柳田 洋 院長の独自取材記事
かえで動物病院
(三鷹市/武蔵境駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR武蔵境駅南口からまっすぐ伸びる、かえで通り沿いに面した「かえで動物病院」。淡いピンク色の3階建て、洋風の外観だ。待合室はすっきりと落ち着いた感じにまとめられ、温かみのある照明が心を和ませる。入り口横に貼られた、小学校の職場訪問で来院した子どもたちの絵とメッセージがほほ笑ましい。院長を務めるのは、動物も人と同じで歯の健康は全身の健康につながると、歯科診療に熱意を注ぐ柳田洋先生。動物看護師の妻と二人三脚で診療に取り組み、一般診療はもちろん歯の悩みにも的確に応えてくれる頼もしい存在だ。その評判を聞きつけ遠方から通う患者も多いという。平易な言葉を交えながらわかりやすく説明をしてくれる院長の様子から、動物に対する愛情と真摯な思いが伝わってきた。 (取材日2017年2月8日)
動物も口腔内の衛生環境が生活習慣病と深く関わる
平日は朝8時30分から、そして日曜日も診療しているのですね。
朝早く診てほしいという飼い主さんが結構いらっしゃるので、その声に応えたいと思っています。設備については、基本的な機器をそろえ、検査結果をすぐに出せるようにしており、ホームドクターとして1次診療をしっかりできる体制を整えています。飼い主さんが気付かれたことや困ったことなどを話し合いながら、動物たちがより健康な状態で幸せに暮らせるようサポートしていけたらと思っています。
犬・猫だけでなく幅広い動物を診ているのですね。
犬・猫の他、うさぎ、ハムスター、モルモット、フェレットなどの小動物を診療しています。小さい頃から小動物を飼うのが好きでハムスターやモルモットを飼ったこともあります。ハムスターやモルモットなどの小動物は、体が小さいことに加え、悪くなるまで症状を現さないことが多いので診療は難しいのですが、その時の飼育経験が病気の治療に役立っています。病気だけを診るのではなく、動物の置かれた環境を見つめ飼育環境についてアドバイスすることも獣医師として大切な役割だと考えています。
診療の特徴について教えてください。
歯科診療と予防医療を主体とした健康管理に力を入れています。人では、糖尿病や心臓病などの生活習慣病に歯周病が深く関わっていると指摘されていますが、動物も同じと考えられています。しかも動物たちは自分で口腔内のケアができないので、成犬や成猫の約80%は歯周病になっているといわれています。健康で長生きするためには、毎日の食事や運動、予防に加え、動物の生涯にわたり歯を長持ちさせることがとても重要です。動物病院で行う歯科治療と、それを維持させるために飼い主さんが行う口腔内ケアの二人三脚が、歯科治療を成功させる秘訣だと考えています。飼い主さんは最初から完璧なケアをめざすのではなく、まずは毎日継続することを目標にしていただき、それぞれができる範囲のケアを、少しずつステップアップしていけたらいいなと思います。
そのためのセミナーも開いているのですね。
現在は年に1度くらいですが、院内で「飼い主さまふれあいセミナー」を開いています。セミナーでは、診察中には詳しくお話できない歯の病気や予防法、実際の歯の磨き方などの具体的なポイントを実演を交えて説明します。また歯が折れる原因には、口を使った遊びや物を噛む癖などが関係していることが多いので、生活習慣の見直しなどについてもお話ししています。おかげさまで飼い主さんたちにとても好評で、これからも続けていきたいですね。
周囲の生活環境まで、よく理解した上での診療を
来院する動物たちの種類や疾患に傾向はありますか?
最近は猫が多く、次に犬ですね。特に緊張しやすい猫については、時間をかけて診察するようにしています。またハムスターやうさぎも、結構診ています。近隣だけでなく遠方から来る飼い主さんも多く、横浜からモルモットの歯の病気で来院された方もいました。特に歯科疾患については、他の病院からの紹介やセカンドオピニオンとしてご来院される飼い主さんもいらっしゃいます。患者さんは消化器系、とくに当院の場合は肝臓内科での受診が多いですね。肝障害は慢性的な疾患になることもあり、いかに症状をコントロールするかが重要になってきます。長く通ってもらう場合もありますから、治療の目標をどのようにするか、飼い主さんとよく相談するようにしています。
先生はもともとこちらのご出身だそうですね。
実は幼少の頃から三鷹に住んでおり、小・中・高校と市内の学校に通いました。愛着がある町ということは、もちろん大きな理由ですが、それともうひとつ、地域のことをよく知っていると、診療に役立つからです。例えば三鷹は都心にも近いのですが、農地や緑地もまだまだ多く、寄生虫疾患や肥料の中毒などにも気をつけなければなりません。このように、環境が病気の成り立ちと関係していることは多く、実際に住んでみないとわからない部分もある。開院するなら、患者である動物たちが暮らす周囲の環境も理解して診療にあたり、飼い主さんの相談に乗ることができたらと思っていました。
幼い頃から獣医師を志していたのですか?
子どもの頃、家では犬を飼っていましたし、実家の周りには川や雑木林があり、いろいろな生き物と親しんできました。また小さい頃から科学に興味があり、試験管の中で植物を育てたりするバイオテクノロジーに憧れていました。そのため農学系の大学に進みたいと思っていたのですが、大学に進むなら資格を得られる学部ということで、同じ農学系の獣医師をめざすようになりました。最初は牛などを診る酪農の獣医師になりたいと思ったのですが、大学に入ってさまざまな実習を行っていた頃、やはり生まれ育った地元で開業したいと思い、犬・猫などの小動物の診療をする獣医師になろうと目標を定めました。
動物たちが生涯安心して過ごすためのサポートを
今後の展望について教えてください。
医療の進歩や飼い主さんの気配りで動物たちの寿命が延びており、それをサポートするのは動物病院なのですが、飼い主さん自身がご高齢の方も多くいらっしゃいます。自分がいなくなった後の動物たちのことを気にされる方が増え、よく相談を受けるようになりました。新たに飼うことを躊躇しているという話も聞きますが、ご自身が健康でいるために、動物と暮らすことは一つのきっかけにもなりますから、応援していきたいですね。数年前に行政書士となる資格を取ったので、動物たちが生涯安心して過ごすために、飼い主さんがどのような準備ができるかを法的な面からもサポートできるよう体制を整えているところです。
日々お忙しいと思いますが、オフの時間はどのように過ごされているのですか?
オフのときでも、つい病院のこと、患者である動物のことを考えてしまいます。なかなかゆっくりできる休日はないですね。でも趣味はいろいろあって、高校時代から始めた弓道は、今も地域の連盟に所属しています。無心で弓を引くときは、自分と向き合ういい時間になっています。バイクも昔から好きで、1300ccの大型車で通勤する日も多いです。風を切って走るのは気持ちがいいので、年に一度くらいはツーリングに出かけます。ゆっくり外出できるときは、江戸の情緒が残るような景色を探すのが好きなので、神田や御茶の水界隈、築地、古書店のある神保町などを回るのが楽しみで、家族と一緒に出かけることもあります。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
動物の変化にまず気づくのは飼い主さんですから、何か普段と様子が違うと思ったら、ためらわずに相談に来ていただけたらと思います。結果として何もなければ安心ですし、早期発見でよかった、大事に至らずに済んだということもあります。また歯科疾患の治療は専門的な技術と、ご家庭でのケアの両方が必要ですから、飼い主さんの状況に応じて治療後もアドバイスをしていきます。飼い主さんが気付いたところをきちんと伺って、一緒に対策を考えていくという方針で診療しているので、遠慮なくありのままを話してもらったほうが、より早く的確な治療ができると思います。