大谷 英雄 院長の独自取材記事

おおたに動物病院
(三鷹市/井の頭公園駅)
最終更新日: 2023/12/14

新川の住宅街にある「おおたに動物病院」。人見街道沿いの交差点にあり、大きな黄色い看板が掲げられているのでわかりやすい。看板に描かれたイラストそのままの親しみやすい笑顔で迎えてくれるのが大谷英雄院長だ。この町で約30年にわたり犬、猫、ハムスター、うさぎなどの小さな動物たちの健康を守ってきた。地域密着型の動物病院として幅広い診療にあたりながら、必要があれば二次診療の情報も提供している。大事にしているのは、長年の経験を生かし、飼い主の要望にできるだけ沿った診療を提供すること。「動物は喋りません。だからこそよく見てあげてください」と言う大谷院長に、診療にかける思いなどを詳しく聞いた。(取材日2023年11月28日)
救えなかった飼い犬をきっかけに獣医師の道へ
まず、獣医師をめざしたきっかけを教えてください。

子どもの頃から動物が好きでした。家にはいつも猫や犬がいましたが、昭和40年代の田舎ですからほぼ放し飼いでしたね。特に忘れられないのが高校受験が終わった日に亡くなってしまった愛犬です。数日前から何となく具合が悪そうだなと気になっていましたが、動物病院に連れていった時はもう手の施しようがありませんでした。まだ2歳だったのですが犬ジステンパーであまりに突然のことで……一晩中泣き明かしましたね。そんな私の姿を見ていた父が進路を決めるにあたって、「獣医師はどうだ」と背中を押してくれました。そうとはいっても、志望していた鳥取大学農学部獣医学科は40倍という狭き門。受験日にも「この教室でたった1人しか合格しないのだな」としみじみ思ったのを覚えています。担任にも「来年なら合格できる」といわれ浪人覚悟で臨みましたが現役合格できたのは幸運でした。
大学時代はどのようにお過ごしでしたか?
病理学教室で研究をする傍ら、ラグビー部にも所属して充実した毎日でしたね。ただ、練習で疲れて研究室で居眠りしてしまうこともありまして、助教授に大目玉をくらい勉強一本に絞りました。卒業論文に選んだのはニワトリの骨の形成がカルシウム欠乏症とどう関連しているかというテーマです。地方の獣医学部なので、牛、豚、ニワトリなどの産業動物について学ぶことが多かったですね。その後、東京の日本獣医生命科学大学を見学した時、「都会では小動物がメインなのだな」とカルチャーショックでした。鳥取大学の卒業生は私のように小動物対象の開業医になるのは少数派で、公務員になるか製薬会社などの企業に就職する人がほとんどでした。
開業に至るまでのご経歴をお聞かせください。

やはり、獣医師になったきっかけは飼い犬でしたし、「小動物の臨床をしたい」という思いを強く持っていました。そんな時、先輩から東京の動物病院を紹介され、中古で買ったバイクでツーリングがてら上京しました。1泊2日の小旅行でしたが3月なので寒かったですね。最初は動物を抑える保定をしているか掃除をしているかの、見習いからのスタートでした。やがて、週2日の宿直もするようになりましたが動物の救急は人とはだいぶ違います。本当の急患は10%あるかないかで、ほとんどが不安になった飼い主からの相談事なんですよ。世田谷区の給田にあった当時としては大きな動物病院で獣医師も何人かいました。結局、17年間勤めて最後の3年は院長も任せてもらいましたが、経営についても学んだ後にこちらに開業しました。
地域に密着しながら動物たちの健康を守って約30年
どのような動物を診ることが多いですか?

犬、猫、ハムスター、うさぎなどを診ています。連れていらっしゃるのはほとんどが近くにお住まいの方ですね。約30年前に開業した頃はシベリアンハスキーなどの大型犬もいましたがどんどん減って、最近はチワワなどの小型犬が多いです。開業当初からずっとかかりつけ医として通ってくださっている飼い主さんもいますね。動物は寿命が短いので代替わりするのを何度か見届けてきました。その他に鳥類なども相談に来られる方もいらっしゃいますが、鳥類などは専門としている他院をご案内しています。私だけのところに抱え込まず、飼い主さんがより良い治療を選べる機会をつくらなければと思っています。
こちらではどんな治療が受けられますか?
地域に密着して幅広い診療を心がけています。避妊治療、予防接種、骨折の手術など基本的なことは一通り対応していますね。また、年に2回ほど、血液検査、生化学検査、歯石除去をセットで行うメニューを提供しています。エックス線検査も必要ありと判断される場合にはプラスします。ガス麻酔、手術前の抗生物質・消炎剤の注射の併用も可能です。歯石は口臭や歯肉炎の原因になるだけではなく、心臓疾患、腎臓疾患を悪化させる原因にもなるので、定期的に除去することをお勧めします。また、皮膚のできものに関しても、針を刺して細胞を採取し異常がなければ当院で切除可能です。悪性腫瘍などが見つかった場合は、腫瘍専門の動物病院や二次診療の動物病院などを飼い主さんのご希望に応じて紹介することもできます。
診療にあたって大切にしていることは何ですか。

飼い主さんのお話をよく聞き、しっかりと説明することを大切にしています。現在の病状に対してどのような治療法があるのか選択肢はできるだけ多く提示するようにしています。それぞれの治療法のコスト、メリット、デメリット、どのような結果が期待できるのかも詳しくお話しして、最終的に選択するのは飼い主さんです。動物たちの心のケアをしてくれるベテランスタッフがいるので、私は治療に専念できるので助かっています。当院は地域密着型の普通の動物病院で、特定の動物や疾患に特化しているわけではありません。最近は専門的な動物病院も増えていますから、飼い主さんの選択の幅を広げるためにも他院の情報をお伝えすることも少なくないですね。
動物の高齢化に伴う悩みにも真摯に取り組みたい
今後の展望についてお聞かせください。

自分自身が年齢を重ねてきて、生き物は自然な寿命を全うすればそれで十分なのではないかと思うようになりました。これくらい年を取ると自分の最期をイメージしたりするものなんですよ。私は体中に管をつけられて家族に苦労をかけ、「早くどうにかなってくれないかな」と思われるのは嫌です。できれば、私は野良猫のように一匹で丸まって静かに逝きたいですし延命治療はしてほしくないと思っています。動物も高齢になればさまざまな問題が発生します。もし、救命が困難とわかった場合はしっかりとお伝えした上で、残された時間をどう過ごさせてあげるのか、飼い主さんが後悔のないよう提案していきたいと思っています。
お忙しい毎日ですがリフレッシュ法などはありますか。
40代後半の頃、「登れ!」と突然ひらめいて、ボルダリングを始めました。当時は立派な肥満体型で「このままではいけない」という天の声だったのかもしれません(笑)。おかげで減量に成功し、もっと体を絞ろうと次はランニングに挑戦。ランニング・ハイを経験したことで、どんどん走る時間が長くなりとうとう最後は100kmを12時間で挑むウルトラマラソンに没頭していました。60歳を機にそちらは引退し、今はまたボルダリングに戻りました。すっかりボルダリング施設も増えて驚いていますが、あちこちの個性を楽しんでいます。結局、登るとか走るとか、修行系のことが好きなんでしょう。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

動物は喋らないので、体調を崩していないか気をつけてあげてください。昔のような外飼いは少なくなり、ほとんどが室内飼いなので動物を日々見ていることは見ているでしょう。でも、具合が悪そうにしていても、「もう年だからね」などとスルーしてしまう人が結構いらっしゃいます。少しでも異変があったら、様子を見ずに一度連れてきてください。痛みを取るための飲み薬、注射などの提案もできますが、説明を聞いたらその治療を受けなければいけないということはなく、最終的に判断していただくのは飼い主さんです。飼い主さんのご要望をどんなことでもお話ししていただけるようお待ちしています。軽い心配から深刻なお悩みまで、気兼ねせずに相談してください。