遠藤 剛 院長の独自取材記事
えんどう動物病院
(横浜市港南区/上大岡駅)
最終更新日: 2023/01/22
上大岡駅から歩いて5分のところにある、「えんどう動物病院」を訪れた。川沿いにある一軒家は落ち着いた雰囲気で駐車場も完備されている。「当院は川沿いの散歩コースにあるので、ペットが散歩がてら顔を出してくれるんですよ」と語るのは、遠藤剛(えんどうつよし)院長。来院するペットとその飼い主には、日ごろから散歩のついでに医院に遊びに来るように言っているという。何気ない言葉の端々に動物に対する愛情が伺えるドクターだ。「ペットは自分で苦痛を話すことができません。だからこそ、麻酔や薬剤を適切に用いて痛みを最小限にする治療を行いたい」と話す遠藤院長に医院のことや治療方針についてなどたっぷりと話を伺った。 (取材日2014年8月29日)
思わずペットが足を向けたくなるような医院づくりを
医院の目の前には川があって、落ち着けるロケーションですね。
2005年4月にこの場所より400mほど坂を登った所にあるテナントで開業したのですが、2013年12月に住居併設の病院としてこちらの川沿いの場所へ移りました。川沿いはワンちゃんたちの散歩コースとなっているので、診療中もワンちゃんと飼い主さんがよく通りかかります。当院では、とくに子犬のころは「用事はなくてもなるべく医院によってください」とお願いしてるんです。小さいころから通うことで、医院に対して嫌なイメージを持たなくすることが目的です。もちろん私を含めたスタッフたちも動物が大好きなので、立ち寄ってくれた子にはおやつを持ってきてもらって、あげるなどして可愛がっています。動物病院なので、ペットにとって嫌なことをしなくてはいけないときもあります。ですが、日ごろから可愛がっていれば、どんなときでも比較的受け入れてくれるようになるんですよね。
治療だけでなく、日ごろからのかかわりが大切ということですか。
私の診療ポリシーの1つに、「ペットに好かれる」というのがあります。人間だって、嫌いな人に治療されたくないでしょう?それと同じことです。そのためには、日ごろから触ったりしてコミュニケーションを取ることが大切です。もちろん、それぞれの個性がありますから、「この子は男性より女性のほうが好き」とか、「ドクターにはなつかないけど、スタッフにはなつく」といった好みもあります。それと、「この場所を触られるのはいやがる」「こういうふうになでると落ち着く」といったその子自身の特性もありますね。そういった個別の情報をたくさん集めることで、その子にとってよりストレスのない診療と治療を提供できると考えています。
手術室にガラス窓がありますね。
ええ、当院はオペ室に、飼い主さんが中をのぞけるようなガラス窓を設置しています。積極的に手術を見たいという飼い主さんは多くありませんが、それでも完全にシャットダウンされてしまうとさびしかったり不安になってしまったりすることがあるんですね。そういった場合にはいつでも手術中の様子をのぞいていただくことができます。
痛みは積極的にとる。ペットに「気付かれない」くらいの治療が理想
ペインコントロールに力を入れているそうですが。
はい。痛みのコントロールは大切にしています。痛み止めを含む薬剤を投与することを好ましく思わない飼い主さんもいますが、私自身は限られた期間、適切な薬剤を適切に処方し、すみやかに痛みをとってあげることで、ペットのストレスが軽減され、また回復も早くなるという考えです。漫然と使い続けるのはよくありませんが、痛みや苦痛は積極的にとってやるべきではないでしょうか。理想は、ペットに気づかれない痛みや苦痛のない手術。「ちょっと眠くなって気付いたら終わっていた」というのが人間でもペットでも理想の手術ではないでしょうか。
飼い主も、「ペットを苦しませたくない」と思っていますよね。
そうです。ただし、ペットは人と違って自分で苦痛を話すことができませんから、こちらがそれを的確に評価する必要があります。例えば手術中では、高度な生体モニターを含む各種の医療機器で換気量の測定やペットの呼気中に含まれる二酸化炭素の測定、麻酔濃度を測り、痛みがある時は単純に吸入麻酔を深くするのではなく、痛み止めだけを調節するためにシリンジポンプを使います。他にもコンピュータ化したレントゲン装置やバイポーラ、連続波ドプラーを計測できるエコーや自律神経検査のできる心電図など機材の充実にも力を入れています。
ペット・飼い主・獣医。3者それぞれが同じ方向を見据えた治療を
診療の際に心がけていることは何ですか。
飼い主さんとしっかりとお話をするということですね。世間話を含めさまざまなお話をすることで飼い主さんの人となりや考え方を知ることができます。治療を成功させるためには、ペットと飼い主と獣医、その3者が同じ方向を見ていないといけないんです。少なくとも痛みや苦痛は最小限にして、なるべく嫌がられない治療をしてあげたいのです。もちろん、飼い主さんの意向も重要です。「そこまで治療をさせたくない」という方もいれば、「できる限り最善を尽くしてほしい」という方もいます。いざというときにどこにゴールを設けるかという話をするためには、普段の会話を通して信頼関係を築いておくことが大切なのだと思っています。
会話を大切にしているのですね。
はい、説明をすることは大事だと考えています。長いときには1時間半話していたこともあります。そのときは気付かなかったんですが、後でスタッフに「先生、1時間半も話していましたよ」ということも (笑)。ただ最近は、外来が混むようになってきたのでほかの方を待たせないためにも、忙しいときはそこまで話し込まないようにはしています。当院は予約制も一部導入しておりますので、忙しい方の場合は予約していただくことをお勧めしています。忙しい日などは、飼い主さんの方から「先生、ほかの方も待っているからもうこの辺でいいわ」と話を打ち切られることもあります。
今後どのような医院にしていきたいですか。
地域のかかりつけ医でありたいですね。ちょっとした相談から、オペ等を要する治療まで幅広く対応していきたいと考えています。医療は日進月歩であり、治療によっては高度な専門性が必要になることもあります。幸い私には、それぞれの専門分野で先陣を切って研究や治療を行っているドクターが友人に多くおりますので、必要があれば彼らに相談したり、紹介状を書いたりすることもできます。どんなことでも気軽に相談できる街の獣医でありたいと思っています。