遠藤 綾 院長の独自取材記事
稲毛東ペットクリニック
(千葉市稲毛区/稲毛駅)
最終更新日: 2023/12/06
稲毛東の住宅街の中にあるのが「稲毛東ペットクリニック」だ。エントランス前には広い駐車場があり、白い壁面のおしゃれな外観も印象的だ。自然光が降り注ぐガラス張りの待合室は犬用と猫・うさぎ用に分かれていて、中庭も設置されている。遠藤綾院長は「猫は他の動物がいると緊張して体が固まって診察できなくなってしまう子もいます。そのため、当院では待合室から診療室、入院室はすべて動物ごとに分けて設置しています」と話す。遠藤院長は、循環器疾患や画像診断などを得意とし、適切な診断に基づいた治療、手術などによって動物を最期まで見守っていくことを信条としている。そんな遠藤院長に同院の特徴や獣医療への思いなどについて聞いた。(取材日2023年11月1日)
高い技術と充実の設備で、飼い主の不安に速やかに対応
こちらの動物病院は内装も素敵ですね。
動物も飼い主さんも安心して入りやすいようにとの思いを込めて内装など工夫しています。一つに待合室は、入って右側を犬専用、左側を猫・うさぎ専用に分けています。診療室や入院室もそれぞれ分けています。猫は神経質で、動物病院に来るだけで体調が悪くなる子もいますし、犬など他の動物がいると緊張して体が固まって診察できなくなってしまう子もいるほどです。各待合室の奥には中庭もありますので、大型犬などはそこで待つこともできます。当院は全体的にちょっとおしゃれな空間をめざしており、開業当初は、カフェができたのかしら、などと思った方もおられました。どなたでも温かい気持ちになっていただける、気軽に相談できる動物病院になれればと思います。
開業までのご経歴をお聞かせください。
もともと千葉市若葉区の出身なのですが、稲毛界隈の落ち着いた雰囲気が気に入ってここに開業しました。大学は北海道の酪農学園大学獣医学部に進み、卒業後は東京大学付属の動物医療センター外科系で研修を受け、都内の動物病院に勤務しました。その後、夫の転勤に伴って北海道に移り、母校の動物医療センターや札幌の動物病院で臨床経験を重ねてきました。特に札幌の動物病院ではCTを導入していましたので、その画像診断について研鑽を積みました。併せて循環器疾患や呼吸器疾患、各腫瘍などの診断、治療にも積極的に取り組んできました。
そのようなご経験を生かした診療を行っているのですね。
画像診断は、超音波検査とエックス線検査を行っています。中でも心臓や腹部などの状態を確認するため超音波検査を活用しています。嘔吐や下痢など一般的な症状も超音波検査を使い、より精密な診断につなげます。近い将来、CTの導入を検討しています。CTは他の検査では観察が難しい微細な病変も見れますので、腫瘍の発生位置や骨に転移した腫瘍なども詳細に確認できます。これまで腫瘍などの手術は、別所でCT撮影していただき、その結果をもとに当院で手術していましたが、そうすると全身麻酔が2度必要になります。動物にも負担がかかり、飼い主さんも二度手間になります。そのようなご不便のないよう、当院で治療・手術を完結できるようにしたいと考えています。しかし、当院で処置が難しいと判断した場合は速やかに信頼する動物病院へ紹介します。当院で抱え込まず、適切な診断と迅速な判断を徹底し、動物たちの命を守ることを優先していく方針です。
動物たちを一生にわたって診ていくことが信条
診療方針について教えてください。
「ゆりかごから虹の橋を渡るまで」とホームページに記載しているように、小さい頃から青年期、老年期を経て最期を迎える時までずっと診ていきたいと思っています。しつけ方、飼い方の相談から、ワクチン接種、健康診断などの日常的な健康管理、さらに病気になった時の治療、 手術などを通して大切なペットの一生を飼い主さんとともに見守っていきたいと思っています。そのため循環器科や腫瘍科、整形外科を専門とする獣医師による診療も行うなど診療体制も充実させています。そして飼い主さんがその子を看取った後でも、もう一度飼いたいと思っていただけることを願っています。以前勤務していた北海道の動物病院では、看取りの相談なども含めて最期まで飼い主さんに寄り添っていて、その後、多くの飼い主さんが「また飼うことにしました」と来られていました。そんな光景を見てきていますので、当院も看取り方も含めて寄り添える動物病院を理想としています。
診療の時にはどのようなことを心がけていますか。
初めて来られた時は、まずその子の性格を把握するように努めています。診察台でいきなり触ることはせず、一通り、その子の性格や家での過ごし方などをよく聞いてから診察しています。また、飼い主さんとの関係性についてもよくお聞きしています。例えば犬の食事指導をする場合、犬が飼い主さんのことをどう見ているかによってその方法は異なってきます。また逆に飼い主さんが犬をどのように捉えているか。例えば、自分の子どものように溺愛されているのか、ペットとして接しているのか、番犬として見ているのか、その捉え方によって大きな違いがあります。また、診断には画像検査も重要ですが、それらに至る前段階として飼い主さんとのコミュニケーションも重視しています。そのため、症状の発症時期や体調の変化などについて伺うときも、飼い主さんが話しやすい雰囲気をつくれるよう心がけています。
実際に受診に来るのは犬と猫、どちらが多いのでしょうか。
受診はほぼ同じくらいですが、全体的に猫の来院数が増えていると思います。以前は猫を動物病院に連れてくることは多くはありませんでした。犬はこれまで受診数も多く症例も集まりやすかったため、病気の研究が進み診療ガイドラインなどもできています。ですが、猫の場合、来院数が少なかったため研究もあまり十分になされてこなかったのでしょう、現場では教科書に載っていないような症状も多く、診断がとても難しいケースもあります。中には原因不明の症状もありますが、その場合は決して中途半端な診断はせず、正直に原因が特定できない理由と、可能性として考えられることを詳しくお話しするようにしています。まさにインフォームドコンセントをしっかり行うことがとても重要だと考えています。
病気の早期発見のために定期検診を
最近気になる病気や、飼い主さんが気をつけるべきことはありますか。
循環器疾患が多く、特に猫は年齢に関係なく、急に体調が悪くなったり、いきなり倒れたりと急性の症状が起きることがありますので注意してください。犬は、何らかの心臓の不具合が起きていて、高齢化とともに症状が現れるケースが多いです。ただ、何かの症状が出た場合はすでにかなり進行していることが考えられます。ですので、日頃から健康診断を受けていただきたいです。高齢化に伴って腫瘍も増えていますが、腫瘍は発見が難しいケースもありますので、早期の発見と的確な診断につなげるためにも、定期的に画像検査などを受けていただければと思っています。
先生はなぜ獣医師をめざされたのでしょうか。
父が大学病院の医師をしていまして、時々、病院などに連れていってもらったこともあり、医療の世界を身近に感じていたと思います。中でも子どもの頃にはやった、獣医師が主人公の漫画の影響が一番大きかったのでしょう。子ども心に将来は獣医師になると決めていました。小学校の卒業文集にもそのように書いていました。実際に獣医師になってみますと、日々、いろいろな触れ合いがありとても楽しいです。これまで大切に飼っていたペットを看取った後、しばらくしてから、また新しい子を連れて来てくださった時は、とてもうれしくやりがいを感じます。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
この周辺の地域だけでなく、遠方からでもお気軽にお越しいただきたいと思います。動物病院は病気になった時にしか行ってはいけないという場所ではありません。日頃のケアや何か相談事がある時など、遠慮せずにお立ち寄りください。当院ではペットホテルやトリミングサロンも備えていますので、どんな感じかなと、様子を見に来てくださっても大丈夫です。ペットたちにこの場所に慣れてもらえれば、いざ病気になった時もスムーズに診察を受けられると思います。今後はCTの導入も検討しているので、当院で最後まで責任を持って診られる体制を拡充していきます。何か心配なことがあればぜひ相談に来てください。