宮 直人 院長の独自取材記事
奥沢すばる動物病院
(世田谷区/奥沢駅)
最終更新日: 2023/01/22
東急目黒線奥沢駅から徒歩1分という好立地に2017年6月オープンした「奥沢すばる動物病院」を訪ねた。院長を務める宮直人先生は、日本獣医生命科学大学を卒業。呼吸器科および腫瘍科を得意分野とし、緊急時の夜間対応にも手腕を発揮する。清潔感と真新しさが感じられる院内は、明るく柔らかいトーンのグリーンとブルーをアクセントカラーに配し、アプローチや待合室はウッディな内装で落ち着いた雰囲気を演出するなど、若者向けのしゃれた雑貨店のようなたたずまいを見せている。「大好きなこの街に根差した動物病院をめざしたい」と抱負を語る宮院長に、獣医師をめざしたきっかけから今後の展望まで、いろいろと話を聞いた。 (取材日2018年5月14日)
街の動物病院として救急科にも対応していきたい
まず、獣医師をめざしたきっかけをお聞かせください。
高校生の時、実家で初めて飼った犬が死産をして、それがすごくショックで悔しかったことがきっかけです。ちょうど自分の進路を考えなくてはいけない時期だったこともあり、獣医師をめざして日本獣医生命科学大学に進学しました。僕は放射線科、呼吸器科やその中でも腫瘍科を専門としています。一般的に呼吸器の疾患は生死に関わるケースが多いので、そういった症例にどう対応すればいいかを、働きながら突き詰めていきたいとも思うようになりました。
それが獣医師としての勤務姿勢につながっていくんですね。
大学卒業後に勤めた動物病院が夜間も対応する病院だったんですが、夜間は対応できる人数も少なく、常にベストな対応ができるわけではないと感じました。人間の場合は、重症ならすぐ救急科のある大規模病院などに行きますが、動物の場合は重症でもまず街の病院に来てしまうことが多いんです。そういったときに、慢性疾患の子たちばかり診ていると、どうしてもクリティカル(緊急性の高い)症例への判断・反応は遅くなりがちです。自分自身ではそういった時にも迅速かつ適切な判断をしていけるように心がけています。
救急科の部分も重視されているのですね。
救急ですぐに診てもらえる所があるのは、地域の飼い主さんにとっても安心につながるはず。呼吸器科や腫瘍科といった得意分野があることも、強みの一つだと考えています。もちろん、より高度な治療が必要なら、迅速に専門の先生を紹介します。夜間でも来院される前に電話をいただければ、待っている間に準備できますし、緊急の場合飛び込みでいらっしゃっても、可能な限り対応するようにしています。
わかりやすい説明と明確な選択肢の提示を心がける
開業にあたってこの地を選んだ理由と、こだわった点などあればお聞かせください。
奥沢は妻の地元でもあり、開業するなら大好きなこの街でと決めていました。昔から長く住んでいる方が多くて温かい雰囲気があり、僕らも自然に溶け込むことができました。開院にあたっては、全体的なイメージを統一するため、建物の設計だけでなく、名刺やホームページのデザインまで、同じ会社にまとめて依頼しました。そのときお願いしたのは、ぬくもりが感じられ、しかもこの街の雰囲気に合うようにしてほしい、ということでした。院名の「すばる」は妻と2人でいろいろ考えたんですが、語感もよく、目印となる星という意味からも悪くないなと思ってつけました。
診療に関して心がけていることはありますか?
病気を治すためには飼い主さんの協力が不可欠ですから、症状や治療法について正しく理解していただけるように、わかりやすく説明することを最重要視しています。病気が複雑になるほど説明が難しくなるので、その点をカバーするため、ホワイトボードに絵を描くなど、説明をできるだけビジュアル化するようにしています。その上で治療の選択肢を明確に提示するように心がけています。また院内は清潔感を保ち、温かくやわらかい雰囲気で診察するように心がけています。動物たちに対しては、病院が苦手な子も多いので、余計なストレスをかけないように気をつけています。具体的には屈んで接する、大きな音を立てないとかですね。細かいところですが。
専門にされている呼吸器科と腫瘍科について、飼い主さんに気をつけてほしいことはありますか?
呼吸器に関しては咳、くしゃみ、鼻水、声がれといった症状が中心ですが、重要なのはその原因を突き止めることです。ふだんの生活の中でいつもと違うところがないかどうか、それが重要なヒントになるので、気づいたことは何でも話してほしいですね。たいていの場合、飼い主さんの直感が合っていることが多いんです。腫瘍については、体の外側にできるものは、ふだんから体を触ってあげて、小さいうちに気づいてあげることですね。内臓の腫瘍などの場合は、健康診断で見つかることも多いです。7~8歳を超えたら定期的に健診を受けたほうがいいとも言われていますが、あまり堅苦しく考えずに、例えばワンちゃんなら散歩がてらに寄ってもらって、気になることがあればお話ししていただくなど、ふだんからコミュニケーションを密にすることでも、早期発見につながるのではないかと思います。
地域にしっかりと根付いた動物病院をめざす
院内でセミナーを開かれているそうですが、どんな内容ですか?
今年の4月に始めたばかりですが、そのときは日常ケアとして爪切りや耳掃除、歯磨きなどのコツを取りあげました。もともとは妻と「そういったこともやってみたいね」と話していたところから始まったんですが、自分たちの理念や方針を地域の方たちに伝える機会をつくることと、飼い主さんとの交流の場にしたいと思っています。セミナー自体は30分程度で切り上げ、その後は飼い主さんとお話をする時間にすることで、ふだんの診察では聞きづらいことなどを話していただく機会になればいいですね。さすがに毎月では準備が大変なので、2~3ヵ月に1度ずつぐらいは開いていきたいと思います。次は6月末で時期柄、熱中症をテーマに取り上げたものを行う予定です。
休日や時間のあるときはどんなことをしていますか?
子どもが生まれて以来、休日はひたすら子どもの相手をしています(笑)。妻も獣医師で、結婚前は僕と同じ動物病院に勤めていたんです。同じ感覚で迅速に対応ができるので助かっています。なるべく仕事のことは家庭に持ち込まないようにしていますが、どうしても話には出ますね。ときにはアドバイスをもらえることもあり、心強い存在です。2人でここまでやってきてよかったなと思います。あとは時間があるときにブログを書いたり、最近では当院のことを発信したりできるSNSも始めました。患者さん向けのチラシなども手作りなんですよ。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
地域にしっかりと根付いた動物病院になりたいですね。奥沢という地域にとって必要とされる存在になりたいと思います。あとは現実的なことですが、入院室を増やしたり、医療設備を整えたり、往診などもできるといいですね。都内でも救急科を専門とする動物病院はあって、しっかりと稼働していますが、それよりも一つ手前の段階での救急医療に対応できる獣医療施設として、地域と大規模な動物病院とをつなぐ橋渡し的な存在をめざしたいと思います。