牛尾 俊之 院長の独自取材記事
国分寺ハートアニマルクリニック
(国分寺市/国分寺駅)
最終更新日: 2024/12/02
国分寺駅北口から徒歩12分、4台分の駐車場も備え、車でのアクセスも便利な「国分寺ハートアニマルクリニック」。犬と猫の循環器疾患に強みを持つ牛尾俊之院長が2022年に開業した動物病院だ。広々とした院内には犬待合室と猫待合室が設けられ、犬も猫もストレスなく過ごせるよう配慮。検査も治療もできるだけ飼い主のそばで受けられるようにと工夫を重ねる。予防医療にも力を入れているが、動物の心身に余計な負担をかけないよう、不必要と判断した医療は行わないという。季節ごとの飾りはもちろん、ペットフードやケアグッズのサンプルなどもしばしば入れ替わり、訪れるたびに発見がある同院。14歳の愛犬とともにインタビューに応じてくれた牛尾院長に、診療にかける思いなどを詳しく聞いた。(取材日2024年11月11日)
循環器から口腔内まで犬と猫の健康を幅広くサポート
獣医師をめざしたきっかけやご経歴を教えてください。
子どもの頃から兄姉ともども大の動物好きで、犬か猫と一緒に暮らすのが夢でした。でも、残念なことに実家はペット禁止のマンション。飼いたい気持ちが高じて動物図鑑を読み込むようになり、気づいたら獣医師をめざしていました。獣医学部に進んだ兄姉の後を追いかけるように麻布大学に進学し、在学中は第一外科研究室に所属し循環器を専攻。心臓カテーテル手術などの外科治療、慢性的な循環器疾患への内科治療について学びました。卒業後は一次診療から高度医療まで幅広く対応する動物病院に勤務。系列の高度医療を手がける動物病院では数多くの手術を経験しました。並行して麻布大学附属動物病院循環器科・呼吸器科に研修医として週に1度通いながらの勉強も継続し、十分な研鑽を積んだ後に2022年7月に開業しました。
こちらはどのような動物病院なのでしょうか。
当院は犬と猫の循環器疾患、腫瘍疾患、内分泌疾患、歯科疾患に至るまで幅広くサポートする、総合的な獣医療を特色とする動物病院です。動物も人間同様、口腔内に問題があると心臓病や腎臓病のリスクが高くなるといわれています。だからこそ、当院では2台のエックス線検査機器のうち1台は歯科専用のものを導入。精査の上、適切な歯科処置と予防的な治療につなげています。ご自宅で毎日のケアが正しくできるように指導もしていますが、それだけでは取りきれない汚れもあるので、当院のスタッフによる定期的なブラッシングを受けていただくことをお勧めしています。歯石がつきやすい子は、年に1回程度、麻酔下でのスケーリングも可能です。その他、健康診断などの予防医療にも力を入れています。
動物の負担に配慮した予防医療を実践しているそうですね。
例えば、当院ではワクチン接種だけではなく抗体価検査も積極的に行っています。抗体がしっかりと体内にあると確認できた子に対しては無理にワクチン接種はしません。アレルギー体質だったり高齢だったりするとワクチン接種後に問題を起こすリスクが高くなるので、希望しない飼い主さんもいらっしゃいますからね。また、健康診断に関しては年に2回受けることを推奨しています。当院の健康診断は従来どおりの画像検査や血液検査も行いますが、アレルギー検査などをプラスしているのは珍しいかもしれません。病気のリスクが高いと判明した子だけ、エコー検査やエックス線検査に進むように案内しているんです。どちらも院内で手軽にできるとはいえ、飼い主さんにもペットにも余計な負担はかけたくないですからね。
飼い主も動物もリラックスして過ごせるように工夫
強みとしている循環器診療についてお聞かせください。
最近は他の動物病院からの依頼を受けて循環器疾患を検査する機会もずいぶん増えました。呼吸が苦しそうだったり胸に水がたまったりしていて「薬を飲ませているのに治らない」とお悩みの飼い主さんがセカンドオピニオンを求めていらっしゃる例もありますね。エコーや心電図など循環器の検査機器は一通りそろっているので、まずは心臓の病気がないか調べ、検査結果をもとに適切な治療に進みます。咳が続く、呼吸回数が多い、お水を飲む量が増えたというような場合、もしかしたらそれは心臓病のサインかもしれません。高齢になるほど有病率も高くなるので、大型犬は5歳以降、小型犬も7歳以降は必ず健康診断を受けるようにしましょう。猫はスコティッシュフォールドやラグドールなど心筋症リスクが高い種類もあるので、年齢に関係なく注意してあげてください。
診療において大切にしていることは何ですか?
動物病院を訪れる時、犬も猫も飼い主さんもみんな緊張しています。まずは飼い主さんの不安を取り除くために、できるだけゆっくりとお話を聞くことを大切にしていますね。ペットたちが今までどのような病気・けがを経験してきたのか、アレルギーはあるのか、下痢をしやすい・吐きやすいなどはないかを詳しく伺った後に触診をして、必要があれば採血やエコー検査などに進みます。エックス線検査以外は、基本的に飼い主さんはずっとそばにいてもらうスタイルにすることにもこだわりました。やはり、飼い主さんになでてもらい声をかけてもらうことが、動物にとっては一番の安心材料になりますからね。
犬と猫、それぞれ気をつけていることは?
例えば、犬をリラックスさせるために、犬自身にはもちろん飼い主さんにもよく話しかけるようにしています。私と飼い主がよく喋っているのを見て安心する子も多いですからね。一方、猫はより繊細な動物なので、むやみに話しかけるのはタブー。コミュニケーションの距離は少しずつ詰め、大きな音を立てないようにスタッフにも気を使ってもらっています。猫の気持ちを落ち着けるため診察前にフェロモン剤をたくこともありますね。犬も猫も共通して大事にしているのは触診です。リンパ腺に炎症がないか全身をチェックし、目、耳、口も含め全身をくまなく触って精査できるのは動物ならでは。犬は膝の病気を持ちやすい子も多いので、特に膝の辺りは注意深く調べるようにしています。
ペットとの幸せな生活を一日でも長く見守りたい
今後の展望についてお聞かせください。
現在は水曜日が休診日なのですが、動物たちはいつ具合が悪くなるかわかりません。飼い主さんの安心のためにも、もう一人獣医師を増やして年中無休にできればと考えています。いつか同じ志を持つ獣医師と力を合わせ、心臓カテーテル手術や心臓外科の手術にも取り組みたいです。また、今も猫待合室を造るなどしていますが、猫にとってまだまだ十分な環境ではありません。たとえ犬の姿は見えなくても、併設のトリミングルームやペットホテルからワンという声が聞こえただけで嫌がる猫も多いですからね。将来的にはトリミングルームにもペットホテルにも犬がいない猫専用の診療時間もつくりたいと思っています。
お忙しい毎日ですが、リフレッシュ法などはありますか?
子どもの頃の夢をかなえ、犬2頭と猫2頭を飼っているのですが、この子たちと触れ合うのが何よりの気分転換になっています。このエリアには広い公園もたくさんあるので、お休みの日は犬たちとゆっくり散歩できるのが楽しみです。犬と猫はとても仲良しというわけではありませんが、適切な距離を置きながら悪くない関係を構築しているようです(笑)。猫の名前はキジトラがそら、ハチワレがうめ。どちらも当院でワンシーズンに1回程度実施している猫の譲渡会で迎えた子です。犬たちはシェットランド・シープドッグで、4歳のまつりは女の子、14歳のぽんちは男の子。ぽんちは大学病院時代、手術をした子なのですが、飼い主さんに事情があって引き取りました。高脂血症が出やすい品種なので食事にも気をつけています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
犬も猫も飼い主の心がけ次第で寿命はかなり変わります。適切な食事と運動をを心がけ、病気のサインを見逃さず早期受診・早期治療をめざしましょう。年齢を重ねると動物も寝ている時間が増えたり、日によって体調が変動したりします。わが家のぽんちも関節痛がつらそうなことも多いのですが、調子が良くて久しぶりに長く散歩に行けたときなどは本当にうれしいものです。年老いた犬と過ごす一日は、子犬時代とはまた違う愛おしさがあります。動物たちと飼い主さんの幸せな生活を一日でも長く見守ることが願いです。不要になったペットフードを犬や猫の保護活動をしている団体などに分配するペットフードバンクも常時行っていますし、飼い主さんだけでも参加できる相談会も随時開催中なので、「どんな雰囲気なのかな?」と気軽に立ち寄っていただければ幸いです。