桂 次郎 院長の独自取材記事
ぴあ動物病院
(小平市/東大和市駅)
最終更新日: 2023/01/22
小平市の住宅街の一角にある「ぴあ動物病院」。院長の桂次郎先生が診察室奥の扉を開けたとたん、病院犬であるスタンダードプードルの「ぴあっちょ」が尾を振って迎えてくれた。大学時代からスタンダードプードルに興味があったという桂先生と「ぴあっちょ」は、開業前に働いていた病院で出会ったのだという。口蓋裂という先天性の病気を持っていた「ぴあっちょ」が安心して暮らせる場所を探していたブリーダーが、桂先生ならと見込んで連れてきたのだそうだ。当時を振り返る先生のまなざしは優しく、動物への愛情に満ちている。動物を家族の一員と思ってともに暮らす人には、相対したときにその愛情の深さが伝わるのだろう。飼い主との対話を重視し、より良い治療を一緒に考えたいと話す桂先生に話を聞いた。 (取材日2016年8月17日)
動物の気持ちに寄り添い、親身な治療を提供
2016年3月で、開院5周年を迎えられたそうですね。
開院は2011年3月3日、ちょうど東日本大震災の8日前です。当院と患者さんには幸い大きな被害こそなかったものの、しばらくはイレギュラーな対応が多々あって慌ただしい毎日を送りました。計画停電が昼間の診察時間帯にあたっていたので、動物たちには「ごめんね」と言いながら薄暗い部屋で治療をしていましたね。病院名の「ぴあ」は、病院犬であるスタンダードプードルの「ぴあっちょ」から取りました。ぴあっちょは先天性の口蓋裂という病気を持っていて、知り合いのブリーダーさんが飼い主を探して私のところへ連れてきた犬なんです。学生時代からいつかはスタンダードプードルを飼ってみたいと思っていたので、これも縁だと思って飼うことにしました。この場所に開業したのも以前勤めていた病院の関係者からの紹介ですし、いろいろな縁が重なって今があると思っています。
開業自体は以前から考えていらしたのですか。
大学のころから、いずれは自分の病院を持ちたいと考えていました。現在の診察スタイルや治療方針は、卒業後お世話になった病院の院長先生の影響を強く受けていると思います。実は開業前、趣味のバイクで大きな事故にあい、長期間入院した上に1年間松葉づえで生活せざるを得なくなった時期がありました。入院中からリハビリ期間にかけて、さまざまな治療を受けました。今、動物たちにしている治療のほとんどを、このときに経験したと言えるほどです。ですから動物たちに対しては、「自分もこの治療を受けたことがあるよ」「わかるよ」という気持ちで治療をしています。
医院づくりでこだわられた点を教えてください。
まず、待合室をくつろげる雰囲気にしたいと考えました。動物病院では、待合室でほかの動物と鉢合わせしてしまうことが問題になりがちですが、当院ではワンちゃんと猫ちゃんのスペースを棚で仕切り、できるだけ周囲を気にせずお待ちいただけるようにしました。少しでも来院のしやすさにつながれば良いと思っています。院内では、定期的に撮影会も行っているんですよ。以前、進路相談に乗った患者さんが動物のトレーナーになり、動物病院でできることをしたいという話を聞いて企画したものです。ワンちゃんや猫ちゃんの写真はもちろん、家族写真も撮ってくれるので、とても好評です。また、当院では、治療時や手術時に痛みや負担を軽くするためにレーザーメスを導入しています。やはり、ワンちゃんや猫ちゃんの負担を少しでも減らしてあげたいんですよね。
啓発を継続し、予防意識の向上に努める
来院されるのは、やはり近隣の方が多いのですか。
そうですね。近所の方が紹介で、きてくださることが多いように思います。私は五日市の育ちなので、実家近くに住んでいる同級生や、その知り合いが来てくれることもありますね。開業前に勤めていた病院で診ていた患者さんも、時間をかけて通って来てくれるのはうれしいことです。動物の種類としてはやはりワンちゃんと猫ちゃんが圧倒的で、犬種はチワワやトイプードルが多いと思います。
このエリアの飼い主さんたちの特徴として、お感じになるところはありますか。
動物のためにできることをしてあげたいという思いで来てくださる方が多いという印象です。それほど予防意識が高いわけではありませんが、地道に啓発してきた結果、最近では猫のフィラリア予防のために来院される方が少しずつ増えてきました。もちろん他の予防接種も行っていますので、だんだん予防の意識が高まっていってくれるといいなと思っています。また、本来は検査による確定診断を経て治療をするという流れが最善ですが、中には検査よりも治療を優先してほしいという方もいらっしゃいます。そうした場合には、確実な診断と治療のためには先に検査をした方が良いということを丁寧にご説明した上で、最終的な判断は飼い主さんにお任せするようにしています。家族の一員であるペットのことを誰よりも大切に思っているのは飼い主さんですから、医師の考えを押し付けるのではなく、じっくりお話を伺ってともに考えるというスタンスを大切にしています。
犬や猫以外に、小鳥やうさぎの診療もなさるそうですね。
うさぎや小鳥は、病気に気付きにくいため注意深く症状を見ていく必要があり、専門の医師にかかるのが一番だと思います。しかし、実際には専門とする獣医が少ないために受診場所が限られ、困っている飼い主さんが少なくありません。そこで、これまでの知識を生かして、うさぎや小鳥の診療をできる限りのことはするようにしています。ただ、当院の近くには、うさぎと小鳥の診療を得意とする病院があるので、「かかりつけ医がお休みだけど、どうしても気になる症状がある」という場合や、飼っているワンちゃんや猫ちゃんの診療のついでにうさぎや小鳥も診てほしい、という場合などに上手に活用していただければうれしいです。
夜間や時間外の救急にもできる限り対応
土日、祝日も開院なさっていると伺いました。
木曜と、日曜・祝日の午後以外は開院しています。当初は水曜のみ、20時から21時の夜間診療を行っていたのですが、容体の急変に備えて「いつでも連絡してきていいよ」と連絡先をお渡しするようにしていて、可能な限り対応していますし、出れない時にはメッセージに残してもらって対応することもあります。このあたりは24時間受け入れている救急病院がありませんし、飼い主さんが不安で連絡してくることも多いので、休診日と言えどもあまり遠くへは行かずにできるだけ対応するようになりました。どこかへ出かけても、帰宅したら留守番電話のランプが点いているかもしれないと思うと心配になりますしね。
先生にお休みがあるのか、少し心配になりますが……。
忙しいことは忙しいのですが、もともと飼い主さんやワンちゃん、猫ちゃんと接している時間が好きなので、忙しくても楽しいんです。もちろん、入院の子がいない時には安心してスタッフに任せて少し遠くまで出かけたりもします。今、正社員がひとり、アルバイトのスタッフがひとりいますが、みんなとてもよくフォローしてくれるんですよ。書類の提出期限などはスタッフのほうがしっかり把握してくれていて、「先生、そろそろですよ」と声をかけてくれたりします(笑)。ですから、スタッフに任せられる日には安心して、ちょっと遠くまでツーリングに行ったりしています。また、バスケットボールのサークルに2つ入っていて、1つは運営も任されているので、週に2回は夜間の練習にも参加しています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
今後は、人間の高齢化とともに老犬・老描の増加が問題になってくると思います。飼い主さんとともにワンちゃんや猫ちゃんも年をとります。実際、高齢の飼い主さんがペットを飼い続けられなくなって困っているという話もよく聞くようになりました。そうしたワンちゃんや猫ちゃんの受け皿としてドッグケアハウスのような施設を作り、ケアや介護のお手伝いができたらと考えています。実は少し前から、今の場所よりもっと広いところを探しているんですよ。今の患者さんたちが通いづらくならない程度の距離で、良い場所が見つかれば計画を進めていきたいのですが、なかなか良い場所が見つからないんですよね(笑)。