井口 和人 副院長の独自取材記事
小滝橋動物病院 目白通り高度医療センター
(豊島区/落合南長崎駅)
最終更新日: 2023/01/22
「小滝橋動物病院 目白通り高度医療センター」を訪ねた。同院は、一般外来を行う「かかりつけ」としての役割だけでなく、さまざまな選択肢を用意してニーズに応えている動物病院だ。同院は6人の獣医師が在籍しており、CTやMRIといった検査機器も備えている。身近にこうした動物病院があれば、飼い主にとっては心強いだろう。同院では心臓外科や人工透析内科を扱っていることも特徴の一つで、飼い主からの相談も増えているそうだ。今回は、センター長(副院長)でもある井口和人先生に、同院の強みや特徴をはじめ、井口先生が診療において大事にしていることなどを聞いた。 (取材日2018年1月22日)
動物の医療を人間の医療に近づけたい
病院が設立された経緯を教えてください。
当院は、グループ病院のセンター的存在として新設されました。ひと昔前と比べると、動物をペットではなく、家族の一員として捉えている飼い主さんが多くなっていますから、動物の医療においても、より正確な診断が求められていると思います。そこで、大病院以外ではなかなか整えられていないCTやMRIといった検査機器を当グループに導入するにあたり、新しい施設をつくることになったんです。人の医療で行われている領域までできるだけ近づけていくことが、小滝橋動物病院グループ全体でめざしていることです。
紹介のみの診療ではなく、一般外来もあるのですか?
もちろん一般外来も行っています。一般外来の場合、ご相談の多いケースとしては、吐いてしまったり、下痢をするといった日常的な体調不良のほか、セカンドオピニオンのご相談などがあります。他にも何か気になっている症状があれば、相談に来ていただけたらと思います。また、症状が進んだために元の病院で診られなくなり、当院に紹介されて来るケースもあります。当院には心臓外科がありますので、心臓外科について相談にみえるケースも増えていますね。診療可能な動物は、現状はワンちゃん、ネコちゃんが中心となっています。
診療体制や特徴を教えてください。
循環器科、皮膚科、腫瘍科、神経科、眼科、整形外科などの分野で、獣医師が計6人、他にサポートスタッフが在籍しています。日々の業務はスタッフのチームワークがあってこそなので、お互いに協力することをみんなで大事にしています。また、先ほどお伝えした通り、検査の設備としてCTやMRIを導入していますので、これらの結果をもとに正確な判断ができるよう努めています。入院施設はICUに加えて、通常の入院設備はワンちゃん用、ネコちゃん用を完全に分けました。動物は音に神経質なところがあり、他の子を怖がるケースが多いので、お互いの音が気にならないように配慮しています。入院中にストレスが発生すると、ごはんが食べられなくなったりしますので、できるだけ入院している子たちが安心して過ごせるような環境を、という想いで導線も考えているんです。
早期の処置で救える命がたくさんある
心臓外科を開設するに至った背景をお伺いできますか?
以前は名古屋の動物病院に勤務していましたが、4年後に東京に戻ることになりました。東京に戻ってから小滝橋動物病院グループの中村院長に出会い、”動物医療を少しでも人間医療に近づける”をモットーにしていることに共感し、こちらに就職することにしました。それから4年かけて、2016年にやっと念願の心臓外科を標榜科目として掲げることができるようになったんです。心臓病は、初期のうちは自覚症状がないのが特徴で、無症状のまま進行することの多い病気です。サインとしては、散歩に行ってもすぐに帰りたがる、階段の上り下りが億劫になったというように、疲れやすくなる症状があります。完璧な予防は難しいですが、定期的な健康診断によって気がつければ、将来、症状が出るかもしれないという認識ができるので、早期発見につながります。
心臓病は、気づきにくい病気なのですね。
そうですね。犬に多い心臓病のひとつに、僧帽弁閉鎖不全症という病気があります。今は内科で治していくことが多い病気ですが、そのうちの何割かは、外科でないと助けられないケースもあるのです。しかし、見極めが難しいため、わからないまま症状が進んでしまうこともあります。もし手術となれば、たいへん難しい手術ではあるのですが、それを普通に受けられるようにしていくことが、獣医師である自分の課題だとも思っています。
セカンドオピニオンを希望する飼い主さんもいらっしゃるのですか?
飼い主さんもいろいろと勉強されていて、複数の先生の意見を聞いてから判断したいということで相談にいらっしゃいますね。望ましい進め方としては、まずは元の病院に相談をしていただいて、どのような診断がついたのか、当院でも確認させていただけるといいですね。その上で当院でもアドバイスします。最終的に診断書という形で元の病院にお帰ししますので、検討していただければと思います。
飼い主の思いにできるだけ沿った医療を
獣医師になったきっかけを教えてください。
昔から動物が好きだったので、何かをやるなら獣医師がいいなと思っていました。当時、実家では犬や猫を飼ってはいけないと言われていたのですが、近所で拾ってきては、怒られていました(笑)。大学生になって独り暮らしを始めてから、猫を飼い始めました。動物病院に引き取り手のない猫がいるということで、僕が引き取ることにしたんです。黒猫の雑種で、片目が見えない子だったんですが、今は私の実家にいて、16歳になるんですよ。他に、犬を飼っていた時期もあるのですが、亡くなって、今は猫が2匹います。我が家には小さな子どもがいるんですが、いい遊び相手になっているかもしれませんね。私にとってもかわいい存在で、家族のような感じです。
やりがいを感じるのはどんなときですか?
さまざまな症状で来院した動物たちが、ごはんを食べ始めたときです。食べられるということは、順調に回復しているということですから。ごはんを食べている姿を見たときが一番うれしいですね。獣医師として大事にしていることは、飼い主さんの思いにできるだけ沿う形で選択肢を提案することです。飼い主さんがどうしたいのかご意見を伺った上で、進めていくことが大事だと考えています。また、医療は日々進化しているので、少し前に正しいとされていたことが、今でもそうとは限りません。それを忘れずに、今、これが一番正しいと自信を持って業務にあたることが大事だと思っています。
今後の展望やメッセージをお願いします。
先ほども少しお話しましたが、小滝橋動物病院グループ全体の目標として、動物医療を人の医療にできるだけ近づけていきたいと考えています。動物は人間に比べて寿命は短いですが、人間と同じように病気が出てきますので、一緒にいる時間をできるだけ大切に過ごすことが大切なのではないかと思います。なんとなく元気がないとか、食欲が少ないとか些細な変化でも、そこから病気が見つかることもありますので、気づいたら相談にいらしてください。