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若い猫の体調不良は要注意 FIP(猫伝染性腹膜炎)は早期発見を

ひなた動物病院

(横浜市青葉区/たまプラーザ駅)

最終更新日: 2024/04/15

若い猫に特有の病気、FIP(猫伝染性腹膜炎)は、致死率の高い、助からない病気とされている。最近は、診療に取り組む動物病院も増えてきたが、まだ情報が少ない分野であり、症状が多岐にわたるため診断も難しいとされている。あざみ野エリアにある「ひなた動物病院」の日向健介院長は、独学でFIPについて学び、2020年の開業以来、積極的に診療に取り組んできた獣医師。今では、近隣だけでなく、遠方からもFIPの診療やセカンドオピニオンを求める飼い主が訪れるようになったという。同院は猫が多く来院する動物病院として、猫のフィラリア予防の浸透にも努め、犬に比べて受診機会の少ない猫の予防的医療や健康管理にも注力している。猫の診療に熱心に取り組む日向院長に、FIPについて取材した。(取材日2024年4月3日)

食欲が落ちる、元気がない、やせる、腹水や胸水がたまる。若い猫の体調不良は、FIPを疑い早期対応を

  • Q. FIP(猫伝染性腹膜炎)について教えてください。

    A.

    ▲開業以来、FIPの診療について研鑽を積む院長

    多くの猫が体内に持っている「猫腸コロナウイルス」が突然変異を起こして、発症するのがFIP(猫伝染性腹膜炎)です。コロナといっても人間が感染するコロナウイルスとは異なるもので、猫から猫へと伝染するものでもありません。2歳ぐらいまでの若い猫に発症するのが特徴で、純血種や雑種などに関係なく、どの子にも発症する可能性があります。多頭飼育環境などストレスがかかると発症しやすいといわれていますが、何がきっかけになるのかは特定できていませんし、将来発症するかどうかがわかる検査もありません。致死率が高く、助からない病気というのが共通認識ですが、最近は、診療に取り組む獣医師も増えてきています。
  • Q.どのような検査から診断するのでしょうか。

    A.

    ▲丁寧に検査を行い、怖がらないように配慮する

    FIPは、研究がまだ進んでいない分野であるため、確定診断するための検査などはなく、診療経験が豊富でないと診断が難しいとされています。症状が多様であることも診断を難しくしています。よくある症状として、胸水や腹水がたまる、体温が上がる、食欲が落ちる、元気がなくなる、体重が減る、リンパ節が腫れるなどが挙げられ、こうした特徴的な所見から診断します。胸水や腹水がたまっている場合に、ウイルス検査を行うと確定診断できますが、胸水や腹水がたまらない場合もあるのです。またリンパ節の腫れはリンパ腫のこともありますが若い猫での発症は少なく、生検は猫の負担も大きいので、腫れがある場合FIPを疑うのがよいと思います。
  • Q. 先生がFIPに注目されたきっかけはありますか。

    A.

    ▲気になることがあれば、すぐに相談してほしいと語る日向院長

    勤務医時代、FIPを発症した猫の診療に加わったのがきっかけです。飼い主さんがご自分でもいろいろ疾患について調べるなど熱心な方で、一緒に診療に取り組む中で、その症状の経過に興味を持ちました。そこから、私もFIPについて海外の情報を収集するなどして、独学で勉強を始めました。そして、開業後、本格的にFIPの診療に取り組み始めたところ、近隣だけでなく、遠方からも「診療を受けたい」「FIPかもしれないと診断されたがセカンドオピニオンを受けたい」というような飼い主さんが来られるようになりました。
  • Q.FIPの診療において大切にしていることを教えてください。

    A.

    ▲早い時期の診断が重要

    FIPは、発症からかなり早い経過で病状が進行していくので、できるだけ早い時期に診断することが大切です。ですから、若い猫で体調が悪いという場合には、FIPの可能性を考える視点を持って診ることが重要だと考えています。一般的には胸水や腹水の検査を外部委託することが多いのですが、その検査結果を待っていては病気が進行してしまうこともあります。FIPが疑われた段階で、FIPに詳しい動物病院を受診していただきたいのです。また猫に薬を飲ませるのは難しいという飼い主さんも多いので、当院では、私が薬を飲ませる際の手順やコツを動画に撮ってもらい、家で飲ませる時の参考にしてもらっています。
  • Q. FIPと診断を受けた際にはどうしたらいいでしょうか。

    A.

    ▲不安があれば、FIPの診療経験の豊富な動物病院へ相談しよう

    2歳以下の若い猫で、かかりつけの動物病院などで「FIPかもしれない」と言われたら、できるだけ早くFIPの診療経験の豊富な動物病院を受診して、セカンドオピニオンを受けてください。大学病院など二次医療施設でもあまりFIPの診療を行っていないことがあるので、注意が必要です。FIPを根本的に治療するための医薬品で、日本で承認されたものはまだありませんが、発熱といったつらい症状を抑えるための対症療法は行うことができますし、新しい治療薬を開発するための研究も進み、診療に取り組む動物病院も増えています。私もブログなどを通じてFIPについて情報発信を行っていますので、ぜひ参考にしてください。

動物病院からのメッセージ

日向健介院長

2歳以下の若い猫で、食欲が落ちてきた、元気がない、やせてきたという場合、あるいは、かかりつけの動物病院などで「FIPかもしれない」と言われた場合は、できるだけ早く、FIPの診療経験の豊富な動物病院を受診することをお勧めします。根拠不明のインターネット情報に振り回されたり、コストの面を重視して安易に対応方法を選択したりせずに、まずは、FIPに詳しい獣医師に相談してください。また、犬と比べて、猫は動物病院を受診する機会が少ないことが多いようです。当院では、猫の予防的医療や健康診断にも力を入れています。何か違和感がある、なんとなく気になる、いつもと違うということがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。

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