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大畑浩樹 院長の独自取材記事

シンシア動物病院

(横浜市港南区/上大岡駅)

最終更新日: 2023/01/22

上大岡駅から徒歩10分。大型車が行き交う幹線道路沿いにシェルティの写真がかわいい「シンシア動物病院」の看板が見えてくる。取材に訪れた時、院長の大畑浩樹先生が飼い主に愛猫の検査結果を伝えているところだった。不安で一杯の飼い主を前に真摯に検査結果を伝える口調から、穏やかで優しい人柄がにじみ出ていた。院名の由来を尋ねると「シンシアという言葉には優しい、親切などの意味が含まれ、目標とする『動物にも人間にも優しく親身になって手助けをする動物病院』にぴったりのネーミングだと思いました。そして、昔好きだった女性歌手のニックネームがシンシアということも理由のひとつなんです。」と照れくさそうに笑う大畑先生。また、飼い主はもちろんスタッフからの信頼も厚く、一度退職したスタッフが自ら復職を願い出ることも珍しくないそうだ。そんな大畑先生に開院のいきさつや日々の診療について、また最近のペット事情やプライベートに至るまでたっぷりと語っていただいた。 (取材日2012年3月15日)

開院10年目。ニーズの高い皮膚病のスペシャリストをめざす

こちらに開院された経緯を教えてください。

「シンシア動物病院」は2002年8月に開院しました。今年で10年目になります。以前は、ここから約1キロメートル離れたところにあった横浜動物医療センターという大きな病院に勤めていました。経営者が代わり移転して規模を縮小することになり「それなら自分で開業しよう」と考えたのがきっかけです。愛着のあるこの地域で開業しようと物件を探していた時に、空き物件のまま放置されていた現在の場所が気に入り、テナント募集の告知が出てすぐに契約しました。その後、勤め先に退職の旨を伝えたのですが、すぐに辞めるわけにもいかず、テナントの契約をしてしばらくの間私は前の病院に残り、半年後に開業にこぎつけました。開業当初は前の病院で診ていた犬や猫の治療にあたることが多かったですが、今は昔からの患者さんのほか近所の方や、横浜そごうのペットショップや、上大岡駅のペットショップの指定医をしていることから西区や金沢区など広い範囲にお住まいの方が犬や猫を連れて来院されています。

先生はなぜ獣医師になったのですか?

僕の母が看護士だったので生活の中に医療が根付いていたからでしょうね。僕が小学生の時、母が保健の先生として僕の通っている小学校で働いていました。僕は保健室にある人体模型に興味があり、昼休みによく遊びに行っていました。生き物が好きでオタマジャクシをカエルに孵したり、アリを瓶の中で飼っているうちに、生き物に関わる仕事をしたいと思い始め医療の道をめざすようになりました。でも「意気込みばかりで成績が伴わない」といつも両親に言われていましたね(笑)。小学校6年生の時「成績が上がったら自転車を買ってやる」と言われたことがありました。両親はさぞがんばって勉強するだろうと思ったようですが、僕は自転車のカタログばかり見ていて勉強に身が入らず成績は急降下。結局、自分でお小遣いを貯めて買いました(笑)。そんな僕ですが、今は獣医師になって本当によかったと思っています。子どもの頃にしたかった仕事をしているのは幸せなことだと感じますね

皮膚科に力を入れているそうですね。

そうですね。100件の患者さんが当院に来るとすると、そのうちの3割が予防やお手入れ、残りの7割が病気の治療になります。そして治療で来る犬や猫の約半数が皮膚炎と外耳道炎なんです。それだけ身近でニーズが高い診療科目だということを身をもって感じたので、治療を進めながら勉強するようにしています。内科の病気や心臓疾患については時には、CTやMRIを使った検査が必要になる場合もあるので、症状に応じて二次診療の病院を紹介し、診断の結果を見ながら当院で管理をしていくようにしています。皮膚病に関しても難治性の皮膚病の場合は、調布市で皮膚科専門病院がありますからそこまで行ける患者さんにはそちらを紹介するようにしています。このように二次診療の病院と連携を取りながら一次診療の病院としての役目を果たすようにしています。

驚かさず安心させすぎず、飼い主の不安を解消するのが獣医師の役目

普段の診療で大切にしていることはなんですか?

飼い主さんの不安を解消することですね。飼い主さんが不安に思わない話し方や内容を選んでお伝えすることを心がけています。同じことを伝えるにしても、語句や話し方を間違えると飼い主さんを驚かせてしまうことになります。例えば、病状が芳しくない時に「あまり長く生きられません」「なぜ、ここまで放っておいたのですか」などという言い方をすると飼い主さんはショックで立ち直れなくなります。飼い主さんはペットが病気になると自分を責めてしまいがちですが、獣医師ではありませんから病気に気付けないのは仕方がありません。「それは気が付かなくても仕方がないですよ」と言ってあげることで、飼い主さんが救われることが大切だと思いますね。もちろん、事実は事実として誠実に伝え、脅かさず安心させすぎないようにバランスを考えて接しています。

飼い主さんのケアが重要な役目なのですね。

そうですね。動物をこわがらせないのはもちろんですが、それは看護士でもできることです。しかし、飼い主さんのケアは獣医師にしかできない仕事だと思っています。ほかの動物病院から移ってきた飼い主さんが「前の先生には怒られた」「説明をきちんとしてくれなかった」といった話を聞くことがあります。やはり患者さんは詳しくわかりやすい説明を求めていますから、時間がかかっても丁寧に説明するようにしています。僕は子どもの頃から初対面の相手にはシャイなんですが、慣れてくるとおしゃべりになるんです。患者さんともついつい世間話で盛り上がりすぎてスタッフに注意されます(笑)。それに昔からお年寄りに「安心できる」と言われ人気があるんですよ。何軒もある動物病院のなかから当院を選んで来てくださった患者さんの話を忙しいからと事務的にあしらうようなことはしたくないですからね。

最近のペット事情で気になることはありますか?

ドッグカフェなどほかの犬や飼い主さんとふれあう場所も増えてきているので、今まで以上にしつけが大切になってくると思いますね。公共の場で飼い主さんの言うことを聞かずに吠えている犬を見ると、なんとかならないかと思います。当院では、特にしつけ教室は開いていませんが、知り合いの訓練士に指導をお願いしています。基本的なことを教わるだけでも随分違ってきますから、飼い主さんも一緒にプロの訓練士に教えてもらうとよいと思いますね。訓練士から一度でも教わった経験のある飼い主さんは、自分のペットに対し厳しく命令をすることができますが、しつけを教わった経験のない飼い主さんは犬に弄ばれているように見えることがあります。ペットが大切にされるのはとてもよいことですが、ペットに飼われているような状況の方もいるので「あなたは私の下だよ」とペットに教えることが必要だと思いますね。

愛情をかけて世話をすればペットは必ず恩返しをしてくれる

お忙しいなか、休日はどのように過ごされますか?

診療中にはできない雑用を済ませています。銀行や役所へ行ったり書き残したカルテを仕上げたりしているうちに一日が終わってしまいます。子どもが夏休みなど長期休暇で時間のある時は、夜に家族揃ってカラオケに行くこともありますね。音楽が好きで、学生時代にバンドを組んでいたこともあります。最近は娘がピアノ教室に通いだしたのをきっかけに、子どものころから好きだったピアノを弾くようになりました。時々、マンションのファミリーコンサートに出演するなどして楽しんでいます。ピアノはいいですよ。弾けなかった曲が弾けるようになると達成感がありうれしくなりますね。

ペットの寿命が延び、終末医療が今後の課題なるかと思うのですが。

飼い主さんがどこまで治療を望むかにもよると思いますが、なかには老人ホームのようなホスピスにペットを入れる飼い主さんもいます。しかし、動物は飼い主さんと一緒にいるのが一番うれしいはずですから、自宅でできるケアを広げていきたいですね。病気によっては毎日、点滴や注射を打たなければならないこともありますが、さすがに毎日通院するのは難しいですよね。そういった場合に往診や、自宅で注射や点滴ができるように指導をするなど、無理のない治療生活を提案していきたいです。当院の患者さんに自宅治療によって寿命が一年も延びたペットがいます。実際に動物がうれしいと思うかはわかりませんが、機嫌よくごはんを食べて過ごしている姿を見れば、飼い主さんは癒され、ペットが亡くなった時も「これだけやったんだから」と穏やかな気持ちになると思いますし、そういったお手伝いも獣医師の仕事であると思います。

ペットを飼っている方におすすめしたいことやメッセージがあれば教えてください。

人間がお風呂に入って体や頭を洗ってスッキリするように、動物もこまめに洗ってやってください。トリミングや薬浴をすると表情までよくなります。皮膚病にかかっていなくても皮毛のケアは重要です。洗うことで予防にもつながりますから、人間がお肌のケアをするように動物の皮毛のケアを心がけてほしいですね。人間とペットを区別しなければいけない部分もたくさんありますが、同じ生き物ですから気持ちよく生活をさせてほしいと思います。また、動物が家にいるだけで家族の会話が弾み癒されて精神も安定します。実際に僕の家族もペットに助けられました。人間はペットの世話をしなければいけませんが、その恩返しとして、形にならないものをペットから与えられているはずです。そういう意味ではペットと人間の関係はフィフティフィフティなのかもしれませんね。

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