柳下 志津 院長の独自取材記事

いぬとねこのクリニック ことぶき
(横浜市金沢区/金沢八景駅)
最終更新日: 2026/02/13

結婚後に暮らし始め、子育てをする中で金沢八景の地が好きになり、地域に根づきたいと開業した「いぬとねこのクリニック ことぶき」の柳下志津院長。「ことぶき」という院名は、犬や猫が健やかに長く暮らせるようにとの願いや、生きる力に寄り添いたいとの気持ちを込めたとのこと。ライフワークとして盲導犬の育成にも関わる中で、子犬の生きる力を目の当たりにしたことも開業につながったそうだ。動物が家族と一緒に笑顔で過ごせるよう、「動物の町医者」でありたいと話す柳下院長に、同院の特徴や獣医師としての思いについて聞いた。(取材日2026年1月27日)
犬と猫のかかりつけ医として、幅広い治療やケアに対応
まず、開業されるまでの経緯を教えてください。

もともと生物に関心があったのですが、勉強していくうちに自分が学びたいのは動物だとわかったので、獣医学部に進みました。卒業後は東京都内の動物病院に勤務し、結婚を機に横浜に住み、仕事と子育てなどで忙しい毎日を過ごしていました。子育てが一段落し、いろいろな思いが重なって開業を決めました。開業してまだ間もないのですが、近隣の方々が来てくださっています。大学卒業時に恩師から夢を聞かれて、「犬と猫の町医者をずっと続けることです」と答えたのを思い出しつつ、改めて、町医者の役割ってなんだろうと探求する日々を過ごしています。
こちらの動物病院では、どのような診療やケアに対応されているのでしょうか。
小さな動物病院ですが、動物と飼い主さんが笑顔で過ごせるよう、気軽に立ち寄れて何でも相談できる、犬と猫の身近な相談窓口でありたいと考えています。一般診療をはじめ、健康診断、ワクチン接種、フィラリアやノミ・マダニの予防、爪切りや耳掃除といった日常ケア、老齢期のケアまで幅広く対応しています。治療にあたっては、動物にも飼い主さんにもできるだけ負担の少ない方法を大切にし、その子に合った医療をご提案します。より専門的な検査や治療が必要な場合には、適切な専門施設をご紹介します。病気を治すだけでなく、毎日を元気に過ごすための予防とケアを大切にしていることも、私たちの特徴です。
トリミングを行う際、安全面や動物への負担について、どのような点を大切にされていますか。

医療機関でのトリミングなので、安全性にしっかりと配慮できていると自負しています。飼い主さんの安心にもつながっているようで、うれしく思っています。実はじっと立ったままのトリミングは、動物にとっては重労働なんですよ。まして高齢や体調の悪い子には重い負担になりますから、当院ではその子に合わせて、できるだけ負担のかからないようなトリミングを心がけます。トリマーの方にとっても、1頭のトリミングに3時間以上かかることもあり、かなりの重労働ではありますが、動物の扱い方や接し方が素晴らしいとリスペクトしています。ぜひ、当院でも一緒に働きたいと考えて加わってもらいました。アシスタントも、獣医師とは異なる視点で動物や飼い主さんに接してくれるところがいいなと思っています。当院には、犬のしつけを専門に学んだスタッフも在籍していますので、子犬のしつけ方や、日常の困り事の相談など、ぜひ気軽に頼っていただきたいですね。
盲導犬の育成にも関わり「つなぐこと」の大切さを実感
先生の診療方針について教えてください。

まず私たちは、その病気が治療できるものなのか、それとも治らないものなのかを最初にはっきりさせることを大切にしています。心臓や腎臓の病気、生まれつきの問題など、治らない病気であれば、どうしたらその子が少しでも楽に、穏やかに過ごしていけるかを飼い主さんと一緒に考えていきます。一方で、治療できる病気の場合には、「こんな治療の選択肢がありますよ」「こういった専門的な動物病院もありますよ」と、無理のない形で選択肢をお伝えします。動物の町医者というのは、飼い主さんと専門医療をつなぐ役割だと思っていますので、日頃からより良い情報や医療について学び続けることも心がけています。必要な情報はきちんとお伝えした上で、納得して選んでいただけたらと思っています。
盲導犬の育成にも取り組まれていると聞きました。
ライフワークとして、盲導犬の素質を持つ母犬を預かり、出産を見守り、子犬を約2ヵ月育ててパピーウォーカーさんへ引き継ぐ活動をしています。子犬が生まれると毎日が本当に大変で、特に成長した後半は元気な子犬たちに振り回され、ヘトヘトになることもありますが、そんな経験を通して「生きる」ということのすごさを改めて感じてきました。自分の子育てとも重なる部分があり、子犬や母犬から伝わってくる強い生命力に、何度も心を動かされています。この経験が、生きる力の尊さや、動物の町医者として地域に寄り添っていたいという気持ちを思い出させてくれましたし、社会や地域で支え合って生きることの意味を考えるきっかけにもなっています。
開業への思いにもつながったのですね。

ちょうど当時、家族の介護にも携わっていて、子犬が立って歩き、ごはんを食べられるようになっていく成長の過程と、反対に人が寝たきりになり、少しずつさまざまな機能が衰えていく過程、その両方を同時に目の当たりにしました。そこで、命と向き合い、命と対話したい、生きる力そのものを見つめたいと思うようになったんです。「動物の町医者でいたい」という気持ちも、次第に強くなっていき、今に至ります。また、病気を持って生まれてくる子犬もいますが、生きようとする力があれば、多少悪いところがあっても命はしっかりと続いていく、そう感じる場面にも何度も出会いました。少し長く手元で育てながら、さまざまな人の助けを借りることで、やがて新しい飼い主さんのもとへ巣立っていく子犬もいました。その経験を通して、私が本当にやりたいことは、命と命、人と人を「つなぐ仕事」なのだと、心から思うようになったのです。
地域に根づき動物と飼い主を支え、生きる力を育てたい
実際に開業して、どのような思いがありますか。

実際に開業してみて、動物と飼い主さんが足を運んでくださることがどれほどかけがえのないものかを、日々実感するようになりました。地域に対する責任、動物に対する責任、そのすべてを含めて、この仕事は「仕事」という枠を超え、自分の人生そのものなのだと思うようになったんです。それだけ動物や飼い主さんの存在が、ありがたく、大切なものだと感じています。また、私自身、結婚してこの場所で子育てや介護を経験する中で、この地域に根づいて生きていきたいという思いが自然と芽生えていったのだと思います。暮らしやすく、住んでいる方々も本当に温かい、この地域が好きになり、ここで生きていきたいと思うようになったからこそ、開業という道を選んだのだと感じています。
では、今後に向けての展望を聞かせてください。
町医者としての役割を、これからも大切にしていきたいと考えています。獣医師にも診療スタイルにも、いろいろな形があっていいと思いますし、それぞれがうまくつながることで、動物や飼い主さんの幸せにつながればいいなと思っており、その一端を担えたら、という気持ちです。また、この地域も高齢化が進んでおり、人が元気でいなければペットと暮らし続けることはできません。自分自身も含めて、動物のためにも「元気に楽しく暮らしましょう」という思いです。飼い主さんが年齢を重ねても、動物と安心して楽しく暮らせるように、将来的には送迎サービスなども考えていかないといけないですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

飼い主さんと動物が、健康で楽しく暮らしていけるように、そのお手伝いがしたい、生きる力を育てたいと考えています。ときには病気が治らず、つらい場面もあるかもしれませんが、できるだけ前向きに、楽しく診療やケアに向き合い、いつも心地良く過ごせる動物病院でありたいと思っています。病気があってもなくても、その子にとって何が一番良いのかを、一生懸命、飼い主さんと一緒に考えていきます。動物病院というと敷居が高く感じられるかもしれませんが、健康診断や日頃のケアの相談も大歓迎です。トリミングやしつけのご相談にも対応できるスタッフがいますので、暮らしの中で気になることがあれば、どうぞ気軽に声をかけてください。動物も飼い主さんも、笑顔で来て、笑顔で帰っていただける、そんな場所でありたいと願っています。

