久保田 亮 院長の独自取材記事
みなみ動物病院
(横浜市港南区/港南中央駅)
最終更新日: 2023/01/22
ブルーライン「港南中央駅」と、京浜急行「上大岡駅」の中間に位置する「みなみ動物病院」。犬・猫・うさぎ・ハムスターの診療を行う同院は、皮膚病や眼科疾患、予防治療、外科手術など、幅広い地域患者のニーズに応える動物病院だ。また、運動療法や食事療法でのアドバイスも行い、近年増加している肥満の解消にも取り組む。久保田亮院長が大切にするのは、インフォームドコンセント。「患者さんに心から納得していただくために、時間の許す限りじっくりとお話しをお伺いしたい」と話す。その言葉通り、わかりやすい説明と時間をかけたコミュニケーションで、信頼関係を築いている。そんな久保田院長に、治療のことやモットー、患者への想いまでじっくり伺った。 (取材日2015年12月22日)
心から納得してもらえる治療をするために、とことん話すことを大切に
クリニックではどんな治療をされているのですか?
皮膚病や眼科疾患で来院される方が多いですね。皮膚病に関しては私が得意としている分野でもあります。一般的なアレルギーや外耳炎の治療、毛が抜けてしまっている場合などには、お薬を処方して治療をしています。皮膚に寄生虫がいないか、細胞感染がないかなど検査したり、細胞培養検査によってどんな抗生物質が効果的かを検査することで、最適なお薬を処方していきます。皮膚病は目に見えて飼い主さんが気付きやすい疾患。そのため、そこから他の病気が見つかることも多いのです。また、眼科疾患は早期治療が鍵となるものも多いので、片目だけ赤くなっている、目ヤニが出るなどの違和感を感じたら、すぐに受診いただきたいですね。当院では、予防にも力を入れています。ワクチンやノミ・フィラリア除去はもちろん、定期検診での早期発見も大切ですね。しっかり予防できれば防げる病気はたくさんありますから、それを飼い主さんに知っていただきたいと思っています。その一つに、歯科疾患があります。動物の場合、人間の歯科とは異なり、歯石除去をするだけでも全身麻酔をする必要があります。そのため、歯石にならないうちのデンタルケアをアドバイス。ご飯に混ぜるものや噛むおもちゃ、お口の中に入れるだけでケアできるものなど、その子その子の性格に合わせて最適なものをおすすめしています。
年々増えている病気はありますか?
肥満が原因で腰痛や関節炎になる子が多いですね。その場合は、運動療法や食事療法での減量をすすめています。飼い主さんとお話をしている中で、普段の散歩時間や食事量などを詳しく伺います。食事量は、案外目分量で与えてしまっている飼い主さんもたくさんいて、指定量よりも圧倒的に多くなっている場合もあるのです。そんな原因を探るためにも、飼い主さんとお話することは非常に大切です。私が一方的にお話しするのではなく、会話をすることで、飼い主さんとの関係性も築いていきたいと考えています。
患者さんとのお話しを大切にしているのですね。
飼い主さんととことん話し合い、治療方針を決めていきたいと思っています。飼い主さんと動物たちにとって後悔のない、心から納得できる治療を行っていくために、治療法は必ず複数ご提案するようにしています。治療や病気の説明はわかりやすく端的に話すことを心掛け、手書きの資料や冊子などをお渡しし、ご自宅でじっくりお考えいただくことも大切だと考えています。例えば腫瘍があれば、「経過を見ながらこのぐらいの大きさになれば手術をしましょう」ですとか、お薬を処方する際にも、「飲み終わった後にも症状が消えなければ次はこんな治療を進めましょう」ですとか。そうして先々までお話ししていくことで、飼い主さんの不安を取り除いていくことも忘れません。
常に100%の治療法を探し続ける姿勢を大事にしたい
先生が獣医師をめざされたきっかけは?
私は10歳まで兵庫県の田舎町で育ちました。そこでは、犬や猫、うさぎ、ハムスターなど、たくさんの動物を飼っていて、動物が大好きな子どもだったのです。高校生になる頃には、動物園の獣医師になりたいと考えるようになりました。そうして大学に入学し、細かいところまで治療ができたり、手術で高い効果を得られる小動物の獣医療に興味を持ったのです。獣医師としての大きなやりがいを感じ、小動物の開業医を志すようになりました。卒業後は横浜市の動物病院で勤務医を経験。そこでは、自分がこれだと思った治療があっても、さらに100%に近付ける治療はないかと突き詰める姿勢を持つことが大切なのだと学びました。安心・安全の治療をご提供するために、さまざまな角度からより良い治療法を探し続けることを心掛けています。
開業の経緯をお聞かせください。
私は10歳からこの地域に住んでいますから、馴染みのある場所です。開業するならば、この地域にしようとずっと決めていました。開業当初は、すぐ近くの別の場所で開業していたのですが、手狭になり2012年に現在の場所に移転。風通しがよく、動物病院独特の匂いが気にならないように工夫しました。この「みなみ動物病院」が開業して8年。私は、患者さんみなさんと深く関わっていける開業医という仕事が大好きです。苦しそうだった動物が元気になる姿や、飼い主さんに笑顔で感謝していただけること、開業医という責任を持って向き合える立場だからこそ、その喜びはひとしおですね。大変なことも多いですが、だからこそ大きな喜びを得ることもできるのだと考えています。
獣医師をしていてやりがいに感じることは?
子宮蓄膿症で来院した時はフラフラで自力では動けなかった子が、手術によってみるみるうちに回復するということがあります。そんな姿を見ることは、やはり何よりのやりがいを感じる瞬間ですね。病気を治して喜んでいただくことが獣医師の役目であり醍醐味でありますが、力及ばずに治すことができなかった子との思い出も、大きな糧になっています。以前、寝たきりで発作を繰り返してしまう子がいました。一年以上その状態が続き、選択肢としては安楽死もありました。しかし、飼い主さんが頑張りたいと言ってくださって。ならば、私もとことん一緒に頑張ろうと決意し、力の限りを尽くしたのです。しかし、結果的にその子は亡くなってしまいました。それでも、「あれだけ力を尽くしたのだから、後悔はありません」という、飼い主さんのお言葉をいただきました。飼い主さんが納得して治療を受けていただくことの大切さを学びましたね。
動物・飼い主・獣医師。みんなが安心できる医療を提供したい
診療の際に気を付けていることは何ですか?
ペットロスをはじめ、動物のことでお悩みの飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。そんな飼い主さんに寄り添い、心のケアをしていくことも獣医師の役目だと考えています。そのため、時間が許す限り飼い主さんのお話しをお聞きしていますよ。心に溜めていることを全て吐き出していただき、気持ちを軽くしてお帰りいただければ嬉しいですね。また、動物に恐怖心を与えないことも大切です。動物たちは、病院という場所に来るだけで恐怖心を抱いているもの。そのため、触り方一つでも優しくゆっくりと。注射もなるべく細い針を使用することで極力痛みを抑えています。無理やり押さえつけた診療をしてしまえば、次の診療ではさらに嫌がってしまします。獣医師の自己満足にならないような、その子その子のペースに合わせた治療を進めていきます。
お忙しい中で、どのようにリフレッシュされているのですか?
開業してからはなかなか長期的なお休みを取ることができないため、少し空いた時間で楽しめる趣味をはじめました。まずは、ジムで身体を動かすこと。診療後は入院している子たちを診ることが多いため、昼の休診時間にジムに行き、走ったりサウナに入ったりしています。私は昔から身体を動かすことが好きで、学生時代はよくスノーボードにも出かけていました。また、アコースティックギターもはじめました。少し時間があるときなんかにギターを弾いたりしています。楽しみながら気分もリフレッシュすることができますよ。
読者へメッセージをお願いします。
当院の患者さんは、散歩の途中で立ち寄ってくれる方も多いです。「最近、食欲がなくて」、「手術後の抜糸まで時間があるけど、問題がないか心配」など、些細な疑問や少しの不安を気軽にご相談いただけるような存在でありたいと思っています。動物は人間と違い病気の進行が早く、あともう少し早く来ていれば助けられたという悲しいことがないように、異常を感じたら早めの受診をおすすめいたします。些細なことでも構いません。それが病気ではなくても、そこからスタートできることがたくさんあるのです。来院する時間がない場合には、お電話でご相談いただければ、来院が必要なのかのアドバイスもさせていただきます。動物たちに健康に過ごしてもらうため、そして、飼い主さんや私たちスタッフ全員が安心して動物を見守っていくためにも、より良い関係性を築いていければ嬉しいですね。