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工藤圭介 副院長の独自取材記事
工藤動物病院
(中野区/東中野駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR東中野駅から徒歩でおよそ6分の場所に「工藤動物病院」はある。マンションが立ち並ぶ道路沿いに位置し、シックなレンガ調の外観が魅力的だ。1971年に開業した40年の歴史を持つ動物病院である。高度な治療を受けられる街の動物病院として、中野区周辺の飼い主から高い信頼を集める。また、院長である工藤荘六先生は動物眼科治療の先駆者であり、白内障手術の名医として知られ、全国から目を患った犬が来院する病院でもある。一般診療から専門診療まで数名の獣医師でチームを組み診療を行っているが、そのリーダーとなるのが院長先生のご子息である工藤圭介副院長。ご自身も無類の動物好きであり、飼い主の気持ちを汲んだ診療をしてくれる先生である。病院の専門診療や特色、獣医師を目指されたきっかけなどのお話を工藤副院長から伺った。 (取材日2013年8月9日)
皮膚疾患予防は飼い主のケアがあればこそ
先生のご専門は皮膚科と伺いましたが、来院する犬や猫の疾患はどのようなものが多いのでしょうか?
1番はノミやダニなどによる皮膚炎ですね。人だったらあまり掻かないようにできますが、自分では掻かないようにすることができませんし、動物の肌はデリケートですので、放っておくとひどくなってしまいます。ノミやダニが皮膚炎の原因となるということは、よくご存知の飼い主さんも多いのですが、蚊もそうなんです。夏などの暑い時期は特に多いですね。また、室内飼いがほとんどですから、温度差による皮膚疾患もあります。特に夏場は散歩から帰って、室温が低すぎると血管が急激に収縮して毛が抜けてしまったり、また逆に暑さによるストレスでかゆみが生じる場合もありますので注意が必要です。
飼い主さんのケアが欠かせないのですね。
室内であれば、人間と同じように蚊取り線香などでノミ、ダニ、蚊を寄せ付けないような環境を、散歩や外で遊ばせている時に心配な場合は、駆除スプレーなどを使用すると効果的です。そして、室内の温度調整ですね。そういったケアは非常に大切です。また、皮膚疾患になってしまった場合でも、飼い主さんの協力が欠かせません。というのも、当院ではまず、投薬や注射で治療を行い、比較的症状が安定してくれば、飼い主さんにその子に合わせたシャンプーをお伝えして、ご自宅での継続的な活用をお願いするという治療方針をとっています。皮膚疾患用の軟膏薬もあるのですが、ペットへ塗布するのは量の加減が難しく、多すぎれば副作用も懸念されますし、患部をなめてしまえば悪化してしまう場合もあります。疾患で荒れた肌にはシャンプーは効果的なのですが、これがなかなか根気がいることなんですね。ただ、飼い主さんご自身がしてあげるシャンプーで治療効果を実感できるので、その子の症状が治るにつれて喜んでくださる方が多いですね。
病院の特色を教えてください。
当院では予防接種や健康健診、避妊・去勢などの一般診療に加え、眼科診療、皮膚科診療、キズ外来診療、循環器内科診療、消化器内科診療の専門科目を設けています。院長は眼科を、私の担当は皮膚科とキズ外来です。循環器内科、消化器内科については定期的に専門医を招いて診療にあたってもらっています。特色というと、このように街の動物病院で、幅広い専門的な診療を提供できることですね。ただ、専門性に重きを置いているというわけでもなくて、例えば爪切りから難治性の疾患まで1ヵ所の動物病院で済むのであれば、何より飼い主さんが安心できるでしょうし、そういう病院を目指してきた結果だと思います。ペットの日常のお手伝いも、病気を治療することも、どちらも大切な動物たちの命に携わることだと思いますし、まんべんなく診療できる体制を整えていくというのがポリシーですね。
気軽に通えながらも、眼科診療をはじめ高度治療が受けられる動物病院
間口を広くもちながらも専門性を兼ね備えた動物病院なのですね。
今まさにペットを動物病院へ連れて行こうとしている飼い主さんが、悩まれるようではいけませんので、受け入れられる態勢を広くもつことは大切なことだと思います。私自身も昔から犬を飼っていますし、病気のペットを抱えて心配されている飼い主さんの気持ちも分かります。また、これは時代の変化による部分が大きいですが、ホームページも飼い主さんが分かりやすいような工夫を心がけています。現代はインターネット社会ですから、当然、動物病院をネットで探す方も多いでしょうし、宣伝という以上にホームページが果たす役割は大きいと感じています。なかなかお忙しい方もいらっしゃいますし、飼い主さんもストレスなく来ていただければとの願いから、私を含め当院で働く獣医師のスケジュールや現在の混み状況も分かるようにリアルタイムでホームページ上に掲載してあります。時代の変遷の中で、変わらないものや古き良きところは残す一方で、飼い主さんのニーズに応えるべく、新しい試みも取り入れて対応していく医院でありたいと思っています。
院長であり、父上でもあられる工藤荘六先生は、動物眼科の日本に11人しかいない眼科専門医(ディプロマ)であると伺いました。
そうです。動物眼科、特に犬の白内障手術の名医として、広く有名になりました。私は皮膚科を専門としていますが、院長の診療に対する姿勢から影響を受ける部分が数多くあります。犬や猫の目の疾患というのは多く、特に犬は白内障になる確率は高いです。これは遺伝的な要素も大きく、もちろん要素をもったすべての犬が発症するわけではないのですが、飼い主さんが日々気をつけていても、患ってしまう場合も少なくありません。また、白内障を発症しやすい犬種というのもあります。動物眼科を専門に診断から治療できるところはまだ少ないですので、飼い主さんのお役に立てているのではないかと感じています。
全国から目を患った患者さんが来院されるのではないでしょうか?
北から南まで、ですね。白内障の手術だったのですが、この前は種子島からの患者さんの治療を行いました。遺伝、加齢、その他の様々な要素でも白内障というのは患いやすい病気なんです。本当は未然に防げれば良いのですが現状では、なってからどういった治療をしていくかに重点をおくのが、大切だと思います。当院では父ともう1人、眼科診療を行える獣医師もいますので、動物の眼病に対して、リスクを含めたまんべんのない説明と治療が行える体制を整え診療にあたっています。これは当院の強みでもありますね。
ペットと暮らすということは、命を預かるということ
獣医師を目指されたきっかけを教えてください。
基本的には動物が好きなことですね。獣医師の家庭に生まれ、常に動物に囲まれていたというのが大きいのではないでしょうか。ただ、獣医師になろうと決めたのは小さいころのことではないんです。実は大の電車好きで、子どものころはずっと運転手になりたいと思っていたんです。ですが高校2年生のときに進路や自分の将来のこと、自分が本当に向いている職業はなんだろうと考えたときに、獣医師の道に進むことを決めました。獣医師を目指す後押しに恵まれていたんだと思います。実家で毎日ペットの世話をし、生活を共にしてきたというのもありますし、やはり父の影響もあって、憧れていた部分もあるんだと思うんです。大学は、麻布大学獣医学科を選び、進学しました。卒業後は代診で広島の動物病院に勤務し、ASどうぶつ皮膚病センターで研修を、そして日本生命大学大学院で学び修了後、当院に従事しました。
休日はどのようにお過ごしになられていますか?
1歳9ヵ月になる子どもがいるので、ひたすら休日はイクメンです(笑)。遊園地やプールに家族で出かけたり、電車を見に行ったりしています。大きくなったら旅行に連れて遊びに行きたいですね。子どもの成長を肌で感じるというのは、本当に嬉しいもので、私自身の癒しにもなっています。
最後に、ペットを飼うドクターズファイルの読者にメッセージをお願いします。
まず、毎日の生活でちょっとした異変にも、気づいてあげられるようにしてもらいたいです。体調が悪ければ、しゃべることができなくても、何かしらのSOSは発しています。ゴハンを食べる量や水を飲む量が少なかったり、遊ぶのを嫌がったり。そういったサインにいち早く察することが、予防にもなりますし、病気からペットを守ります。そして、異変を見つけたら、できるだけすぐに病院へ連れて行くようにしてほしいです。もう少し様子を見ようというのが、危険な状態を招くこともあります。元気なうちから、自宅の近くで気軽に通える動物病院を見つけておくのも良いことです。そして、動物を飼うということは、その子の命を預かるということ。飼い主さんに責任が発生するということです。一緒に暮らすためには、当然お金もかかります。ペットショップなどに行けば、可愛いらしい子たちがたくさんいます。でも、やみくもに可愛いからというのではなく、共に生活していくことを自覚した上で迎えてあげてください。負担なく、そして末永く、ペットと飼い主さんがしあわせに暮らせるというのが何よりですから。