太田 茂雄 院長の独自取材記事
おおた動物病院
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日: 2023/01/22
大宮駅から車で10分ほどのところに位置する「おおた動物病院」。2017年3月に新規開業した。近くに大きな公園があることも、この場所を選んだ決め手だったそうだ。院長の太田茂雄先生は、日本大学の獣医学科を卒業し、外科、神経科、循環器科を専門としている。犬や猫の一生を診られるホームドクターをめざし、高い専門性と対応力を生かした診療を行っている。「本当に周りの方に恵まれていて感謝するばかりです」と語る言葉からも、誠実な人柄が感じられる太田先生。獣医師をめざしたきっかけから、今後の目標までじっくり聞いた。 (取材日2017年6月14日)
獣医師の道を決意させたシロ、腫瘍の学びに導いたジル
先生も動物がお好きなのですよね。
そうですね。最初に飼ったのは小学校1年生の時に拾った捨て犬で、「シロ」と名付けてかわいがっていました。うちは親が共働きだったので、学校帰りに友だちと遊んで帰っても、家には誰もいなくて。シロがいたおかげで寂しい思いをすることなく過ごせたんです。動物のお医者さんになりたいと思ったのも、シロを動物病院に連れていくようになったから。強く決意したのは高校生の時でした。シロが亡くなったときは、ぼろぼろ泣きました。実は、母方の祖父も獣医だったそうです。その祖父は、母が小さい頃に亡くなっているので会ったことはないのですが、それもあって両親も応援してくれました。
その後、日本大学の獣医学科に進学されて。
学生時代には、当時飼っていた2代目の犬「ジル」が肥満細胞腫という病気になりました。一般の動物病院で対応できないと言われ、当時の私の知識では何もできなくて。なんとか助けたいと必死で勉強する中で出会ったのが、恩師である長谷川篤彦先生、小林哲也先生です。本当にたくさんのことを学ばせていただきました。ジルは最終的には亡くなってしまったのですが、あの子に勉強させてもらって感謝の気持ちです。
その後、なぜこの地で開院されたのですか?
卒業後は、大学に残り研修し、たくさんの先生方に出会い、本当に多くのことを学ばせていただきました。そして今は、それらの知識や経験を生かして診察や治療をしています。また、この地で開院した理由としては、私自身、埼玉出身ということが大きくありました。その中でも大宮や浦和でやってみたいと思っており、たまたま私が大宮に住んでいたこともあって、この地大宮での開業を決めました。この場所の決め手といったところでは、近くに広めの公園があるので、散歩や気晴らしに非常に良いなと思ったことも挙げられます。
異変を見逃さないよう鼻の先から尻尾の先までくまなく
開業にあたってこだわったことを教えてください。
患者さまや飼い主さまが落ち着く場所を作ろうと思いました。待っている間もなるべくストレスを感じないように、待合室を広めにとって、ワンちゃん猫ちゃん用、飼い主さま用それぞれのお水をご用意して。特に小さなお子さまをお連れの飼い主さまに負担が少ないようにとキッズスペースを作りました。椅子と椅子の間も広くして快適に過ごせるようにしていますし、院内はバリアフリーです。医療機器類はあとからでも足せますから、まずは空間に一番こだわりました。機械のことを言えば、残念ながらCTやMRIはないのですがそれ以外はそろっていて、一通りのことは対応できるように備えています。
ペットや飼い主さんと接するときはどういうことを心がけていますか?
まずは清潔であること。服に毛が残らないようコロコロをかけるとか、匂いとか、爪とか、そういうのは基本中の基本です。その上で、動物や飼い主さまに対して笑顔で接すること。そして、基本に忠実に、飼い主さまの話をよく聞くということ。実際にワンちゃんや猫ちゃんを診るときには、まずは全身を触って見て聞いてから、一番最後に悪いところを診るようにしています。最初に痛みやかゆみがあるところを集中的に診てしまうと、他の箇所に目が向きづらくなってしまいます。でも、症状は体の他の部分と関連していることも考えられます。ですので、鼻の先から尻尾の先まで基本に忠実にチェックすることは欠かしません。ワクチン接種のような健康な子の場合でも必ずそうしています。
他院との連携を重視されているようですね。
私のところで抱え込むのではなく、必要に応じてその子にとってベストだと思う先生をご紹介しています。大学病院にいたこともあって各分野の先生とネットワークがありますので。この病気だったらこの先生だよね、と誰もが納得できる先生方です。紹介先で治療を受けるケースもあれば、診断が確定しこちらに戻ってきて治療するケースもあります。動物のためにも飼い主さまのためにもご紹介は大事だと思います。例えば、飼い主さまが私の診断結果にご納得いただけず、ご自身で他の動物病院に行かれると、同じような検査をもう一度受けないといけません。動物たちの体にも、金銭的にも負担が増えてしまいますよね。そのようなことがないように、信頼できる先生をご紹介するようにしています。
写真をたくさん撮って。一人の飼い主として伝えたい
この記事を読む飼い主さんに伝えたいことはありますか?
ぜひ定期的にペットの写真や動画を撮ってください。できたら少なくとも1ヵ月に1枚くらい。理由は3つあります。1つは、いい写真を取ろうとするとペットを見る時間が増えるから。普段は意識しないようなことが見えてきて、ささやかな変化に気づくことができます。やせてきた、太ってきたとか、毛の状態、顔つき、歩き方や声。おかしいなと思うことがあったら受診してみてください。2つ目は、震災などで迷子になった時に絶対に役に立つから。ペットが小さいときは撮る方が多いのですが、大きくなって変化が少なくなると撮らなくなりがちです。でも直近の写真や動画があったほうが、探す時に役に立ちます。3つ目は、いつか写真や動画を見て、ペットを思い出すときがやってくるから。最期の最期に「ありがとう」と思える日が必ずやってきますので。
先生もよく撮るのですか?
撮りますね。初めのうちはかわいい写真ばかり撮っていたのですが、今はただ単に歩いているだけの動画とか、あくびしているところとか、ご飯を食べているところとか……。何気ない様子でいいんですよ。なぜこういうことを思うようになったかというと、1代目、2代目の子の頃は今と違ってデジカメがなかったこともあって、亡くなった時に思い出が少なかったんです。もちろん心の中には残っているのですが、写真があればよかったなと。楽しかった思い出を振り返るときがいつか必ずやってきますので、動物たちを当たり前の存在と思わず、常に大事に見つめていてほしいですね。こういうのは獣医としての言葉ではないかもしれないですけど、一人の飼い主としてお伝えしたいです。
動物を大切に思う先生ならではの言葉ですね。最後に今後どのようなことをめざしたいか教えてください。
外科や神経外科、循環器内科の専門的な知識も含め、常に新しい情報にアップデートしていきたいと思います。学会にもよく行きますし、基本を忘れないよう教科書も読み直すようにしています。メーカーさんを招いた院内セミナーを開催して、スタッフと一緒に学ぶこともあります。最近は食事をアドバイスするための資格を取りました。栄養学はあまり大学で学ばない分野なのですが、ホームドクターとしては必要なことですので。今後は脳腫瘍外科や心臓外科の高度な医療を提供できるようにしたいですが、一方で専門性に偏らず、生涯ホームドクターとして、動物たちの一生を診ていけるよう心がけたいと思っています。