岡 誠一 院長の独自取材記事
こころ動物病院
(江東区/南砂町駅)
最終更新日: 2023/01/22
東西線南砂町駅から車で5分、丸八通り沿いに「こころ動物病院」がある。「こころ」という院名に表されているように、同院は動物と飼い主の心のケアを重視する動物病院だ。動物たちが診察で緊張しないよう、検査や処置の方法を工夫し、診察室の臭いのケアにも気を配っている。院長の岡誠一先生は、子どもの頃から動物が好きで、物心付く前から犬を散歩させていたそうだ。自身も動物を世話しているからこそ、動物や飼い主の気持ちになって考えることができるのだろう。動物は言葉で症状を訴えられないからこそ、飼い主や獣医師が気持ちを察する必要がある。いつも動物を気遣う岡先生なら、安心して診察を依頼できそうだ。そんな岡先生に、獣医師をめざした経緯や、同院の診療方針を聞いた。 (取材日2017年2月8日)
動物とともに育った少年時代が獣医師のきっかけに
先生が獣医師をめざした経緯を教えてください。
子どもの頃から動物が好きだったというのが大きな理由です。僕が小さな頃から、家では犬や小鳥を飼っていました。僕はあまり記憶にないんですが、家で子犬が生まれ、2、3歳くらいの僕が散歩に連れて行っていたそうです。というよりも、僕が犬に散歩させられているふうに見えたようで、よく笑い話として聞かされました。犬と一緒に寝たり、インコを手乗りにしてかわいがったりしていたので、小学生の頃には獣医師になりたいと考えていたんです。今、僕の家では犬と猫を飼っていますが、同じく獣医師である妻と2人でこまかいケアができます。これも、獣医師になって良かったと思えることですね。
ここで開業することにしたのはどうしてですか?
実はこの場所では、30年以上前から動物病院があったんです。その病院の院長先生がリタイアするということで僕にこの場所で開業しないかという話がありました。僕もちょうど開業したいという思いがあったので、詳しく話を聞き、開業することに決めました。院内は、以前の院長先生が自然で身体に優しい素材を選んでいたので、ほとんどそのまま使っています。院名は、動物と飼い主さんの「心」のケアも大切にしたいという意味を込めて「こころ動物病院」にしました。動物は言葉で症状を伝えることできないので、こちらから理解してあげることが大切です。
土地の印象や動物の種類に関してはいかがですか?
僕は東京都内出身で、この場所は働くようになって初めて訪れました。この町は下町情緒があり、気に入っています。人々の年齢層は、少し年配の方が多いかなという印象を受けます。動物好きな人も多く、道端で保護した猫を連れて来る方もいます。当院で治療する動物は、特に猫が多いですね。全体の半数くらいは猫、それから犬です。少数ではありますが、鳥やうさぎ、モルモット、フェレット、ハムスターなどの小動物も診ています。症状としては、下痢や嘔吐など、消化器系の症状が多いです。これらの症状は、さまざまな病気で起こるもので、一時的な場合もありますが、大きな病気の症状であることもあります。例えば、猫の場合は腎臓病や甲状腺機能亢進症など、犬では膵炎や子宮疾患などが関係していることもあります。
動物と飼い主の心のケアを大切にする診療方針
先生が特に力を入れていることは何ですか?
幅広い症状を的確に診ることが大切だと考えています。当院は町の動物病院、つまり飼い主さんが最初に訪れる病院です。「1次診療」とも呼ばれますね。このような地域に根差した病院では、ありとあらゆる病気を目にします。なので、どんな症状でも的確に診断できるよう、動物の病気に関する幅広い知識が必要です。この努力には終わりがないので、勉強の毎日ですね。もし、さらに詳しい検査の必要があれば、内視鏡やCTなどの特殊な検査機器がある大学病院を紹介することもあります。
診察時に大切にしていることはありますか?
動物と飼い主さん双方の心のケアを大切にしています。獣医師として、メインとなるのは動物の病気を治し、苦しみを取り除くことです。でも、僕は犬や猫を飼っているので、わが子のようにかわいがっている動物が病気で苦しんでいるとき、飼い主さんがどれほど精神的ダメージを受けるのかも理解できます。なので、できるだけ飼い主さんの話を聞き、不安に感じていることやどんな治療を望んでいるのかを理解するようにしています。また、動物が処置で怖がらないように、飼い主さんの目の前でできる処置や検査は、できるだけ見えるところで行うようにしています。動物は、飼い主さんが近くにいると安心できますから。残念ながら、病状によっては治癒の難しい場合もあります。そのような状況でも無理なくできる治療の提案や状態を説明し、心の準備をしてもらうのも、獣医師として大切な責務です。
スタッフにお願いしていることはありますか?
当院のコンセプトである「心のケア」とつながる部分ですが、動物の気持ちを考えるようにいつも伝えています。例えば、診察室に他の動物の匂いがあると警戒するので、処置が終わったらすぐに掃除して清潔に保つこと。動物にとって危険なものがないかどうか、いつも気を配ることなどを徹底するように院全体で心がけています。当院のスタッフは動物を飼っている人が多いので、ペットホテルでお泊りしている動物たちと遊んだり優しく接したりしています。飼い主さんにとっても動物たちにとっても安心して通っていただけるような院でありたいと考えています。
困ったときにすぐ思い出してもらえる病院でありたい
動物との接し方で飼い主さんに気を付けてもらいたいことはありますか?
動物たちの変化にすぐ気が付けるのは飼い主さんだけです。なので、毎日変わりがないかどうかを見てあげてほしいです。何かおかしいことがあっても、その日にすぐ病院に連れてくるのは難しいかもしれません。しかし、数日たっても容態が変わらないのであれば、一度受診したほうが良いでしょう。動物の気持ちをすべてくみ取ることはできませんが、自分だったら調子が悪いときにどうしてほしいかを考えながら接してあげると良いかと思います。
今後の展望を教えてください。
今でもずっと心がけていることですが、飼い主さんや動物たちにとって信頼できる院であるにはどうすればよいか。そのことを考えながらより良い病院にしていきたいと考えています。動物たちのことで困ったとき、まず思い浮かべてもらえる動物病院でありたいですね。当院には実に多くの症状を訴える動物たちがいます。どんな症状にも対応できるよう、獣医師としてのスキルを磨き続けていきます。当院は、動物美容室やペットホテルも併設しています。トリミングの際は、獣医師による簡単な健康チェックを行っています。そこで心臓の疾患や皮膚病が見つかることもあるんです。体重も計るので、動物たちの重さの変化もわかります。こうした部分も積極的にアピールしていきたいです。
最後に読者の皆さまへメッセージをお願いします。
この地域では、ダニや寄生虫に悩まされる動物が少なくありません。ダニの種類によっては、動物だけでなく、人間が刺されて病気になることもあります。なので、動物たちの様子にいつも気を配ってあげてください。日本は、ヨーロッパに比べると犬に関する知識がまだまだ遅れています。以前、ドイツでティアハイム(動物の保護施設)を見学したことがありますが、犬猫に限らず多くの動物が寄付とボランティアスタッフによって世話されていました。とてもすばらしい施設で、主にそういった施設から動物たちが家庭に迎えられます。日本では、動物はペットショップで買うという人が多いですが、保護施設も選択肢の1つになってほしいですね。動物に対する知識が深まり、人間と動物双方が幸せに暮らせることを願っています。