飯野 夏世 院長の独自取材記事
アメリカン動物病院
(調布市/西調布駅)
最終更新日: 2023/01/22

「アメリカン動物医院」が生まれたのは、1964年。東京オリンピックが開催された年に、現院長の飯野夏世先生の父である沢辺獣医師が開院した。この地は、京王線の西調布駅から徒歩8分、新甲州街道沿い、かつては米軍基地だったというスタジアムの斜め向かいにある。当時、米軍の飼い主がペットの犬や猫を連れてきたことが「アメリカン」という名前の由来だという。クリニックの外からも待合室からも見えるガラス張りの診察室が明るく清潔なイメージ。現院長は優しい女性の先生だが、院長含めて獣医師が3人と動物看護士が3人という手厚いスタッフで診療に臨んでいる。待合室の奥は、本格的な設備の手術室。その奥には入院施設もある。その診療の実際を詳しく聞いた。 (取材日2017年1月6日)
生まれた時から最期まで、動物と飼い主に寄り沿う
50年の歴史があるのですね。どんな飼い主さんがいらっしゃいますか?

私の父が、米国獣医大学で学んで帰国し、開院したのが50年前。私は二代目ですが、獣医大学の同級生の夫との結婚を機に一緒に引き継ぎ、今年で24年になります。父が開院した頃はまだ、犬や猫に医療を施すことは少なかったと思いますが、米軍住宅やアメリカンスクールの飼い主さんが多く通院されていたそうです。今では米軍住宅はスタジアムに変わりましたが、アメリカンスクールの方は今も先生方や生徒さんが来院してくださっています。また、私が長男を出産した頃、18年前にペットブームが来たことを肌で感じました。この頃の飼い主さんが、今もずっといらしてくださっていますが、当時赤ちゃんだった犬や猫も、今ではかなりの高齢です。高齢化に伴うさまざまな疾病の治療、終末医療も重要なテーマとして取り組む必要があります。また、現在は犬や猫だけでなく、うさぎ、フェレット、モルモット、ハムスター、小鳥なども増えていますね。
高齢化に対応してどんな治療をしていますか?
私が医院を引き継いだ24年前は、15歳の犬ともなれば、とても長生きなほうで表彰されるほどでした。それが今では、18歳くらいの子は結構いますし、当院には22歳の猫も通院しています。長寿になってきたと思いますね。食べなくなった、お腹をこわした、明らかに元気がない、いつもと何か違う、いろいろな理由で来院されますが、年だからもうしょうがないとは限らず、病気が原因のこともあります。今は血液検査、レントゲン、エコー、内視鏡などいろんな検査ができる時代になりました。その子の体力、性格にもよりますが、元気になって明るくその子らしさが出てくるとうれしいですね。また、食べ物や生活スタイルの相談に乗ったりアドバイスをすることもあります。
往診に力を注いでいるのはなぜですか?

赤ちゃんの頃から診てきた子たちがいよいよ高齢になり、痛かったり苦しかったりする時に、通院がかわいそうな場合があります。そんな時は往診してあげて、食べられるものを考えてあげたり、できる限りのことをやっています。当院で送迎をすることもあります。これは、終末医療の一環でもあって、大好きなご家族のそばに最期まで一緒にいられるように、良い時間を過ごせるように、お手伝いをさせていただきたいと考えています。そのために、毎日12:00~16:00(日曜日を除く)は往診と手術、時間のかかる検査の時間にしてあります。往診は時間の関係上、調布、府中、三鷹、武蔵野の範囲を目安に行っています。
十匹十色。動物のそれぞれの性格に合わせて診療
診療の中で大切にされているのは、どんなことですか?

なるべくゆっくり飼い主さんとお話することを大切にしています。特にご自宅でのペットの様子を聞くことでしょうか。動物も子どもと同じ。どの子もひとりひとり性格が違いますし、それぞれのかわいらしさがありますよね。そこをよく知っていれば、その子に合った接し方ができます。例えば、人見知りの子と、ストレートになついてくる子では、診療中の対応は全く違います。本当にいろいろですよ。診察台の上で、こわがってガタガタ震える子もいれば、お家の方がリードを間違って外してしまった隙に、勝手に当院に遊びに来てしまった子もいます。その子を知ることで、その子に一番良い治療ができると考えています。獣医師や看護師が飼い主さんと楽しそうに話をしていると、それだけで動物も安心しているのがわかります。ゆっくり話せる。それが地域の動物病院の良いところだと思います。
3名の獣医師がいるのですね。それぞれの得意分野や診療の特徴を教えてください、
3名の獣医師がそれぞれ得意分野を生かして診療に取り組んでいます。私は内科、夫は外科を中心に担当しています。もう一人の獣医師も外科出身ですが、帰国子女でもあり英語対応が多い当院では頼りになります。夫のほうは、現在も母校の研究室で学生実習講師を受け持ったり、常に獣医学の進歩に触れています。また、飼い主さんにさまざまな選択肢を提案できるように設備や技術を準備しています。3人でチームを組んで治療に当たることもあります。さらに専門性の高い動物や高度医療の場合は、大学病院や専門の医療センターへのご紹介もしています。いずれにしても、当院のモットーは「動物たちにやさしい診療」ですから、飼い主さんと一緒にその子にとって最もやさしい治療を考えていきます。
入院施設など設備も充実していますね。

看護師がトリミングの資格も持っていますので、院内でトリミングすることもできます。ただし、介護の一環だったり、また病気のためいつものトリミングサロンでお断りされた動物たちのシャンプーやトリミングになります。入院に関しては、クリニックの二階が自宅になっていますので、24時間モニターを付けて、夜などいつでも診に来れる体制になっています。酸素部屋もありますし、散歩に出られるくらい回復した子には、スタッフが様子を見ながら外に連れていくなどのケアもしています。
動物を飼うすばらしさを伝えたい
ご自宅で飼っている動物と休日の過ごし方を教えてください。

私は小さい頃からたくさんの動物に囲まれて育ちました。父はお金を出して動物を買うということはしてくれなかったので、全部捨てられた猫とか、保健所からもらってきた動物たちでしたが。現在の我が家でも、同じようにもらってきた動物ばかり飼っています。今は、犬、猫、鳥、カメ、ハムスター、熱帯魚がいますね。休日は、高校生の息子とは海釣りに、中学生の娘とはおいしいものを食べに行くのが楽しみです。夫はセミナーや勉強会に行っています。私も子どもたちが大きくなって保護者会なども少なくなってきたので、勉強会などの参加も増やしていけると思います。
お父さまと同じ獣医師になろうと決意したのは、なぜですか?
高校3年生の時に、飼っていた犬ががんになってしまったんです。手術もしたんですが、痛みがひどくて、父は最終的に尊厳死を選びました。その時の私には、正直それが良いことだと思えなかった。その判断には反対でした。でも、亡くなった後、父がお墓の前で涙を流している姿を見て思ったんです。父は本当に一生懸命「動物にとって何がベストか」を考えていたんだと。その時、私も父のように獣医になって、動物にとって何が一番いいことなのか考えていきたいと思いました。今でも、診療の中で飼い主さんと相談しながら考えるのはその事です。その子にとって、治療をするのが良いのか、しないのが良いのか。するべき時はする。すべきでない時はしない。飼い主さんにもできるだけ幅広い選択肢を提案し「何がベスト」か毎日考えています。
読者のメッセージをお願いします。
動物のいる家は、やっぱり動物の話題が多くなりますよね。かわいい写真が撮れたら家族内のSNSで回したりして。今、社会は複雑だったり、ご近所づきあいも少ないですが、動物を飼っている皆さんは、和みや優しさなどが動物を通して伝わる、ということを感じていらっしゃると思います。その動物を飼うすばらしさをぜひ、飼っていない皆さんにも伝えていただけたら、と思います。