赤尾真人 院長の独自取材記事
赤尾動物病院
(横浜市旭区/希望ヶ丘駅)
最終更新日: 2023/01/22
相鉄線沿いの静かな住宅街の一角。レンガ色の2階建て住宅の1階にある「赤尾動物病院」は1999年に赤尾真人院長が開業した。犬と猫を主に診療しており、動物たちの病気以外にも生活習慣などのちょっとした疑問も気軽に相談できるアットホームな雰囲気が持ち味だ。診療所の向かい側に広がる公園に散歩する途中に立ち寄っていくなじみの飼い主も多いそう。コンセプトは「インフォームド・コンセントを徹底して、飼い主様と動物の両方の立場からベストな治療方法を考えること」と赤尾院長。誠実な面持ちと眼鏡の奥にある眼差しは温かく、言葉の節々に動物たちへの愛情と飼い主への思いやりの心をにじませる。このドクターなら大切な家族であるペットを安心して任せられるという信頼感を抱かせる。そんな赤尾院長に獣医師を目指したきっかけや診療方針、動物を飼う心構えなどについて幅広いテーマで語っていただいた。 (取材日2012年1月11日)
散歩の途中に気軽に立ち寄れるアットホームさが魅力の動物病院
先生が獣医師を目指したきっかけはどんなことだったのでしょう。
小さい頃から動物は好きでしたが、昔から獣医師になる夢を抱いていたわけではなかったんですよ。はっきりと獣医師を目指そうと考えたのは高校生で進路を考えた頃です。僕の両親が共働きだったこともあり、親から「日中は誰も面倒が見られなくてかわいそうだから、犬や猫などの動物は飼ってはだめ」と言われていました。それでハムスターやモルモットなどの小動物を飼うことが多かったんです。小学生の時、飼っていたモルモットの具合が悪くなってしまって。当時は動物を病院に連れて行くという意識がほとんどなかった時代でしたから、仕方なく家に残したまま学校に行ったんです。その日は1日中、「大丈夫かなあ」と心配で仕方がなかったことを覚えています。もしかしたらその時をきっかけに、獣医師になろうという意識が芽生えていたのかもしれませんね。現在は猫を1頭飼っています。開業前に働いていた病院で引き取られていた猫を連れて来たので、もう14年も一緒に暮らしています。人間で言えばもうおばあちゃんですが、そう思えないくらい元気がいいんですよ。今では大切な家族の一員です。
こちらはいつ開院されたのですか。
1999年の開業です。もともと僕は横浜生まれの横浜育ち。大学も神奈川県藤沢市にある日本大学農獣医学部獣医学科に在籍していましたから、ずっと神奈川県で暮らしています。卒業後は鎌倉市の動物病院で3年ほどお世話になり、初めて動物医療の現場に触れて多くのことを学ばせていただきました。その後も戸塚区にある動物病院で2年間の実務経験を積み、開業に至りました。開業地については、この希望が丘の土地を見学に来て一目見るなり「この場所だ!」と即決したんです。車でも来やすいし、向かい側に公園があるので散歩の途中に気軽に立ち寄れる動物病院にできたらいいなあと思ったんですよ。現在通っていただいているのも皆さん地元の方ばかり。散歩途中で足を運んでくださる飼い主様もたくさんいらっしゃいます。
どのような病気や不調を訴える動物患者が多いのでしょう。
最近では皮膚炎を患っている子たちが多くなりましたね。いわゆるアトピー性皮膚炎など、アレルギーがベースにある症例が昔より増えていると思います。なかなか完治しにくいのは人間と同じですね。あとはお腹を壊した、食べた物を吐いてしまうなどの一般的な症状が多いでしょうか。当院には入院設備とペットホテルがありますから、入院の必要がある場合にはこちらでお預かりすることも可能です。また診療所と自宅が一緒なので、入院している子がいれば夜中でも様子を見てあげられるのが飼い主様にとって安心材料になっているようです。ですから具合の悪い子がいると寝不足になることも多いんですよ(笑)。今は内科をメインで診療していますが、大学では外科の研究室に所属していましたから、外科手術も行っています。ただし豊富な経験を要する高度な外科手術の場合は専門医療施設をご紹介させていただく場合もありますね。
インフォームド・コンセントを大切に飼い主と動物の両方の立場から最良の治療を行う
こちらの診療方針について聞かせてください。
治療についてきちんと飼い主様とお話しをして納得していただいたうえで治療方法を選択していくという、インフォームド・コンセントをモットーとしています。動物だけを見て「治すためには、あれもこれもしなければだめ」ということはせず、飼い主様と動物たちの両方の立場に立って、もっとも良いやり方で治療を進めていくスタンスを取っています。現在では動物医療の高度専門化が進んでおり、希望する方にはより高度な検査や治療が受けられる時代になっています。幸い横浜や川崎には動物高度医療センターや24時間体制の救急医療センターなどもありますから、それらの施設をご紹介することが可能です。でも、すべての方が高度医療を希望するかと言えばそうではありません。経済的負担も大きいですし、お仕事をなさっている方にとっては、時間を作って動物を病院に連れてくることさえ大変です。それでも毎日のように通ってくださる飼い主様の動物たちへの愛情を思うと、私も一生懸命に診療に取り組まなければと奮い立たされます。
診療するうえでもっとも心がけていることはどんな点でしょう。
重大な病気を見逃さないように注意して診療を行うことです。ただの下痢だと思っていたら実はもっと重大な病気が隠れていたということが時折あります。診察のたびに体の隅々まで検査するわけではないので、病気に気づかず見逃してしまうケースもあるのです。動物たちは自分で症状を説明することができませんから、飼い主様からの情報がとても重要です。それらの情報から隠れていた症状が見つかることも少なくありません。例えば、いつから具合が悪いのか。何を食べたのか。おトイレはどうか。それを一つ一つチェックしていくよりも、飼い主様が把握していればその分だけ治療が早くスタートできます。ですから飼い主様が普段から動物たちをよく見ていてあげることが大切なのです。また、こちらでも初めて診察する患者さんより日頃から見ている子のほうが「いつもと違うな」と異変に気づいてあげられることが多いのは確か。その点でも日頃からかかりつけの動物病院を持つことは重要だと思います。
スタッフの協力も欠かせませんね。
そうですね。当院には女性の動物看護師が2人おりますが、明るく感じの良い接客を心がけてもらっています。彼女たちは受付と会計も担当していますから、飼い主様とお話しする機会が多いんですよ。「ワンちゃんがこんな仕草をしていた」というような動物たちの話題は看護師のほうが話しやすいでしょうし、飼い主様にとっても治療のためだけに来院しているという意識が薄らぐでしょう。看護師から「あの患者さんはご家庭ではこんなふうにしていたそうですよ」という話などを聞くと診断の参考にもなるんです。レントゲンや血液検査も必要ですが、それだけではなく、いかに飼い主様から見た動物たちの様子を聞き出せるかも重要。そのためには飼い主様とのコミュニケーションが欠かせませんし、受付や会計も大切なコミュニケーションの場であると考えています。また、動物を飼ううえで役立つ情報をまとめて「看護師通信」を掲示板に張り出しているんですが、これは看護師たちの手作りなんです。飼い主様にも好評でコピーをして差し上げることも多いんです。このようなアイデアを自主的に取り入れて頑張ってくれているので頼りになりますね。
動物たちと飼い主を結ぶ架け橋のような存在を目指していきたい
家族の一員として動物たちと上手に付き合っていくためにどのようなことを心がけたらよいでしょうか。
動物を飼う前に、飼い始めたらどんな生活になるのかを考えてから飼っていただきたいですね。例えば、旅行のとき、家には残しては行けませんから、どうするのか。万が一病気になった時には病院に連れて行ってあげられるのか。その子が成長するまでどんなことをしてあげなければいけないか。また、大きい子を飼うか、小さい子を飼うかでも、生活スタイルは大きく違ってくるでしょう。そのようなことを最初に少し考えてあげてほしいんです。それからよく観察してあげること。動物たちの状態で気になる点があったら、放っておかずに一つ一つ相談しに来てもらいたいと思います。そして必要な予防接種やワクチンは最低限接種してほしいですね。動物病院に足を運ぶきっかけにもなりますし、飼い主様と違った目線で動物たちを見てあげられるというメリットがあります。年を取って病気になるのは、なるべくして病気になることがほとんどですから、飼い主様が悪いわけではありません。治る病気を早い段階で気づいて治してあげられたら、それは飼い主様のおかげです。そんなふうに普段から目をかけてあげることが動物たちにとって何よりも大切なのです。
休日はどのように過ごされていますか。
普段は忙しいので、休日になると買い物に出かけたり、あちこち動き回っていることが多いですね。最近はギターもよく弾いています。エレキギターを新調して自宅で練習しているところです。動物の次に好きなのは音楽でしょうね。カラオケも好きなので一緒に行ってもらえる人がいたら歌いますよ(笑)。今は一人で練習しているので音楽仲間ができたらいいですね。いつかバンドを組んで演奏できたらいいなあと思います。
今後の展望について聞かせてください。
開院して13年になるので、開院した当初から来てくれている動物たちが寿命を迎えるケースが多くなっています。これは僕としても非常にさびしいこと。しかし、飼い主様側のさまざまな事情もありますから、すぐに新しい子を飼うことをお勧めすることはできません。でもいつかまた、その方たちがもう一度動物を飼っていただいて、「また飼ったんですよ」と顔を見せて来てくださればうれしいですね。動物を飼っている方にとって、動物たちの体調を管理するうえでかかりつけ医を持つことはとても重要なことです。爪切りや耳の掃除などのちょっとしたケアだけでもいいので、定期的にクリニックに足を運んでいただきたいと思います。そのように普段から気軽に立ち寄っていただけて、動物たちと飼い主様を結ぶ架け橋のような存在でありたいと願っています。