田口 ゆかり 院長の独自取材記事
ねこの病院と保護ねこルーム ぽのいえ
(さいたま市西区/指扇駅)
最終更新日: 2025/01/16
「ヒトもネコもハッピーに!」。そんな思いを掲げているのは、「ねこの病院と保護ねこルーム ぽのいえ」だ。勤務医時代にさまざまな猫の診療に携わってきた田口ゆかり院長が2023年9月に開院した、猫専門の動物病院である。一次診療施設として一般診療や予防医療を提供したり、必要に応じて適切な二次診療施設を紹介したりしている。加えて院内には保護猫ルームも設け、猫の保護活動と里親探しにも尽力しているという。「家猫さんも外猫さんも含む、すべての猫さんと人が幸せになるお手伝いをさせていただきたいです」と元気あふれる笑顔で話す田口院長に、猫専門の動物病院としての強みや、診療時に心がけていることなどを詳しく聞いた。(取材日2024年12月19日)
「ヒトもネコもハッピーに!」を掲げる猫専門動物病院
そもそもなぜ田口院長は獣医師を志したのでしょうか?
子どもの頃に受けた、環境問題に関する授業がきっかけです。人間のせいで自然が壊れ、野生動物に被害が出ているという話に強い衝撃を受け、将来は野生動物のための仕事がしたいと、獣医師を志すようになりました。そうして北里大学獣医学科に進学したのですが、野生動物と関われる仕事はかなり少ないという難しい現実を知りました。「それならもともと猫さんが好きだし、野生動物の次に興味のある領域に貢献したい」と考え、身近な動物の健康を支える「町の獣医師」をめざすことにしました。
開院までのご経歴をお聞かせください。
大学卒業後はまず、ワンちゃん猫ちゃんを診ている動物病院に勤めていました。そこは外猫さんも診てほしいという、保護活動団体もよく利用しに来る場所でした。この時に、家猫外猫含む多くの猫やオーナーさんと接し、猫さんに対する接し方やスキルなどを学ぶことができたのです。ですが動物病院のスタッフは自らを顧みずに働く傾向があり、体を壊したこともあってしばらく休職することにしました。「また獣医師として貢献したい」と考え始めた時に、ちょうど猫専門病院で働く機会をいただけました。ここでは猫さんに関するより専門的な知識・技術の習得に加えて、猫専門の動物病院のニーズの高さや重要性を知ることができました。もともと開業は予定していませんでしたが、こうした経験から次第に、自分でも猫さん専門の動物病院を開院したいと考えるようになったのです。
そうして2023年9月に、猫さん専門の動物病院を開院されたのですね。
当院は「ヒトもネコもハッピーに!」をモットーとする、猫専門の動物病院です。一般的な動物病院では、猫さんは「ついで」のような位置づけになってしまう場合があります。たとえ珍しい病気でなくても、十分な治療につなげられず手遅れになることも少なくありません。また、猫さんは他の動物のにおいや気配で大きなストレスを感じることもあります。当院は、猫を専門的に診てきた獣医師と猫慣れしたスタッフが対応していることと、猫さん以外の動物のにおいや気配がない環境であることから、猫さんにも落ち着いて過ごしてもらえると思います。さらに、猫好きな方しか訪れないため、猫さん好きの交流の場としても利用していただいています。指扇に開院した理由は、私が住む町を中心に地域貢献をしたいという思いからです。
健康診断をはじめとする一次診療と、保護活動に尽力
こちらで提供している診療内容について教えてください。
内科や消化器科などの一般疾患に対する診療、ワクチン接種などの予防医療、避妊・去勢をはじめとする外科手術に対応しています。一次診療を担う動物病院として幅広く診ていますので、猫さんのことで何か気になることがあれば、些細なことでも何でも相談していただけたら幸いです。CTやMRIによる精密検査やより高度な治療・手術が必要だと判断した場合は、適切な二次診療施設をご紹介します。また「なるべくここで対応してもらいたい」というオーナーさんのご希望に応えられるように、必要に応じて、外部から専門医を招いてのご対応も可能です。猫さんの健康を支えるために充実した環境の整備に努めていますので、猫さんとオーナーさんに安心していただけたらうれしいです。
幅広く診ている中でも、特に力を入れている分野は何ですか?
健康診断です。猫さんは病気を隠すのが上手な動物です。昨日まではとても元気でしっかりとご飯を食べていたのに、今日はぐったりとしてご飯を食べない。検査をしてみたら、結果の数値が正常値をはるかに超える異常値だったというケースは少なくありません。隠れている病気を早期発見し、症状に気がついた時には手遅れだったという事態をなくしたいという思いから、当院では健康診断に力を入れて取り組んでいます。猫さんは腎臓病や下部尿路疾患などにかかりやすいですが、猫さんが来ずとも尿検査で早期発見することも可能ですので、尿検査だけでも定期的に受けていただきたいですね。また、オーナーさんの中には猫さんの正しい知識を得られないまま一緒に暮らしている方もいらっしゃいます。猫さんが健康で幸せに過ごせるように、健康診断を機に些細なことでもご相談いただき、そういった方のサポートも行っていきたいと思っています。
猫さんの地域猫活動にも注力されているとお伺いしました。
「ヒトもネコもハッピーに!」という概念には、外で暮らす地域猫さんも含んでいます。ですから地域猫さんの診療や、避妊・去勢手術も断ることはせず、基本的にすべてを院内で対応しています。地域猫さんの治療や保護などのご相談は、遠慮せずにまずはお電話にてご連絡ください。また、院内には保護猫と遊べる空間「保護猫ルーム」を設け、保護活動団体の方と協力しながら保護と里親探しを行っています。猫さんの保護活動は簡単ではありませんが、譲渡先で人間と卒業猫が幸せに暮らしているというご連絡をいただくと、本当にうれしいですしやってて良かったと感じます。猫さんを家族に迎えたい方も、ぜひ「猫のいる世界」に足を踏み入れてください。
丁寧な診療と充実した診療体制で病気を見逃さない
診療の際に心がけていることはありますか?
猫さんを診る際は、少しでも猫さんに安心してもらえるように優しく声をかけながら丁寧に触れることを意識し、オーナーさんが気にしている部分に限らず必ず全身をチェックするようにしています。また、猫さんはちょっとした物音でも飛び上がることも多いので、検査時などにもなるべく物音を立てない、大きな動きをしないといったことも心がけています。獣医師にとっては当たり前でもオーナーさんにとってはそうでないことも多く、他にもオーナーさんからいろいろと学ばせていただくこともあるので、些細なことでも耳を傾けるよう努力しています。
今後の展望・目標をお聞かせください。
猫さんを連れての受診は、いろいろな意味でハードルが高いと感じるオーナーさんが多いでしょう。そういった方も気軽に受診できる場所になれるように、院内の雰囲気づくりや診療体制の整備、こまやかな接遇の徹底にこれからも尽力していきます。「以前他の動物病院を受診した時、怖がって暴れたことがある」という猫さんこそ、ぜひ当院へ連れて来ていただけたらと思っています。精神安定剤を飲むことで猫さんも少しは恐怖心が抑えられることが期待でき、落ち着いて受診できることにつながりますので、病院嫌いな猫さんは受診前にご相談ください。猫さん専門という強みを生かして、これからさらに多くの猫さんと猫好きさんに貢献していきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
獣医師は動物について詳しいですし、獣医師の診療を信じることも良いことですが、もしオーナーさんが疑問に思うことがある場合は、疑問を残したまま通院を続けたりうのみにしたりせず、獣医師に質問や相談をしてください。もしくは遠慮せずにセカンドオピニオンを受けていただきたいです。そうすることで病気の見逃しをより防ぎやすくなるでしょう。当院でもセカンドオピニオンに対応しています。猫さんのことなら専門ですので、何でも相談しに来てください。小さい子どもがいるため時間外のご対応は難しいですが、週6日病院を開けています。猫さんのことでしたら、ご遠慮なく頼りにしていただけましたら幸いです。