今井 理衣 院長の独自取材記事
アーツ人形町動物病院
(中央区/人形町駅)
最終更新日: 2024/01/09
繊維関係のビルが立ち並び、最近ではマンションも増えている中央区日本橋富沢町。その一角にあるのが「アーツ人形町動物病院」だ。中央区で育ったという今井理衣院長が、大好きなエリアに暮らす動物たちを見守っていきたいと2021年に開業した。今井院長は、地域のかかりつけ獣医師として日々の健康管理を行うとともに、専門である腫瘍の治療にも力を入れる。日本獣医がん学会の獣医腫瘍科認定医I種の資格を取得し、専門性の高い診療を実践している。「動物をここに連れてくるだけでも大変なこと。連れてきてくれてありがとうという気持ちで、動物とそのご家族が心穏やかに暮らせるよう丁寧に診察しています」と優しい笑顔で話す今井院長。動物たちへの思いや同院の特徴について聞いた。(取材日2023年9月27日)
大好きな中央区の街で地域の動物医療に貢献
この場所に開業した理由をお聞かせください。
中央区の街が大好きで、このエリアはずっと憧れていたんです。子どもの頃から中央区に住んでいたのですが、人形町は昔ながらの商店街があったり緑豊かな公園があったりと、とてもすてきな街です。結婚後、子どもが産まれたことをきっかけにまた中央区に戻ってきました。お祭りやおみこしも好きで、そんな伝統が息づいているところも気に入っています。それで、開業するなら自分の大好きな街で、と思ったのです。皆さん人情味にあふれていて町内会のつながりもとても深いですね。
なぜ開業しようと思われたのでしょうか。経緯を教えてください。
大学卒業後、初めに診療を行う一次診療施設に勤めることになった際に、腫瘍で苦しむ動物が増えていることを痛感しました。そんな動物や悪性腫瘍で家族を失う方を減らしたいと思い、二次診療施設の腫瘍科で研修を受けるように。そしてそこで得た知識・技術を、小さい頃から診てきた子たちに、大規模施設に行く手間なく受けていただきたいと思ったのです。自宅から近く、些細なことでも気軽に相談できる場所で腫瘍の診療が受けられれば、ご家族も安心できるでしょう。また、腫瘍は高齢になると起こりやすいので、重度問わず他の疾患も抱えているケースが多いです。そこで動物とご家族の負担軽減のために、一度の診療で腫瘍と他の疾患を診られるようにしたいとも考え、開業を決意したのです。放射線治療など一部の治療は専門施設への紹介が必要ですが、当院では動物たちが生涯ずっと気分良く過ごせるように、かかりつけ獣医師として総合的に診させていただきます。
動物たちはどのような症状で来院しているのですか。
ワクチン接種などの日常的な予防や避妊・去勢手術をはじめ、耳や目、皮膚のトラブルなどさまざまな症状で来られます。腫瘍を専門的に診ていることもあって、インターネットで調べて腫瘍について相談に来られるご家族の方も多いです。他院から腫瘍の疑いがあるから専門的な診察を、と紹介されてくる場合もあります。ご家族の方がしこりを見つけるケースのほか、トリミングの時にトリマーさんが見つけたというケースもあります。トリマーさんは全身をくまなく触ったり見たりしていますので、しこりだけでなく耳や皮膚のトラブルもよく見つけてくれますね。
動物との暮らし方や治療について知識を得ることが大切
診療の際、どのようなことを心がけていますか。
動物とそのご家族にはできるだけ優しく接しています。動物をここに連れてくるだけでも大変なことはとてもよくわかっています。猫を連れていこうとすると、気配を感じて家のどこかに隠れてしまったり、意外に重たくてケージに入れて運ぶのも一苦労だったりします。犬も普段はこの前の通りを機嫌良く歩いているのに、いざ診察で行くとなるとぜんぜん動かなくなったり。ご家族の方には、大変な思いをしてここに連れてきてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。病院では動物たちも緊張しますし、診察は慣れていないことも多いです。ですので、できるだけ短期間で適切に診断をして家に帰してあげたいですし、ご家族の方にはここに来て良かった、安心したと思えるものを持って帰ってもらえたらという気持ちでお話ししています。
動物のご家族とのコミュニケーションも大切になさっているのですね。
ご家族の方とはかなり細かいことまでお話ししています。特に初めて犬や猫を迎える方には、動物と一緒に暮らすにあたって知っておくべきことを詳しくお話ししていますね。日常生活の中で気をつけることや、今後起こり得ること、それに対してできること、などさまざまな知識をお伝えしています。また、病気になった場合はその治療法についてもよく知ってほしいと思っています。例えば、ご家族が手術はさせたくないというお考えの場合、こちらがそのまま受け入れてしまえばその動物にとって手術の機会は失われてしまいます。ですが、手術によって痛みの緩和が期待できるといったメリットを知れば、ご家族の判断材料や治療の選択肢も増えて良い結果につながる可能性もあります。
地域の動物病院で腫瘍を診てもらえるのはとても心強いですね。
腫瘍は早く正確な診断をつけることが重要と考えています。様子を見てしまったり、病院に行くのがおっくうに感じてしまったりすることで適切な診断につながらず、結果、治療の開始が遅れてしまう恐れがあります。当院では血液検査やエックス線検査、超音波検査、細胞診や組織診を行って、腫瘍の種類を迅速に診断しています。ご家族の方には、どんな腫瘍でどんな治療法があるか、治療をした場合、しなかった場合に起こり得ることなどをお話ししています。自宅で行わなくてはならないケアもたくさんあり、それらもすべて含めて治療なので、ご自宅でできるかどうか、できない場合は当院でどのように対応するか、といったことまで相談します。私だけでなくスタッフも必要に応じて術後のケアや抗がん剤の副作用などについて細かく説明し、少しでも心穏やかに過ごせるようサポートしています。
体のどこでも触らせてくれることが長生きの秘訣
飼い主さんに特に伝えたいことはありますか。
動物の体をどこでも触れるようにしておいてほしいですね。おなかや口の中、どこを触っても嫌がらずストレスを感じづらい犬や猫に育ててほしいです。猫は自分からおなかをゴロンと出しても人間が触ると嫌がったりしますが、おなかに触れないとその部分のしこりは見つけにくくなります。口の中も自由に触れれば、普段見えない口の中のしこりも見つけやすくなります。どこでも触らせてくれることが長生きの秘訣とも言えますね。そのためには小さい時からのしつけが大切で、そのあたりについてもお話ししています。また、普段の状態を知るために健康診断を受けていただきたいですね。健康な時の状態を継続的に診ていくことで、その変化に気づきやすく病気の早期発見につながります。4~5歳になったら年に1回、10歳を超えたら半年に1回健診を受けると良いですね。
ところで、先生はなぜ獣医師をめざしたのですか。
幼少期から暮らしていた大好きな猫のことを詳しく知りたくて、漠然と獣医師に憧れていました。シャチやイルカ等の海獣にも関心があり、獣医師には海獣に関われる仕事もあると知って本格的にめざしました。大学時代は、家の猫のかかりつけの動物病院でアルバイトをしながら、研究室では海の哺乳類が座礁した海岸に赴き解剖をしたり、骨格標本を作製したり。野生のイルカと泳ぎ、水族館の実習にも行きましたが、最終的にはアルバイト先の動物病院に就職したのです。実はその病院では保護された子猫の家族を募集していたのですが、あまりのかわいさに中学生だった私が一目ぼれをして迎えた子がいました。この子が多くの病気を経験し、通院のたびに威嚇するので診察が大変だったのですが、いつも優しく診ていただき、猫とも長く一緒に暮らすことができました。この経験から、同じように困っている動物たちに優しい獣医療を提供できるようになりたいと考えたのです。
最後にメッセージをお願いいたします。
高齢になってもちょっとしたグルーミングをして、少しでも気分良く、かわいく過ごしてほしい思いは、ご家族も私たちも同じだと思っています。地域のかかりつけ獣医師として、地域に暮らす動物たちとそのご家族に信頼されるクリニックであり続けたいと思いますので、何か不安に感じることやこんなことを聞いていいのかしら、と思うことがあれば、どんなことでも気軽に相談に来てください。犬の散歩の時にもぜひ立ち寄ってください。この場所に慣れてもらえれば、いざ診察が必要という時もスムーズに行えると思います。
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