熊倉 彩 院長の独自取材記事

SHINKAWABASHI ANIMAL CLINIC
(川崎市川崎区/川崎駅)
最終更新日: 2026/02/13

川崎駅から徒歩10分、下町風情が漂う一角に昨年12月に開業した「SHINKAWABASHI ANIMAL CLINIC」。院長の熊倉彩先生はエキゾチックアニマルを専門とする動物病院で研鑽を積んだ経験の持ち主だ。犬・猫はもちろん、うさぎ・猛禽類以外の鳥類・ハリネズミ・モモンガ・チンチラなどの小型草食齧歯類に幅広く対応している。アシスタント、トリマーなどのスタッフとのチームワークも良好で、院内には温かな空気が流れている。「決して営利目的だけに走らない」と、全員が小さな命と真剣に向き合い、院内に飾られた20世紀を代表する芸術家による一筆書きの動物画のように、シンプルかつ本質的な医療を追求してやまない。愛鳥の最期を語る時、涙を浮かべる「飼い主」でもある熊倉院長に、診療にかける思いなどを詳しく聞いた。(取材日2026年1月27日)
文鳥に導かれ獣医師に。エキゾチックアニマルに強み
先生が獣医師をめざしたきっかけからお聞かせください。

10歳から19歳までともに過ごした文鳥、ハッピーちゃんが導いてくれたように思います。動物と暮らしたいと訴え続ける私に根負けした母が「1年間毎朝6時に起きられたら小鳥かハムスターを飼ってあげる」と約束してくれたんです。朝は苦手でしたが1日も寝坊しないほど真剣でした。小鳥にしたのは少しでも長く一緒にいたかったから。「絶対にこの子を幸せにする」と、飼育書がバラバラになるまで読み込みました。同じ頃、乗馬も始めました。乗馬クラブにたくさんいる馬たちの中で不思議と誰もが仲良しの一頭ができるんですが、私のお気に入りは栗毛のメイちゃん。乗馬クラブには、具合が悪くなると獣医さんが来てくれました。働く姿を間近に見て憧れを抱いたのも、獣医師を志したきっかけの一つです。
獣医師としてのキャリアも教えていただけますか?
日本獣医生命科学大学卒業後は都内でも数少ない小鳥と小動物の専門病院、Ebisu Bird Clinic MAIに勤務しました。鳥や小動物の診療は犬・猫とはまた違う特殊性があるのですが、基礎から丁寧に教えてくださった院長の濱本麻衣先生は今でも師と仰いでいます。充実した毎日でしたが次第に犬・猫の診療経験も積みたいと考えるようになり転職。転職先は犬、猫、エキゾチックアニマルを3本柱とするクリニックでした。エキゾチックアニマルとは犬・猫以外の小型小動物、鳥類などの総称です。その後、開業も視野に入れ外科治療の研鑽も積み現在に至ります。
スタッフ全員でつくり上げたクリニックと聞きました。

スタッフは獣医師2人、アシスタント2人、トリマー2人で、もともと同じ職場で働いていた仲間たちです。物件も全員で一生懸命探したのですが、なかなか見つかりませんでした。それでも、飼い主さんにも動物たちにも便利な場所の条件は諦められずにいたところ、偶然、ここが空いたんです。上の階に住んでいる大家さんもとても良い方で、飼い主さんに「かわいいワンちゃんね」などと話しかけてくれています。内装も6人で知恵を出し合って工夫しました。待合室などに飾っているのは動物の一筆書きシリーズのレプリカです。その作品を制作した画家は、大の動物好きとしても知られているんです。大胆で抽象的な表現の作品が有名ですが、こんなシンプルで愛らしい作品もあるんですね。
動物と飼い主の幸せを守るために
診療にあたって大切にしていることを教えてください。

「動物との幸せな生活を支える」ことです。例えば犬や猫のがん治療においては、当院では何ができるのかを飼い主さんに丁寧にお伝えすることを重視しています。その上で、飼い主さんの思いや希望をしっかりとお伺いし、動物にとって最善となる治療を一緒に選択していきます。特に高齢の場合、仮に手術が可能であっても、その子自身の負担を考慮する必要があります。そのため、他の治療法がないかを含めて飼い主さんとよく話し合い、最終的には「この選択でよかった」と悔いが残らない決断ができるようサポートしています。また当院では、犬・猫の一般的な内科、外科治療はもちろんのこと、鳥の卵詰まりに対する排卵処置、うさぎの麻酔下での歯科処置、さらにその他エキゾチックアニマルの入院治療にも対応できるのも強みです。日々の暮らしの中でどの選択肢が動物にとって正解なのか迷う飼い主さんも少なくありませんが、とことん寄り添いたいと思います。
なぜそのような診療ポリシーを持つようになったのですか?
大学1年生の時、飼っていた小鳥のピーちゃんを亡くした経験が影響しているかもしれません。動物病院に連れて行くとすでに骨肉腫が進行していて、断脚を勧められました。片足になっても飛べますが、老鳥にとっては負担が大きすぎるため、断脚は選択しませんでした。でもかなり痛かったはずで、「本当にこれで正しかったのか」といまだに涙が出ます。動物の希望は聞けないので、何かしらの決断をした後に飼い主さんの思いが揺らぐのは当然です。時間の許す限り話し合い、納得できる道を示せればと思っています。
エキゾチックアニマルの診療では何に気をつけていますか。

エキゾチックアニマルはご家庭では異変を見逃しやすく、小鳥や小動物では避妊・去勢が難しい場合も多いため、日常の生活指導が欠かせません。また、具合が悪くなった場合でも、犬や猫のように積極的な治療ができない子がほとんどです。やっと連れて来ていただいた時には、すでに何の治療もできない状態になっている、ということも少なくありません。そうならないためにも、「この行動は、何か問題が起きている可能性がありますので、できるだけ早く受診してください」と、普段から飼い主さんにお声がけしたり、「正しい飼い方」をお伝えするようにしています。
動物愛護にも意欲。スタッフ全員で小さな命を見守る
今後の展望についてお聞かせください。

売上の一部を動物保護に役立てることができないか、スタッフ全員で検討しています。川崎市獣医師会での保護活動だけでなく、保護猫カフェの援助も思案中です。獣医療は営利追求だけを目標にしてはいけないという自分たちへの戒めでもあるんです。自分の子どものように犬を育てているご夫婦などに出会うと、その思いはますます強くなります。家族の歴史の中で必要とされ、ともに暮らしながら尊い役目を担う動物たち。一日でも長く幸せな時間が続くよう、しっかりと健康を見守りたいです。
お忙しい毎日ですがリフレッシュ法はありますか。
現在、2羽の鳥、ヨークシャー・テリアと暮らしています。医師の夫も私も多忙ですが、動物たちとのコミュニケーションが何よりのリフレッシュになっていますね。今一緒に暮らしている鳥は、セキセイインコのシマアジと文鳥のタチウオといいます。お寿司が好きで、飼い始めた季節の旬の魚が名前の由来です。愛犬のジョンはわが家のムードメーカーです。どの子もまったく性格が違い、たとえ小さな命でも個性はとても豊かです。一つとして同じ存在はありません。そこに、動物と向き合う楽しさがあるのかもしれませんね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院では毎朝ミーティングを行い、今日はどんな子を診療するのか情報共有をするようにしています。獣医師には話しにくいことでもアシスタントかトリマーに伝えていただければ、しっかり共有して次の診療に必ず生かすようにしています。動物の個性やご家族の事情に合わせて柔軟に対応しているのでご安心ください。金銭的に余裕がない、仕事で忙しくなかなか家に帰れないなど、動物を飼う上で気になる部分があっても遠慮なくお話しいただければと思っています。誰もが動物とのかけがえのない日々を続けられるように、知恵を絞るのも私たちの仕事です。飼い主さん、動物たちに寄り添い、健康で幸せな毎日を守りたいと考えています。セカンドオピニオンも歓迎していますので、どんな小さなお悩みでも気軽にお立ち寄りください。

