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猫の口内炎・口臭・しこりに要注意 口腔扁平上皮癌の治療と予防法

アーツ人形町動物病院

(中央区/人形町駅)

最終更新日: 2023/12/20

猫の口腔内にできる腫瘍は実に8割を悪性が占めるとされ、中でも発生頻度の高い扁平上皮がんは、早期に治療しないと3~6ヵ月といった短期間で命を落とすこともあるともいわれる深刻な疾患だ。生活をともにする飼い主であっても、口の中は意識しなければ触れることがないため、どうしても発見が遅れがちで、がんができた部位や進行具合によっては手術を断念せざるを得ないケースも少なくないという。今回は日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医1種の資格を持ち、数多くの腫瘍手術を手がける「アーツ人形町動物病院」の今井理衣院長にインタビュー。猫の口腔腫瘍や扁平上皮がんの兆候、治療法、予防や早期発見のためにすべきことなどについて、専門家としての見解を詳しく聞いた。(取材日2023年11月17日)

最低でも2~3ヵ月に1回はかかりつけの獣医師を受診し、小さな異変を見逃さないことが大切

  • Q.猫の口腔腫瘍とは、どのような病気ですか?

    A.

    ▲口に病変があると深刻な疾患である可能性が高いという

    文字どおり、猫の口の中に現れるしこりで、良性悪性双方の可能性が考えられます。しかし残念ながら口の中にできる腫瘍の場合、その8割が悪性というデータがあります。9歳以上の高齢で口に病変がある場合は、悪性腫瘍であることが多いので注意してください。また、体にできる腫瘍のように部分的に盛り上がったような状態になるわけではないので、外見で早期に気づくことは困難です。口元全体が徐々に腫れるほか、患部に痛みを伴うためによだれの量が増える、えさの食べ方がいつもと違う、口元から血液が混じったようなきつい臭いを放つといった兆候が見られます。
  • Q.口腔扁平上皮がんについて詳しく教えてください。

    A.

    ▲日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医1種の資格を持つ今井院長

    猫の口にできる悪性腫瘍のうちの多くを占めるのが扁平上皮がんです。下顎の骨にできるケースが特に多く、そのほか上顎の骨、舌、歯肉、扁桃などにも発生します。口腔扁平上皮がんの大きな特徴として、局所浸潤性が高いことが挙げられます。局所浸潤性とは、しこりを起点にがん細胞がタコ足状に広がっていくことで、しこりの部分だけを手術で取り除いても、がん細胞は除去しきれずに残ってしまう可能性が高く、治療しなければ平均余命が1~3ヵ月ともいわれるほど、非常に予後の悪い病気だと言えます。病変の発生部位によっては治療ができないこともあります。
  • Q.治療はどのように進めるのでしょうか?

    A.

    ▲数多くの腫瘍手術を手がける同院

    当院では可能な限り根治をめざして手術することをお勧めしています。進行に伴って痛みが強くなり、よだれの量が急激に増えるほか、しこりのために口が閉じられない状態になるなど、生活の質が大きく損なわれるためです。下顎のがんであれば、初期に下顎を取り除く手術を行うことも有用な手段の一つですが、病変の大きさや発生部位によって再発のリスクは残ります。放射線治療や投薬はあくまで補助的で、特に放射線治療は完治ではなく疼痛緩和を目的に行うケースもあります。一方手術をしても半年程度で再発するケースも多く、高齢の体にかかる負担や術後の外見上の変化等を理由に、治療選択に迷われる飼い主さんが多いですね。
  • Q.予防法や普段から気をつけるべきことがあれば教えてください。

    A.

    ▲早期発見・早期治療が大切だという

    扁平上皮がんの原因に関する研究は国内外で行われてきました。受動喫煙や屋外に出る猫、農村部の猫、化学合成添加物等が環境リスク因子として知られています。そのため、屋内生活をお勧めします。また、私のこれまでの経験上、対処法として有用と考えられるのは、早期に発見して初期のうちに手術を受けることです。口の中の腫瘍を早期に発見するために、最低でも2~3ヵ月に1回はかかりつけの獣医師の触診を受けること、あるいはご家庭でも意識して口から顎のラインを触るようにしたり、日常生活の中で口内の様子をチェックしていれば、よだれや臭いの変化といったサインにも気づきやすくなると思います。

動物病院からのメッセージ

今井理衣院長

頭頸部の腫瘍で最もつらいのは、長く一緒に暮らしてきたかわいい家族の顔貌が変わってしまうこと。患部の痛みで大きなストレスを感じている猫に対して、よだれの処理などケアを続けるのも大変なことだと思います。飼い主さんの中には「私の飼い方がいけなかったんでしょうか?」とご自分を責めてしまう方が多くいらっしゃいますが、飼い主さんに悪いところは何もありません。がんにつながる小さな異変を見逃さないためにも、こまめな通院習慣をつけて体の隅々までチェックを受けるようにしましょう。飼い主さんとかかりつけの獣医師さんで「いつもの正常な状態」の共通認識を持っておくことが、疾患の早期発見・早期治療につながります。

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