林 由太嘉 院長の独自取材記事
ゆたか動物病院
(調布市/京王多摩川駅)
最終更新日: 2023/01/22
木枠のガラス窓にドア、緑のアーケードと、まるでカフェのような、かわいらしい外観の「ゆたか動物病院」。院内もグリーンが多く、安らぎとともに清潔感が漂う空間となっている。林由太嘉院長は、常に患者との会話を大切にした診療を心がける。「不安な気持ちの患者さんが少しでも安心できるよう、丁寧にお話しています」。穏やかでゆっくり話してくれる院長の人柄ゆえか、同院には日々のケアや予防で通う患者も多い。動物の命を預かる責任と冷静さを持ちつつ、日々あたたかなまなざしで患者を迎え入れてくれる林院長に、同院の理念や診療スタイルについてなど、さまざまな話を聞いた。 (取材日2017年1月26日)
話を聞き、安心できるようスタッフとともにサポート
2011年に開院されたのですね。その経緯や患者についてお聞かせださい。
独立を考えていたときに、出身の府中市には動物病院が多かったこともあって、高校時代に通学でなじみのあったこの地域にテナントが空いているということで開院を決めました。患者さんは近くにお住まいの方がほとんどで犬と猫がメインです。病気はもちろん、予防や爪切りなど日々のケア、トリミングで来られる方も多いですね。その際、「最近食欲がないんだけど」「ちょっと歩き方がおかしい」というお話が出て、病気が見つかることもあります。別段近寄りがたいような病院ではないので、ちょっとしたことでも気軽に来ていただけたらと思っています。難しい症例の場合は、大学やその附属医療センターなどが近くにありますので、飼い主さんと相談したうえで紹介しています。
診療のポリシーはどんなことでしょうか?
まずお話をよく聞くように心がけています。動物が病気だと飼い主さんが不安で話がまとまらないこともありますので、お聞きしながら症状を整理していくようにしています。お話したいこと、思っていることを全部言っていただいて、僕がそれに対して丁寧に説明させていただくことで、少しでも安心していただければと思います。説明や治療に納得されないままだとお互いにストレスになってしまいますから、コミュニケーションを大切に、なるべくフランクに話をするようにしているんです。3日で治ると思っても「5日ぐらいかな」と余裕をもって伝えるなど、なるべく飼い主さんの気持ちがほっとするようにと思っています。
スタッフの方についても教えてください。
スタッフは、トリマー兼看護師が3人います。うち1人は現在産休中で4月に復帰します。みんな、明るく気さくで素直ですね。僕が注射の準備でその場を離れたりするときには動物を保定していてもらうのですが、人間が沈黙していると、動物でも緊張するんです。そうならないように、飼い主さんにも動物にも話しかけてくれています。また会計の間、抱っこしていたり、複数の動物を連れている方にはドアを開けてさしあげたりなどしてくれていますね。よく気が付くので助かっています。
動物は安心する存在。小さい頃から動物好きで獣医に
開業されてからお忙しい日々を振り返っていかがでしょう。
昔からアメリカンフットボールが好きで、勤務医の頃は1年に1度、ストレス解消に休みを取ってアメリカまでリーグ決勝戦の観戦に行ったこともあったのですが、今は入院やペットホテルもあり、休みらしい休みがないのが実情です。アメフトはもっぱらテレビ観戦ですが、毎日仕事でも不思議とストレスはありませんね。僕は、子どもの頃から犬や猫、モルモット、ハムスター、うさぎなどを飼ったことがあるのですが、動物の魅力はやはり、そばにいると安心するということでしょうか。動物に携わる仕事をしたいとずっと思っていたので、望んでいた仕事ができるのは幸せだと思っています。責任も大きいのですが、やりがいもあり、日々進歩する医療にあわせて勉強を続けています。
子どもの頃からの夢をかなえられたわけですね。
そうですね。でも大学に入った年、ある教授がおっしゃったことが今も心に残っています。「動物が好きなだけの人は獣医にならないほうがいい」という言葉です。やはり命に関わる仕事であり、実験動物もいるので、「好き」だけでは気持ちが持たないわけです。そうしたことも糧にして真剣に勉強し、命を救っていきたいと思い、気を引き締めました。亡くなった動物に対しても感謝しつつ、意味のあることを経験させてもらったと思っています。
これまで印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
以前、親身になって治療を担当した子犬の飼い主さんがいたのですが、回復したことをたいへん喜んでくださって、「先生のおかげで助かりました」と言ってアメフトのヘルメットを贈ってくださったんです。その方もアメフト好きで、もともと「話が合いますね」とお話していたんですよ。そのヘルメットは今も大切に飾ってあります。
病気の早期発見、早期治療のため気軽に来院を
動物の様子はわかりにくく、病院へ行ったほうがいいのか迷う場合もあると思いますが。
そうですね。犬はフィラリア予防やノミ、ダニ対策、ワクチン接種などで病院に来ることが多いのですが、猫だと年に1回ワクチンを打つぐらいの方が大半です。比較的症状が進んでから「ちょっと様子を見ていたのですが……」と連れてこられる方もおり、どうすればもっと気軽に来ていただけるかなと考えることもありますね。「どうして早く来なかったのか」と怒られることを心配されているかもしれませんが、怒る先生は今は少ないですよ。僕も絶対怒りません(笑)。怒られると思って、1週間続いている症状を「昨日から」と言っても、診れば大体の検討はつきますので、正直に言っていただいたほうが動物のためです。僕は「診てあげている」ではなく「来ていただいている」という気持ちですので、安心してお話しくださいね。
ありがたいです。やはり病院に行くことは重要ですね。
まずトリミングで来ていただくといいかなと思います。それでよかったらワクチン接種にも来ていただければ。実は、トリミングのときに皮膚病などを見つけることもあるのです。また、目を見たり、耳掃除をするだけでわかることもあります。そういったことで僕のほうから飼い主さんに「お水を飲む量が増えていない?」「食欲はどうかな?」と聞くと、「そういえば……」ということも。飼い主さんが気づきにくいことでも、病院にいらっしゃったことによって見つかるものもありますよ。
ときには最期を看取ることもあると思いますが。
これ以上はもう難しいという状態になった場合、できるだけ飼い主さんに帰してあげたいと思っています。病院で亡くなるより、家でかわいがってもらったご家族に看取ってもらったほうがいいと思うからです。悲しいけれども、動物は30年も40年も、いつまでも一緒というわけにはいきません。実際はなかなか難しいのですが、犬や猫のほうが人間より早く亡くなることをわかったうえで飼ったほうが、飼い主さんにとってもいいのではないかと思います。
日常のケアで気を付けることや、読者へのメッセージをお聞かせください。
日常の注意ですと、人間の食べ物をあげないでくださいということですね。僕も子どもの頃は動物にハムやソーセージをあげて叱られたこともあり、気持ちはわかるのですが、やはり人間と動物の食べ物は違います。今の動物用のフードは成分も良く、寿命が延びることもあるくらいですが、人間の食べ物はものによっては病気につながることもあるので、控えたほうがいいですね。当院ではフードの相談にも乗っています。動物は言葉が話せないので、飼い主さんが異常に気づいてあげるしかありません。病気は早期発見、早期治療が大事です。当院を「まちのお医者さん」のように思って、いつでも来てください。仕事が忙しく診療時間内に行けないという場合でも、心配なら電話で相談していただければと思います。