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後藤秀美 院長の独自取材記事

クローバー動物病院

(渋谷区/恵比寿駅)

最終更新日: 2023/01/22

JR恵比寿駅東口から徒歩5分。レンガの壁が瀟洒な「クローバー動物病院」は女性獣医師の後藤秀美先生が院長を務める地域密着型の病院だ。開業から16年にわたりペットと飼い主に身近なホームドクターとして信頼を築いてきた。その歴史は「どこからお話すればいいかしら」と先生自身が迷うほど紆余曲折あったという。その末にたどり着いた安心感のある診療はベテラン獣医師ならでは。病気になってしまった動物たちの治療はもちろん、病気を未然に防ぐために重要な飼い主とのコミュニケーションにも余念がない。可愛いペットの健康を託すなら、こんな先生にお願いしたいと思える心優しき獣医師に、動物病院との関わり方や予防接種の必要性、後藤先生ならではの診療などを伺った。 (取材日2012年2月1日)

診療の中心は犬と猫。気軽に相談できる地域のホームドクター

こちらは開業してどれくらいですか?

今年で16年になります。開業した当時は今の時代と違い、動物病院に貸してくれる物件はなかなかなく、物件探しに苦労したことをよく覚えています。また獣医師という仕事も昔は徒弟制度じゃないですけど、新米獣医師は「勉強させていただく」という肩身の狭い立場で、一人前に食べていけるようになるまで時間がかかりました。とくに私の場合、子育てをしながらでしたから、子どもが熱を出して仕事を休んだときなどは、「やる気があるのか」とか「君はだめだ」などとあからさまに言われ、つらい思いもしました。でも、女手一つで子どもを育てなければならなかったことと、小さい頃から動物が好きで獣医師になったことが原動力となり、やむを得ず獣医師の仕事を離れた時期もありましたが、こうして自分の病院を持てるようになりました。

主にどんな動物を診ていますか?

犬と猫が中心です。割合的には半々くらいでしょうか。以前は鳥やウサギなども診ていたんですが、とくに鳥はデリケートなので、今は専門の獣医師をご紹介するようにしています。私の診療は、どんな動物でも診るというより、自分の得意な分野をしっかり診るというスタンスです。ただし、あまりアカデミックな診療にこだわらず、ちょっとしたことでも気軽に相談していただける身近なホームドクターを目指しきました。ですから地域の飼い主さんとは長いお付き合いになることが多いですね。

相談の内容も幅が広そうですね。

そうなんです、本当にいろいろな相談を受けます。病気のこと以外にも、例えば転勤で飼えなくなったペットや野良犬・野良猫の里親探し、虐待を受けた犬や猫を保護した方からの引き取り相談などが絶えません。そういうときはまず親類、友人、知人をあたって、もらい手が見つからなければ里親探しをしてくれる動物愛護団体などに連絡をします。ただ、虐待を受けた動物たちはとても臆病なので里親探しも容易ではありません。実はこの病院にも虐待を受けていた犬と飼えなくなった猫が1匹ずついるんですよ。かれこれ5年くらいになります。当院では基本的に動物を引き取ることはしないんですが、この犬に関しては虐待を許せなかった私の正義感が働いてしまいましたね。

病気のヒントは飼い主との会話の中に。重症の皮膚病が治る最新機器も完備z

動物たちの異常を未然に察する方法はありますか?

病気のときだけでなく、普段から飼い主さんに病院に立ち寄っていただき、何気ない会話の中に病気のヒントを見出すようにしています。例えば当院では常時2人のスタッフがトリミングをお受けしていますので、その際に必ず体重を量り、増減を飼い主さんに伝えて、増えているときには「心当たりはありませんか?」と聞くんです。すると「おやつをあげ過ぎているかもしれない」とか「お散歩をさぼっています」ということがわかります。逆に極端に減っている場合は病気の可能性があるので、「一度、血液検査をされたらいかがですか?」と提案します。ほかにも予防接種のときや、アレルギー用の処方食を買いに来ていただいたときに飼い主さんと雑談をし、ペットたちの異常を感じ取るようにしています。

やはり定期的な予防接種は必要ですか?

はい、犬もそうですがとくに猫の場合は1年に1回、必ず受けるように意識してください。猫は家の中で飼っているから大丈夫と油断しがちですが、万が一、外に脱走してほかの猫と接触すれば、そこで病気に感染することがあります。猫はワクチン接種のチャンスをなくすと病院に来るチャンスも減り、病気の発見が遅れがちになります。また猫は年齢が上がるに連れて肝臓と腎臓が弱るので病気になるリスクが上がるんです。ですから子猫のときの2回の予防接種の後、1年後に1回、それ以降も1年に1回受けていただきたいと思います。あと処方食についても、最近はインターネットの通信販売で購入できますが、処方食はそもそも獣医師の指導のもとで使うものなので、やはり病院で買うことをお勧めします。現に処方食をやめるタイミングを知らずに、いつまでも与え続けている飼い主さんがいますが、本来は処方食の後に維持食を与えるという流れがあるんですよ。

皮膚病の治療に絶大な効果を発揮する最新機器を完備されているそうですね。

マイクロバブルですね。超微細な泡が毛根まで入り込み、毛根に詰まった皮脂や臭い・かゆみのもとをきれいに洗浄してくれるマシンです。たった十数分、マイクロバブルのお風呂に浸かるだけで、驚くような汚れが水面に浮かんでくるんですよ。そうするとノミ・ダニの寄生虫やその卵、アレルギーのもととなる物質が根こそぎ除去されて皮膚病が改善するほか、もともと柔らかい毛質はよりフワフワに、しっかしりした毛質はよりハリが出ます。当院に通っているワンちゃんにもアトピー性皮膚炎の子がいまして、一昨年の夏、すっかり毛が抜けてしまったんですが、マイクロバブルとお薬を併用した結果、昨年の暮れには毛が生えそろってフサフサになりました。もう15歳ですが、もともと甲状腺や心臓が悪く、7ヵ月の頃から診てきた子なので、飼い主さんに「途中で挫折しては絶対にダメ。一緒に頑張りましょう」と言って励ましながら治療を続けてきました。その甲斐あって、今では道ですれ違ってもどこのワンちゃんだかわからないくらい見違えちゃいました。

動物たちの健康は飼い主次第。日頃から病院に立ち寄る習慣を

日々の診療において大切だとお感じになるのはどんなことでしょう?

いろいろある中で飼い主さんとの関わりは大事だなと思いますね。動物たちは言葉をしゃべれませんから、彼らの健康維持は飼い主さん次第。なので病院とはつかず離れずの距離にいて、病気が悪化する前に相談してほしいんですね。この仕事をしていて常々思うのは、もう少し早く来てもらえたら結果は違っていたのに、ということです。昨年末にも、がんがいろいろなところに転移してしまった大型犬が入院し、年明け2日に亡くなりましたが、そのワンちゃんの前回の診察は1年以上前だったので、もっと早く診察できていたら助けてあげられたかもしれない・・・・・・と、とても残念な思いをしましたが、治療には全力を尽くしたので飼い主の方からは感謝のお言葉を頂きました。

先生は何かペットを飼われているんですか?

私はチワワが大好きで、女の子を2匹飼っています。上の子はレイラといって11歳、下の子はティナといって6歳です。犬も猫も好きなんですが、とくに老犬や老猫が好きなんですよね。あの哀愁に満ちた顔がたまりません。だから病気の老犬や老猫が来ると、「私がなんとかしてあげなきゃ!」と、ひと肌もふた肌も脱いであげたい気持ちになります。

病気の動物たちを1匹でも多く救うための先生の夢や展望をお聞かせください。

私の夢はですね、この恵比寿で病院の規模を拡張し、24時間に近い体制を敷いて夜間対応もできる医療センターを作ることです。現在は目黒にある夜間救急動物病院と連携していますが、恵比寿に受け入れられる病院があれば飼い主さんたちも安心ですよね。息子も獣医師をしていますから、なんとか夢を形にして息子の代に引き継ぎ、地域のみなさんに還元したいと考えています。私ももう還暦を過ぎていますから、残りの人生はその夢に懸けたいですね。

大切なペットたちが元気に暮らせるよう、飼い主さんへのアドバイスをぜひ。

さきほども申し上げたように、動物病院に気軽に足を運び、ペットたちの様子を獣医師に伝えてください。そして1年に1回はペットを連れて行き、病気の早期発見・早期治療を心がけていただきたいと思います。動物病院を選ぶにあたっては治療費だけで判断せず、治療の内容や使うお薬などについて獣医師の説明をよく聞いてください。当院も電話でお問い合わせいただいた方に、「一度、おみえになってお話をしませんか?」と申し上げて、直接お話を伺った上で治療についてとことん説明し、さまざまな選択肢をご提案して飼い主さんに選んでいただくようにしています。なかには病院を転々とする飼い主さんもいますが、それはお勧めできません。なぜなら病院側に動物たちのデータが蓄積されず、病気になったときの対応が不十分になりかねないからです。大切なペットたちの健康のためにドクターショッピングはなるべく避けていただくようお願いしたいですね。

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