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神田 知香 院長の独自取材記事
チロクリニック
(府中市/分倍河原駅)
最終更新日: 2023/01/22
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府中市の「チロクリニック」を訪ねた。動物病院というよりも、ショップのような佇いで、扉を開けると看板犬マメが迎えてくれた。獣医師の神田知香先生は府中市出身。多摩市や八王子市の動物病院に勤務した後、2013年7月に同クリニックをオープンした。白衣を着ておらずカジュアルな雰囲気なのは、「飼い主さんが気軽に相談に来られる、保健室のような存在でありたいから」と神田先生。プライベートではビールやライブハウスが大好きという、気さくな人柄が印象的だ。今回は、力を入れているというフードのことや、飼い主との関係で大事にしていること、獣医師になるまでのことなど、幅広く話を聞いた。 (取材日2017年3月13日)
お店のように気軽に立ち寄れるクリニック
クリニックでありながら、お店のような佇まいですね。
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開業当初はお店をメインでやろうと思っていたんです。今でも近くの公園からのお散歩帰りにここで話をしたり、おやつを買っていかれる飼い主さんは多いですよ。ただ最近は、診察を希望される方が増えてきたので、クリニックとしても力を入れています。診ているのはワンちゃん、猫ちゃんです。ショップにはさまざまなフードを置いているので、フードについての相談が多いのと、処方食を止めたいという方からのご相談もあります。ワンちゃん、猫ちゃんにアレルギーがあり、かかりつけの獣医師から「これしか食べさせてはダメ」と言われたけれど、飼い主さんとしては納得がいかなくて、「何とか他に方法はないですか?」といったご相談です。そういうときは、ワンちゃん、猫ちゃんの症状を詳しくお伺いして、可能な限りご提案させていただいています。
フードについてこだわりがあるのですね。
開業にあたっては、ドッグフードが一番のテーマでした。一般的な動物病院では時間的な理由もあって、「ちゃんとしたものを食べさせていれば大丈夫ですよ」と説明を簡単に済ませがちです。でも、飼い主さんにしたら「ちゃんとしたものって何?」と思いますよね。本来はその子、その子によって必要なものが違いますから、「ドッグフードだから大丈夫」とも言いきれないですし。実際に、勤務医時代も飼い主さんからフードの相談を受けることが多かったので、的確にアドバイスできればいいなと思ったので、自分でもかなり勉強し、こだわったものを置いています。
フードはどのように選んだらいいのですか?
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動物用ドライフードは、大きく分けると植物性の食材と動物性の食材を混ぜて作られています。一般的にはお米や小麦、鶏肉という組み合わせが多いのですが、それとは違う組み合わせで作られているフードを選んでいます。なぜ組み合わせが大事なのかというと、結局、人間と一緒で、同じものだけを食べ続けることはできないと思うからです。飽きてしまうということもありますし、栄養の偏りも生じます。原材料が違えば、違う刺激が体内に入ってくることになるので、それが動物の体にとって大事だと思います。これは、医学的な根拠というよりは経験値による考えですが、体はいろんな刺激を受けるからこそ、それに対応して丈夫になるのではないでしょうか。
獣医師と飼い主が協力する姿勢が大事
診療の面で力を入れていることは何ですか?
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体質改善につながる取り組みや、歯磨きの指導もしています。動物は歯石がついて歯周病になることが多いので、予防には日々のブラッシングが有効です。先ほどのフードの話もそうですが、動物たちの日常のケアについて、学ぶ場になればとも思っているんです。深刻な病気になる前に、病気を予防していきましょうということですね。最近では、ちょっと気になることがあるときに「病院に連れて行ったほうがいいかな?」というご相談も増えています。「動物病院はなんとなく行きづらい」と感じている飼い主さんが気軽に相談できる「保健室」のような存在となり、大きな動物病院に足を運ぶきっかけづくりができたらと思っています。
飼い主さんとの関係において大事にしていることはありますか?
動物が病気になったとき、病院に連れて行けばすぐに治ると考える飼い主さんも多いようです。でも実際にはいろんな病気がありますから、短期間で治るものと、そうでない病気があることを知っていただけたらと思います。そして、ただ情報を集めて「これをやれば一気に治る」と過剰に期待するのではなく、自分のこととして捉えていただけるとうれしいですね。動物の病気は、獣医師と飼い主さんが協力し、一緒に治していくという姿勢が大事だと思っています。皮膚のアレルギーであれば、飼い主さんにシャンプーをしていただくことも大事だし、日常生活のなかで続けていくべきことがたくさんありますから。
印象に残っているエピソードを教えてください。
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勤務医時代、3世代同居の家族が飼っているワンちゃんを診たときの話です。家族がみんな忙しく、いつもおじいちゃんと犬だけが家にぽつんと残されていたみたいなんですね。診させてもらったところ、寿命もあるけれど、積極的な治療をすれば1~2年は楽しく生きられるという状況でした。だけどおじいちゃんは、そのことを家族に説明せず、「世話をしないなら、いっそのこと楽にしてやれ」と言い張ったそうなんです。実は自分とワンちゃんを重ね合わせていたようで……。その後、お父さんやお孫さんが別々に病院に来て、家族の打ち明け話をして帰る、ということが続きましたが、少しずつ家族が話し合いをするようになり、結局、ワンちゃんは治療を受け、家族の仲もよくなったそうで。お父さんが「あのときはお世話になりました」と後日、訪ねて来てくださいました。やはり、家族が大事なんだなと思いました。獣医師としての在り方を決めた出来事でしたね。
往診にも対応。地域の頼れる獣医師として
神田先生は、やはり子どもの頃から動物が好きだったのですか?
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はい。幼稚園の卒園アルバムには「パンダの飼育係をやりたい」と書いていました。初めて犬を飼ったのは小学生のときで、友だちの家で子犬が産まれたので、どうしても自分で育ててみたくて親にお願いして飼わせてもらったんです。それがチロという名前で、このクリニックの名前の由来です。あと、府中には競馬場があるので、子どもの頃は父に連れられてよく行っていたのと、馬に乗せてもらう機会があって、乗馬の楽しさを知りました。それからずっと馬に乗り続け、大学時代は馬術部で馬と走ることに夢中になっていましたね。最初の頃は振り飛ばされたりもしましたが(笑)、練習するうちに、馬がちゃんと乗っけてくれている、と感じられるようになるんですよ。
獣医師になるべくしてなったのですね。
そうなのですが、実は高校卒業後は大学の文学部に進学し、損害保険会社に就職したんです。収入も安定しているし、大好きな乗馬が続けられるからいいかなって。でもある日、本屋さんで社会人向けの大学を特集した本を見つけて、母校の麻布大学獣医学部に社会人編入制度があることを知ったんです。当時の上司からは「趣味は仕事にしないほうがいいよ」なんて言われましたけど、やっぱり好きじゃないと身が入らなくて。だから、「挑戦しよう!」と決意しました。もう必死で勉強して、26歳で念願の獣医学部に入学しました。ずっとやりたかった勉強でしたから、授業は大変でしたけど、すべてが新鮮でしたね。
今後、さらに力を入れていきたい点などお聞かせいただけますか?
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開業した7月に毎年、飼い主さんたちと立食パーティーをしているのですが、もっと皆さんと楽しく過ごす機会を増やしていきたいですね。また、府中市内を中心に、往診にも力を入れていきたいと思っています。特に大型犬は移動が大変なので、病院に連れていけないという飼い主さんも多く、少しずつ相談が増えています。一般の動物病院ではやれないことをやっていきたいと考えていますので、どんなことでもご相談いただき、頼っていただけたらうれしいです。