高橋 敦司 院長の独自取材記事
シーファ動物病院
(富士見市/みずほ台駅)
最終更新日: 2023/01/22
富士見市みずほ台にある「シーファ動物病院」は、飼い主とのコミュニケーションを何より大切にしている動物病院だ。院長の高橋敦司先生は、「どんな治療をするかはもちろん、飼い主とペットが笑顔で生きられる選択が重要」と気さくな笑顔で語る。院内は犬・猫のスペースで分けられており、診察室への動線や入院施設も別々。広々とした犬側の待合室では、大型犬もゆったり診察を待つことができるよう配慮されている。地域貢献への意識を高く持つ高橋先生に、診療にかける思いを聞いた。 (取材日2018年6月6日)
飼い主の心を救いたい。その初心が今も診療の原動力
院名の「シーファ」はどのような意味ですか? 院内設計でこだわったところは?
シーファは実家の飼い犬の名前なんです。母が音楽の先生だったのですが、和音の「シファ」は特別な音らしく、そこから名づけられたと聞いています。また、調べてみるとシーファはトルコ語で「癒やし」の意味でもあるそう。当院がオーナーさんとペットにとって居心地の良い場所であればうれしいです。院内設計で一番こだわったのは、受付のカウンター。高さを半分低くしてあるのですが、これはオーナーさんが座って書き物ができるようにという思いからです。例えばワンちゃんを連れて来院された場合、リードやかばんを手に持ち、立ったまま書きものをするのって不便だと思うんです。カウンターにはリードかけのフックもご用意しておりますし、この地域はご高齢のオーナーさんも多いので、これだけは絶対に取り入れたいと特注しました。
さかのぼったお話になりますが、先生はなぜ獣医師を志したのでしょうか?
きっかけは、高校3年生の夏に祖父母の飼っていたインコが他界し、祖父が悲しみに暮れているのを見て「何とか元気づけてあげたい」と思ったことです。10年以上飼っていたインコで、最期は止まり木からも落ちてしまうような状態でした。それだけ長い間かわいがり続けてきたため、祖父にとってはもう孫のような存在だったのだと思います。当時、私は航空宇宙の大学をめざしていたのですが、その夢が吹き飛んでしまうほど、身近で感じるペットロスは衝撃的でした。獣医学は動物を救うための医療ですが、私は動物を通して人に奉仕していきたいと思っています。そして、獣医師として「オーナーさんを笑顔にするために何をしなければならないのか」を第一に考えた獣医療を提供していきたいです。
地域の動物病院にはどのようなことが求められていると思いますか?
動物病院に求められるのは内科、外科にとどまらないオールマイティな診療です。また、大学生の頃から動物愛護のボランティアに関わってきたため、地域における動物病院の重要性を強く感じています。愛護団体と連携を取るには至っていませんが、万が一に備えてノラ猫の隔離部屋も設置。自分の経験が地域の皆さんの助けになるよう努めていきたいです。
飼い主の本音を引き出すことに全力投球
富士見市は生まれ育った土地だそうですね。
そうなんです。獣医師になってからずっと地元には住んでいなかったのですが、開業をするならこの土地でしようと決めていました。とはいえ、もともと開業に興味を持っていた訳ではなく、動物医療に携わっていられるなら勤務医でも良かったんです。ですが、先ほどもお話したように動物病院は地域貢献も大切な仕事。年月を重ねるごとに少しずつそういった気持ちが大きくなり、家族や友人のいるこの地域で力を尽くしたいと思うようになりました。
では、診療モットーは何でしょうか?
オーナーさんの満足を第一に考えることです。そのためには、時に動物の病気を治すことだけが最善ではないと考えています。例えば悪性のがん治療の場合、手術を行った後、オーナーさんが抗がん剤治療を望まないケースもあると思います。その場合、そのオーナーさんが何を望むのかさらに詳しくヒアリングし、別の方法をご提案するなど、ペットの病気と上手に向き合っていける方法を一緒に探していきたいと思っています。
飼い主の皆さんとはどのようなコミュニケーションを取っていますか?
できるだけ緊張をほぐして差し上げられるよう心がけています。リラックスしていたほうが本音を話しやすいと思いますし、何でも思っていることを口にできたほうが長く通っていきやすいですよね。病院という場所は誰だって少し緊張するもの。その壁を取り払うために、フランクな空気をつくるようにしています。つい冗談を言ってしまうのはもともとの性分もあるのですが、人の笑顔を見るのが好きなんです。
動物の飼い方指導をすることもあるのでしょうか?
オーナーさんから聞かれればお答えしますが、基本的にこちらからご家庭での飼い方について厳しく指導することはありません。例えば、動物が肥満だからといって、一概にダイエットすることが最善とはいえないと思うんです。人間もそうであるように、動物にも体質があります。太りやすかったり、病気にかかりやすかったり、それぞれ体質は違うのに治療だけ一律では動物もオーナーさんもストレスになってしまいます。また、おやつをあげることは動物との大切なコミュニケーションですから、「太っているからあげてはダメ」ではなく、あげるおやつを変えたり、量を減らしたりしながらコントロールすることをご提案しています。
動物病院の役割は幸せに生きるための手助け
診療面ではどのような面にこだわっていますか?
健康診断において超音波検査を行っています。人間の診察でも同じですが、触診するだけでは体の内部がどのような状態かはっきりしません。病気の早期発見・治療、オーナーさんが納得できる診療方針の選択のためにも、一回一回体の内部まで見落としがないよう心がけています。また、動物は自宅で足を引きずっていても、病院に来ると隠したり、平気なフリをすることがあります。そうしたワンちゃん、猫ちゃんの隠しごとを見抜き、適切な処置をすることも大切ですね。
検査にもお力を入れているということでしょうか?
特別に検査だけに力を入れているわけではありませんが、正しく健康状態を確認するためには検査をし、血液や内臓に関わる数値を確認することは重要です。その上で先人の知恵を借り、エビデンスなどと照らし合わせていけば、よりスムーズで的確な治療を行っていくことができるはずです。そのため、当院では最初の健診に踏み切りやすいよういろいろとご相談を受けつけておりますが、もちろんオーナーさんの意向が最優先ですから、まずは不安に思っていること、気になっていることなど何でもご相談いただきたいです。
読者へのメッセージをお願いします。
動物を飼う上で大切なのは、まず動物病院に足を運ぶことです。今は何も問題がなくても、いざというときのために「通いやすい」「信頼できる」と思える動物病院を見つけておいていただきたいと思います。当院はオーナーさんが「納得する診療」を第一に考えています。検査や治療を十分にそろえておくのは医療側の責任ですが、しっかり説明を聞いた上で、それを受けるか受けないかはオーナーさんの選択次第。医療を受ける動物の家族はオーナーさんであり、獣医師ではありません。どんな不安があり、何を疑問に思い、どうしたいのか。言いづらいこともあると思いますが、話したいことを話したいように伝えていただきたいです。オーナーさんと動物たちが幸せに生きるための小さな手助けができたらうれしいですね。