をしっかり見極め、検査治療することが大事でしょう。皮膚は体全体を覆っていますが、特に耳は弱い部位ですので、症状が現れやすい場所です。
スキンケアで改善を図る方法を取り入れているそうですね。
ここ数年でスキンケアは大きく変わりました。女優さんが泡で洗顔するコマーシャルが流れますよね。人間と動物は同じで、こすらない洗い方もシャンプー剤も大事です。脂性なら、まずクレンジングオイルで油分を落とし、きめ細かな泡を浸透させて洗い、仕上げに保湿する。動物は毛が生えていますから、こすると毛根を刺激してかゆみと痛みを引き起こします。飼い主さんも自分の身に置き換えると理解しやすいようで、人に例えるだけで飼い主さんの理解度も上がるんですよ。
愛玩動物看護師の高い専門性を生かしたトリミングやスキンケアサポートも特徴の一つですよね。

当院ではスキンケアシャンプーやシニア犬のトリミングセミナー講師をしている愛玩動物看護師がトリミングを行っています。シャンプー剤に含まれる界面活性剤など成分にもこだわり、ワンランク上のトリミングとスキンケアに努めています。近年ではシニア犬も増えており、より安心できるトリミングを求められる中、高い専門性とスキルを持った看護師グルーマーがトリミングを行うことにより皮膚トラブルや病気の早期発見にもつながっています。
発症時の様子を撮影した動画は診察の参考になる
獣医師をめざしたきっかけや大学時代のエピソードをお聞かせください。

実は、大学受験まではエンジニアや設計士に憧れていて工学部志望だったんです。当時、私が通っていた予備校の先生がチワワのブリーダーでしてね、話を聞いていてそういう職業があるんだと興味が湧きました。動物は小さい頃から好きでしたし。家族は物作りをしている者が多く、手先が器用だったこともあるかもしれませんね。獣医学部に入ってから驚いたのは、同級生たちの多くが小学生時代から「獣医師になりたい」と具体的な夢を持ってかなえていたこと。工学部をめざしていた私は、高校時代に物理と化学を選択し、生物をやっていなかった。そのため、今でも考え方やアプローチの仕方が少し違うと言われますね。でもそれが私の強みです。理屈っぽいんですがね(笑)。
日々の診療において心がけていることはありますか?
動物とは、意思疎通が難しい場合もあります。治したいという思いとは裏腹に、痛いことをされていると思ってしまうんですね。怖がらせず、飼い主さんと和やかに話しながら、注射を打つようにしています。飼い主さんが緊張していると、動物にも伝わって不安になりますから。飼い主さんの声が聞こえると安心するようです。飼い主さんの中には注射を見たくないという方もいますから、きちんと説明して動物が気づかないタイミングで打ちますよと伝えています。注射で鳴かなかったのも初めてと言われることもあります。こちらも構え過ぎない姿勢が大切なのでしょう。
飼い主さんにお願いしたいことはありますか?
日頃の様子をしっかり見ておくことです。何でもない時・何か異変がある時を比べ、日頃いかに見ているかで変化に気づきやすくなります。どういう状況でどのような症状があったかを聞かせてもらえると、診療の助けとなります。来院すると、緊張から症状を隠してしまう動物が多いんです。何か異常を感じたら、その様子を動画に撮影しておいてもらえると、診察の参考になるでしょう。
今後の展望や読者へのメッセージなどをお聞かせください。

薬用シャンプーや内服薬より、スキンケアが理想です。シャンプーや保湿は体への負担が少ない方法ですから、今後も広めていきたいです。可能な限り、飼い主さんと獣医師がお互いに納得いくまで話し合う姿勢を崩しません。基本を忘れず、更に新しいものを取り入れていくのが、私の目標です。皮膚病で改善が見られず諦めている方は、ぜひ当院へご相談いただければ幸いです。また、当院に限らず、他の動物病院へ転院の際に持参していただきたいのは、前院での検査結果と現在使っている内服薬や塗り薬の情報です。そうした資料の持参は、転院時に非常に役立ちます。病院選びの1つとして、薬剤名を記載している病院を選ぶといいかも知れません。