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脱水や食欲不振の原因にも 猫の慢性歯肉口内炎の治療を諦めない

ブルーム動物病院
(横浜市鶴見区/鶴見駅)
最終更新日: 2025/03/14


人間にとってごく身近なものである口内炎だが、猫の口にも発生することをご存じだろうか。人間と違い、日常的なオーラルケアの実践が難しい猫では、一度口内炎になると治療しない限り自然に治ることはまれであるという。「猫慢性歯肉口内炎を治療せず放置してしまうと、全身の健康に影響を及ぼすことも。軽視せず、早めにご相談いただきたいですね」と話すのは、横浜市鶴見区「ブルーム動物病院」の片山政都院長。先進の知見に基づく動物医療を実践し、犬猫と飼い主に笑顔の花を咲かせ続ける頼れる獣医師だ。そんな片山院長に、猫慢性歯肉口内炎について詳しく聞いた。(取材日2025年2月5日)
目次
幅広い年齢で起こる猫慢性歯肉口内炎は、早期からの治療で完治をめざそう
Q.猫慢性歯肉口内炎とはどんな病気ですか?
A.猫慢性歯肉口内炎(FCGS)は、何らかの原因で猫の歯茎に炎症が生じる病気です。原因としては細菌、ウイルス、免疫、口腔内疾患などが考えられており、腎臓の病気から二次的に生じるものもあります。高齢の猫では歯周病から口内炎に移行するケースが一定数あり、若年の猫ではウイルス性の口内炎でAIDSや白血病のウイルスとの関わりが疑われるものも見られます。多くの猫が生涯で遭遇する病気の一つですが、治療には悩まされることも。痛みや腫れで水を飲んだり、食べ物を食べたりすることが難しくなり、脱水や栄養低下に陥ることもあります。口内炎に起因する脱水状態が続き、結果として腎臓が悪くなってしまうケースも少なくありません。▲明るく広々とした待合スペース
Q.どのような症状があった際に疑うべきでしょうか。
A.できれば猫の歯をブラッシングしながら口の中を毎日観察し、赤みや腫れに気づいたら受診するのが良いでしょう。しかし、多くの猫は口の中を簡単に見せてはくれません。そうした際には、口を痛がる仕草やよだれ、口臭といった症状が受診の目安となります。食事や飲水の状態も一つの目安となる場合がありますが、消化器に問題があるわけではないので基本的には食欲があり、重度にならない限りは通常どおりの食生活を送れる子も少なくありません。猫の口内炎は一度発生すると自然治癒することはまれで、治療しないと多くの例が慢性化し、生涯症状に悩まされることになってしまうことも。早めに適切な診断と治療を受け、完治をめざすことが大切です。▲丁寧に検査を行い、怖がらないように配慮
Q.どのように治療を行いますか?
A.内科的治療と外科的治療があります。内科的治療ではステロイドや抗生剤、鎮痛剤、インターフェロンなどを投与するのが一般的ですが、これらは対症療法に過ぎず、期待できるメリットとしては一時的なものに限定されます。完治をめざす外科的治療としては抜歯が一般的で、すべての歯を抜く全顎抜歯と臼歯をすべて抜く全臼歯抜歯のいずれかが選択されます。しかし、抜歯をしても治癒につながらないケースも考えられますし、麻酔のリスクや健康な歯を抜くことへの抵抗感なども考慮すると強く勧められるものではありません。近年では研究が進み、抗ウイルス薬を長期投与する治療も出てきています。▲検査機器も充実している
Q.口内炎が腫瘍と関係しているケースもあるそうですね。
A.治療をしてもなかなか完治しない口内炎が、実は腫瘍だったというケースはよくあります。猫の口腔内腫瘍は扁平上皮がんが多く、浸潤しやすく、抗がん剤で対処しづらいのが特徴です。手術は早期でないと適応とならず、進行している場合は特に、手術に時間がかかることから麻酔のリスクも高くなってしまいます。しかし、打つ手がまったくないわけではなく、近年では腫瘍細胞を壊し、抗がん剤をターゲットにピンポイントで作用させるための方法などもヨーロッパを中心に研究されています。猫の口腔内腫瘍は、とにかく早めに見つけて治療することが大切です。初期治療で改善が見られない口内炎があれば、一度しっかりと調べてみることをお勧めします。▲気になることがあれば、すぐに相談してほしいと語る片山院長
動物病院からのメッセージ
片山政都院長
体自体は健康で食欲もあるのに、口内炎による口の痛みで思うように食べられない状態は、猫にとってたいへんつらいもの。また、猫慢性歯肉口内炎を放置してしまうと、腎臓疾患や体力低下にもつながり、全身の健康にも大きな影響を及ぼしてしまいます。口内炎だと思っていたものが実は腫瘍で、放置されていたため残念ながら進行してしまっているケースもよく目にします。以前は完治をめざすことが難しかった猫慢性歯肉口内炎の治療も、近年では研究が進んできています。根本治療をめざせる場合もありますので、抜歯による負担や薬の長期服用が心配な方もご相談ください。口内炎があれば早めに受診し、お口から猫ちゃんの健康長寿をめざしましょう。
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