平井明範 院長の独自取材記事
相愛動物病院
(台東区/田原町駅)
最終更新日: 2023/01/22
銀座線田原町駅から徒歩約2分、各線浅草駅からも徒歩5分圏内。下町情緒あふれる浅草の中心地から程近い、雷門通り沿いにある「相愛動物病院」は開業して27年の、地域に根ざした動物病院である。院長の平井明範先生は、下町のホームドクターとして地域の人々から親しまれている存在。浅草育ちならでは、人情味あふれる話しぶりが印象的な先生だ。クリニックにはトリミングサロンやペットホテルを併設し、近くには犬猫の食事、日用品、ケア用品を専門とするショップも経営。ペットとの生活をトータルでサポートしている。今回のインタビューでは、平井先生に強く影響を与えた一人の開業医との出会いから、クリニックの診療内容まで幅広くお話を伺った。 (取材日2014年6月20日)
下町の信頼されるホームドクターをめざして
クリニックの特徴を教えてください。
当院は「町医者」であり続けることがテーマです。診療動物は犬猫で、一次病院としてどんな病気でも幅広く診察しますが、自分の守備範囲を見間違えないように気をつけています。例えば白内障の手術が必要だと判断したら、この近くにある獣医眼科専門医がいる動物病院を紹介しています。高度医療を受けたほうがよいと思ったら、飼い主さんの意向をうかがって、大学病院や高度医療センターなどの紹介をしています。夜間に対応してくれる施設も積極的に探すようにしています。自分のできる範囲で最善を尽くし、専門的な検査や治療が必要であるなら専門機関へと紹介することが、一次病院の務めだと思っています。高度な医療が可能になるにつれ、一次病院のあり方も変わってきていると思いますが、その時代のニーズに合わせて、一番求められるクリニックをめざすようにしています。
獣医師をめざしたきっかけは?
子どもの頃から生物が好きで、家ではずっと動物を飼っていました。犬も鳥もハムスターも飼ったことがあり、ヘビ以外の子どもが好きそうな動物は大体飼いましたね。小学校の頃には理科実験クラブ、中高時代は生物部に所属し、生物全般に興味がありました。その流れで高校3年生の進路選択で獣医学部を受けることになり、大学に進学後は小動物を専門に選択しました。小動物の臨床を選んだ理由は、私が浅草出身であるため、地元で仕事をするには小動物の臨床がベストだと思ったからです。
研修生時代の心に残ったエピソードを教えてください。
卒業後は母校の麻布大学の家畜病院で2年間、研究生として修行をしていました。大学病院は知識や技術を学ぶのに恵まれた環境だったため、自分の技能に対して自惚れやすく、生意気になっていた時期でした。そんな時、大学時代の恩師の勧めで、週に一度開業医の動物病院へ研修に行くことになりました。そこで出会った藤本先生は人間的にとてもすばらしく、さまざまな部分で感銘を受けました。先生から、獣医師としての心がけを綴った手紙を頂いたのですが、その内容を要約するとまず「初心忘れるべからず」という意味が込められています。子どもの頃に犬や猫など小動物を拾ってきて、必死に親に頼んで飼うことを許してもらったり、縁日で売られていたヒヨコやうさぎを買ってもらったけど、すぐに死なせてしまった。そういった記憶は誰もが持っていると思います。手紙には動物を愛した気持ちや、死んでしまって悲しかった気持ちが「初心」であると書かれています。あともうひとつは「獣医師が病気やケガを治したと思ってはいけない」という内容です。動物が本来持っている自然治癒力が根本にあり、それを獣医師が助けているにすぎないのです。藤本先生の言葉の中から、「この病院のすべての患者は治療を平等に受ける権利がある」「医療とは患者自身の治癒力を引き出すことである」という2つの言葉を院内に提示しています。
すべての患者を平等に治療することがポリシー
「相愛動物病院」のクリニック名の由来を教えてください。
「相愛」は聖書のヨハネ伝からの言葉ですが、幼稚園の頃からキリスト教関係の本を読んだりする中で少しずつ意味を知って、いい言葉だなと思っていました。解釈はいろいろあると思いますが、当院ではすべての生命に差別のない愛情を示し、平等に治療をする義務があると考えて、この言葉をクリニック名にしました。私を含め宗教色は一切ないクリニックですが、スタッフ一同「相愛」という名に恥じないよう、誰でも気軽に訪れることのできるアットホームな雰囲気作りを心がけています。
ホテルやトリミングサロンも併設しているそうですね。
ホテルも美容も、動物病院が行っているため、より健康に留意した対応ができ、衛生面にも気を遣っています。預かったペットが皮膚病を患っていたり、調子が悪そうな時には、早めに獣医師がチェックをします。飼い主さんからは「入院中のペットと同じ空間や近くのゲージで過ごすのは不安だ」という声をいただきますが、当院では入院とホテル利用のケージは部屋を別にしています。感染症の疑いがあるペットはさらに隔離室を用意し、滅菌・消毒処理には細心の注意を払っています。預かり中は食欲や排尿・排便などの健康状態を確認するため、ケージは1頭につき1つの完全個室となっています。ケージが苦手なペットにはゲージフリーのお部屋タイプの個室も用意しています。トリミング時も皮膚の状態や耳の汚れ、しこりの有無など全身のチェックを行い、その個体に合ったシャンプーを使用するようにしています。皮膚や耳のトラブルを発見した際は飼い主さんに報告し、必要に応じて診察を受けていただくため、病気の早期発見・治療に結びつきやすくなります。
「相愛ペットケアルーム」も経営されているそうですが?
もともと私の両親が一時的に経営していたペットショップを、4〜5年ほど前から「相愛ペットケアルーム」と名称を変えて経営しています。ペットフードや日用品、ケア用品、介護用品を専門とするショップです。ペットフードは獣医師の立場から推奨できる動物病院専売品のプレミアムドッグフードやキャットフード、アレルギー対応食、着色料や合成保存料無添加の安全なフードなどを扱っています。無添加、低カロリー、低アレルギーのおやつも取りそろえています。店内には体重計や体脂肪計があり、気軽にチェックすることができますので、ぜひペット同伴でお店に遊びに来てください。
予防医療にも力を入れ、飼い主のよき相談相手となりたい
予防医療の大切さについて教えてください。
当院は一般診療に加え、予防医療にも力を入れています。混合ワクチン、狂犬病予防注射、フィラリア予防は毎年行ってほしいですね。あとは食事管理が大切になってきます。そのペットの体質に合ったフードを適量与えることが重要です。相性のよいフードを見つけるためにも、獣医師と相談して決めたほうがよいと思います。病気を早期発見するために、健康診断も年齢に合わせて行っておくのが理想的です。5歳未満であれば調子が悪くなった時に病院で検査を受けるようにしてほしいですが、5〜10歳の中年期は体調が悪くなくても年1回は健康診断を受けてほしいです。10歳を過ぎたら毎年必ず健康診断を受けるようにしてください。まずはレントゲンと血液検査を行って、異常が見つかった場合はそのペットに合わせて次の検査を勧めています。
先生の趣味や健康法を教えてください。
唯一自慢できる趣味が、クロダイ釣りです。20年以上前からの趣味で、春夏秋は週1ペースで釣りに行っています。一昨日も木更津に行ってきました。クロダイは食用にもなりますが、私の場合はキャッチ&リリースがポリシーです。大きなクロダイがたくさん釣れると嬉しくなりますね。クロダイ釣りの大会に何度か参加したこともあり、院内に飾っているトロフィーは、すべて大会で入賞した時のものです。優勝した時は52cmくらいの大きなクロダイを釣りました。今はなるべくスポーツジムに行って運動をするようにし、健康管理をしています。
読者に向けて一言お願いします。
私は患者さんに対して「できる範囲の中で精いっぱいやればいいんだよ」と言うようにしています。現在は高度医療が進んでいますが、その分治療費も高額になってしまいます。飼い主さんの中には、もっとお金をかけて治してあげるべきでは、と葛藤される方もいます。私は飼い主さんが精いっぱい悩んで選択したのであれば、どんな治療法であれ正解だと思います。最近は動物医療も情報化が進んでおり、選択肢が広がって悩んでしまうことが多いです。私はペットを飼うなら、相談相手をたくさん持つべきだと思います。獣医師やトリマー、ペットショップの店員、犬友だちなど同じ気持ちを理解しあえる仲間を増やして意見交換をし、知識が偏らないように心がけてほしいですね。インターネットから得る知識もあったほうがいいと思いますが、それだけに偏るのはよくないです。たくさんの情報の中から、ご自身でよいと思ったものを選択していってほしいです。そして、私は相談相手の一人として少しでも飼い主さんの役に立てたら光栄です。