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宮本 三郎 院長の独自取材記事

さぶの犬猫病院
(大田区/武蔵新田駅)
最終更新日: 2025/08/12

東急多摩川線武蔵新田駅近くに「さぶの犬猫病院」を開業した宮本三郎院長。近所の人が気軽に立ち寄れる動物病院をつくりたいと考え、アクセスの良さや規模感に惹かれ事業承継という形で開業したという。勤務医時代は幅広い診療の経験に加え、麻酔や疼痛管理に関する研鑽を積み、全身麻酔下での口腔ケアや、動物の痛みや不安のコントロールを得意とする。診療にあたっては「当たり前」にこだわり、飼い主の話をよく聞き、治療費についても事前に説明し、飼い主が安心して受診できることをめざしている。また、抗体検査を行った上での適切なワクチン接種を提唱するなど、動物の健康を守るための活動に積極的に取り組む。そんな宮本院長に診療の特徴や、動物医療への思いを聞いた。(取材日2025年7月18日)
全身麻酔下での口腔ケアに注力。便利な駅近の動物病院
とてもユニークな院名ですね。

よくご質問を受けるのですが名前が三郎なので、私の動物病院という思いでつけました。開業するなら、自分の目が行き届くような動物病院、ご近所の方が集まりやすい小規模な動物病院にしたいと思っていたので、前身の動物病院を承継する形で、2025年1月に開院しました。まさに理想的な規模です。駅から徒歩3分と近いですし、環状八号線沿いですが、意外と静かで落ち着いた環境だと思います。カルテも引き継いでいるので、前の動物病院の患者さんも引き続き来てくださっています。犬と猫とは、猫のほうが半々よりちょっと多いかなという印象です。症状としては下痢や吐き戻しなど消化器症状の子が多いですね。
では、開業までの経緯を教えてください。
人に何かを伝えられる仕事をしたいなと思ったのと、小さい頃から動物が好きだったことから、獣医師という職業に興味を持ちました。動物の飼い主さんとコミュニケーションを取り、大切なことをしっかりと伝えることが、動物を助けることにつながるという意味でやりがいのある仕事だと思ったのです。今も「伝えたい」という思いは強いので、診療時間が長くなりがちです。獣医学部卒業後、目黒区の動物病院に勤務し、副院長を務めました。勤務医時代には、動物の疼痛管理に精通する佐野洋樹先生に師事して、全身麻酔下での口腔ケアや動物の不安と痛みのコントロールも学びました。また、トリマー養成専門学校で、予防獣医学や老犬介護などについて15年以上講義を行っていました。そろそろ開業をと考えていた頃に、出会ったのがこの場所です。
診療面には、どのような特徴がありますか。

消化器や皮膚、関節の症状、異物の飲み込みなどに対して幅広く診療を行っており、より専門的な診療が必要な場合は速やかに二次診療施設に紹介しています。また、口腔ケアや健診など予防的な診療を重視しています。1歳未満の子には、口周りをなでたり、歯肉を指で触ったり、少しずつ訓練をしながら予防的な口腔ケアができるようにしていきます。歯垢や歯周病といった問題がある場合は、麻酔をかけてスケーリングなどの処置を行います。全身麻酔を不安に思われる飼い主さんも多いのですが、当院では安全性を十分に確保するため事前の検査をしっかり行い、麻酔リスクをできる限り軽減するよう心がけています。その他健診では、血液検査に加えて、心臓とおなかの超音波検査にも対応しています。特に、チワワやトイ・プードルといった小型犬は心臓病が多いので、元気でも心臓超音波検査を含めた健診を定期的に受けていただきたいですね。
話をよく聞き、治療費も明示して、何でも相談しやすく
予防接種についても、独自の取り組みをされていると聞きました。

そうです。1歳未満の時にワクチンを接種していれば、次の接種については少なくとも3年は期間を空けて問題ないといわれていて、毎年のワクチン接種は過剰接種とされています。過剰接種によって、身体のバランスが崩れて免疫異常の病気を引き起こす場合もあります。そこで、血液検査で抗体を調べて、必要なワクチン接種を行うことをお勧めしています。抗体検査を組み合わせた適切なワクチン接種の啓発は僕のライフワークでもあり、勤務医時代から講演など情報発信に取り組んできました。当院では、すべての犬猫に抗体検査を行った上で必要なワクチンを接種しています。
先生の診療方針について教えてください。
まず、飼い主さんの話をよく聞くことです。といっても飼い主さんに言われたことだけで診療を進めるのではなく、詳しく聞き出して情報を集めることを心がけています。例えば下痢の時も、「食事を変えていませんか」「近くで工事などが行われていませんか」「洗剤や柔軟剤を変えましたか」などと細かく質問をしていきます。特に猫ちゃんの場合、音や振動、匂いなどに敏感な子もいるので詳しく聞いて原因を見極めます。根本的な原因がわからないまま治療しても、また同じ症状を繰り返しますし、特に「なかなか治らない」とセカンドオピニオンを求められる場合には、詳しく聞きますね。近くで工事などが行われている場合、犬や猫は理由がわからないので、ストレスを感じる子も少なくありません。音が聞こえない所への移動や、猫が好きな映像や音を流すことを提案したりと治療というより飼い主さん目線で対処できそうなことを考えることもあります。
先生は「当たり前であること」にこだわられているそうですね。

当院は、最新の検査機器や治療器具があるわけではなく、特別な診療ができるわけでもありません。だからこそ当たり前のことをきちんと対応し、飼い主さんにもワンちゃんや猫ちゃんにも安心してもらえる場所でありたいと考えています。緊急性が高くない場合は、必ず顔から診るようにしています。飼い主さんが気になっているところ以外で動物が問題を抱えていることもあるからです。治療費については、「この検査はこのぐらいかかります、よろしいですか」とお聞きして飼い主さんが納得されてから始めます。治療費についてもわかりやすく安心できる、そんな当たり前の動物病院でありたいと思っています。
予防や健診で健康を守り、動物との幸せな生活を支える
最近、気になることはありますか。

マダニによるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)ですね。マダニ・ノミ駆除の薬をしっかりと勧めることを心がけています。また、犬のフィラリア予防は浸透していますが、最近、猫の突然死の原因の一つにフィラリアが関わっているという考え方が広まっていますので、猫もフィラリア予防の投薬をお勧めしています。ワクチンに関しては、1年以内のワクチン接種証明書を求めるトリミングサロンや宿泊施設などがあり、施設を利用するためにワクチン接種を希望されるケースもありますが、抗体検査証明書が使用できない施設には、当院から直接ご連絡しますのでご相談いただきたいです。また、歯や口腔の健康はとても重要なので、麻酔をかけての口腔ケアが当たり前になるように知識を広めていきたいと思っています。
歯科の症状などで、アドバイスがあれば聞かせてください。
僕は視診や触診、臭いといった五感を活用した昔ながらの診療も重視しているのですが、飼い主さんにも鼻水、目やになどの変化だけでなく臭いにも注意していただきたいと思います。気になるお口の臭いが、一段階、強くなることがあります。それをスルーしてしまうと、歯周病が進行して顔が腫れたり、目の近くや顎部分に小さな穴ができたりすることもあるんですよ。とろんとした鼻水や鼻血、目やにも歯周病が関係している場合が多いので、気になることがあれば早めに相談していただきたいですね。口腔ケアは犬や猫の健康に大きく関わると考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

地域に根差した動物病院として、動物と飼い主さんの、健やかで楽しい生活を支えるために、健診や口腔ケアなど予防的な診療に力を入れたいと考えています。病気が進行してからでは治療に多くの時間と費用が必要になり、ワンちゃんや猫ちゃんも、飼い主さんも負担が大きくなることもありますので、当院では、1年に2回の健診をお勧めしています。犬や猫は人間に換算すると1年で4歳ぐらい年を取ることになりますので、人間でいえば2年に1回の間隔です。若い時から「半年に1回の健診は当然だよね」と考えていただけるように啓発していきたいと思っています。また、当院はご予約の方優先となります。問題を発見した際は時間の許す範囲で処置をして、終わらない場合はお預かりさせていただくこともあります。気になる症状や悩み、治療費についても、なんでもご遠慮なくご相談いただければと思います。