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垰田 高広 院長の独自取材記事

葛西りんかい動物病院

(江戸川区/西葛西駅)

最終更新日: 2023/01/22

地下鉄東西線西葛西駅より徒歩7分のところにある「葛西りんかい動物病院」は、垰田高広先生が院長を務め、犬猫に対する皮膚科や内科といった一般診療に加えて、腫瘍科や消化器科などの外科も標ぼうしている。垰田院長は、複雑な病気や治療法についても飼い主に丁寧にわかりやすく説明してくれる、朗らかで優しい先生だ。動物の飼育についての心がけを尋ねたところ、「犬猫を飼いたいと思ってくれる方は優しい方だと思うので、その気持ちだけで十分」と答える垰田院長に、温かい人柄を感じた。同院では可能な限りの高度医療を提供することをめざしながら、動物に最期までとことん手を尽くしたいという思いで診療している。垰田院長に、獣医師をめざしたきっかけや動物に対する思いなど、たっぷりと話を聞いた。 (取材日2016年11月16日)

腫瘍外科や消化器外科に力を入れる

獣医師をめざしたきっかけは何ですか?

植物の研究に取り組んでいた父の影響もあったためか、僕は小さい頃から生き物や機械の”しくみ”を学ぶことが好きでした。父にはよく木花の名前を教えてもらった思い出があるのですが、僕は植物よりも、動きのある動物や虫に興味をもちました。そんな中、テレビ番組で獣医師の仕事を知り、理想の仕事と感じて小動物獣医師をめざしました。大学では、獣医に関する学問以外でもできる限りのことを学ぼうと思い、開講されている授業は全て履修しました。また、教育にも興味があって、通常授業のない土曜日まで講義に行って、教職免許も取得しました。この頃は、学んだことはいつか必ず何かの役に立つと思っていました。学部を卒業する頃には、将来的に必ず小動物臨床に従事するつもりでしたが、短期間でも獣医療全体のメリットになる仕事をしたいという思いもあって、大学院へ進学し研究に携わり、博士号を取得しました。その後は、都内の動物病院に勤務しました。

開業しようと思ったのはなぜですか?

元より臨床にまい進したいという強い思いがあったのと、自分の知識や技術をより多くの患者さんに提供したいという気持ちで、開業を決意しました。開業するにあたっては、僕が勤めていた動物看護専門学校があり、また妻の出身地でもあって、地域に愛着のある江戸川区葛西を選びました。当院では、犬猫を対象に一次診療を行う他、遠くの大学病院や専門病院まで足を運ばずに済むよう、可能な限りの二次診療にも応えられるように設備も整えています。

垰田先生は腫瘍に関する研究も行っているそうですね。

はい。腫瘍に関する治療には、従来から複数の治療法がありますが、常に新しい治療法が開発、試みられています。放射線治療のような特殊な機器を必要とする治療は一般動物病院では不可能ですが、動注化学療法や免疫細胞治療といった、少しの努力で一般病院でも可能になる治療法について研究しています。抗がん剤を腫瘍の栄養血管に直接注入する動注化学療法や患者の免疫力増強を期待する免疫細胞治療は、できるだけ患者の副作用や負担を軽減する方法としても有効と考えています。

診療方針について教えてください。

例えば、膝の脱臼はすぐ診断がつく症状ですが、状態によっては、「様子をみましょう」とするところも多いです。ただ、これから長く一緒に暮らすことを考えると、若い子や症状の悪化しやすい体重の重い子ほどしっかり早く治してあげたほうがいいですよね。ですので、患者の様態や飼育状況、経済的な事情などに合わせた多角的な対応ができるようにさまざまな選択肢をお伝えすることを心がけています。それは病気の治療だけではなく、ワクチン接種やフィラリアの予防といった予防衛生においても同じです。

患者への選択肢を用意するのも獣医師の務め

どうしてそのような診療方針を取られているのでしょうか?

例えば、末期の動物に対し、”何かできないか”とひとつでも多くの方法を求める飼い主さんに対して、選択肢を用意してあげることも僕の務めだと思っているんです。僕は、やみくもに延命するだけではなく、動物に残されている時間をなるべく苦痛なく過ごせるようにしてあげたいという思いがあります。手を尽くした患者さんを自宅でゆっくり看取っていただくのも一つの選択肢ですが、だからといってそこで診療は終わりではなく、最期までできることは何かしらあります。往診での治療や飼い主さんとの相談を続けながら、最後に体を洗ってお棺に入れるところまで付き合いたいという思いで診療しています。

診療する上で心がけていることはありますか?

以前勤務していた動物病院が、患者さんが駐車する音を聞き分けてカルテを用意しておく、というくらい接客やマナーに気を配っていたので、そうしたこまかい心配りは今も保っていたいと思いますね。診療では、患者さんにざっくばらんにお話いただきたいと思っているので、スタッフを含め、僕自身もなるべく話しかけやすい雰囲気をつくるように心がけています。また、動物を直接診察する前に、先に飼い主さんとしっかりとお話をすると、その様子を見ていた動物が僕を悪い人ではないと判断し、警戒心を解いてくれることもあります。動物との信頼関係を築く上でも大切ですね。

こちらにはどのようなスタッフが在籍していますか?

現在、僕の他に非常勤の獣医師1人、看護師兼トリマーが3人おります。来年、新たに看護師とトリマーを1人ずつ迎える予定です。スタッフとはミーティングを行い、常時、情報を共有していますが、日常的な会話も重視して、スタッフも僕に声をかけやすいように意識しています。スタッフのミスはどうしても生じますが、その際に、院長に声をかけづらい、怒られるので連絡しづらいといった状態があると、事態をより悪化させてしまう可能性が高いので。そのため、歓送迎会、夏の暑気払い、年末の忘年会や、忙しい時期の食事会などのスタッフとの時間も大切にしています。患者さんにもスタッフの人柄やどんなことを考えて診療にあたっているかを知ってほしいという思いがあり、スタッフにはブログを更新してもらっています。

最期までとことん手を尽くしたいという思いで診療

これまで印象に残っている患者さんはいますか?

開業当初、腫瘍ができて歩行が困難になってしまったグレートデンという大型犬を飼っていた患者さんが近所にいらっしゃいました。すでに末期で医学的にはできることがほとんどない患者さんでしたが、直接ご自宅に伺って様子をみたり、ホームセンターで台車を買い、そこに板を張り付けたその子専用のお散歩カートをつくって散歩をさせたりしていました。そうした甲斐もあって、そこから割と長く生きてくれたんですよね。最期を看取った際も、飼い主さんに非常に感謝していただいて、額縁サイズに引き伸ばしたその子の写真をプレゼントしてくださいました。それは僕のつくった台車で散歩をしている様子の写真で。患者さんのその気持ちがとてもうれしくて、今もそれを大事にしています。

続いて、診療時間外の過ごし方を教えてください。

まだ小さい子どもがいるので、平日は朝の支度、夜は寝かしつけるまで子どもの世話で忙しいですね。休日は子どもと一緒に公園へ遊びに行くのが楽しみです。それから大学院の時から飼っている14歳の猫がいます。クリニックの上にある自宅からよく顔を出しているので、患者さんに「お元気そうですね!」とよく猫についてお声をかけていただきますね。

最後に、来院される患者さんへメッセージをお願いします。

犬猫を飼いたいと思っていただけるだけで、優しい方だと思いますから、僕から特に飼い主の方にお願いしたいことはありません。もし、お願いしたいことがあるとすれば、終生飼っていただきたい、それだけです。そのためにも僕は、最期までとことん手を尽くしたいという、開院当初から変わらない気持ちで生活のための全てのケアを行っています。また、仕事で忙しかったり、経済的に通院するのが大変だったりと、患者さんそれぞれにさまざまな事情がおありでしょうから、日頃からマメに病院にかかってほしいとは言いません。ただ、困った時は”遠慮なく”ご利用いただきたいのです。間違った飼育方法でも、修正はしますが、決して頭ごなしに叱ったりはしませんので(笑)。飼い主さんとその子の性格、状況に合わせて治療をしたいと思っていますし、それによって動物と飼い主さんがベストな生活を送れることが僕にとっての喜びです。

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