原田 順 院長の独自取材記事
マウ動物病院
(練馬区/豊島園駅)
最終更新日: 2023/01/22

西武池袋線・大江戸線の豊島園駅から10分ほど歩くと、オレンジイエローの外壁と三角屋根が一際目を引く「マウ動物病院」が姿を現わす。大きな窓から外光を取り入れた院内は明るく、ゆったりした広さの待合室はリラックスできる空間をつくり出している。1993年の開業以来、院長を務めている原田順先生は一方的な決めつけや押し付けを嫌い、それぞれの個性に合った治療を心がけているそうだ。気軽に立ち寄れる動物病院にしたいと抱負を語る原田院長に、開業までの経緯から治療の方針、今後の展望など、いろいろな話を聞いた。 (取材日2017年5月16日)
飼い主に寄り添う診療を心がける
まず開業までの経緯を教えてください。

北里大学獣医畜産学部(現・獣医学部)獣医学科を卒業して、3年間横浜の動物病院に勤務した後、1993年に開業しました。獣医師になったのは、母方の家系に医師が多かったので、医学に興味を持ったのがきっかけです。中学生の頃から犬を飼っていたこともあり、動物が好きだったので、最終的に獣医師への道を選びました。開業にあたってこの場所を選んだのは、実家の隣だったからです。小さい頃からここで育っていますから、いらした方から「小さい頃はこうだったわね〜」なんて言われて、照れくさい思いをしたこともありますよ。
貴院での診療について何か特徴はありますか?
専門的な分野などは、特にありません。地域の動物病院として、幅広く診療をしています。犬・猫専門で、できるだけ急患にも対応しています。性格的にあまり押しが強いほうではないこともあり、決めつけたり押し付けるようなことはしたくないと思っています。獣医師と飼い主はお互いにリスペクトし合える関係でいたいのです。ですから必要なことを説明したら、「どうする?」と飼い主さんに聞きながら治療を進めることが多いですね。それが良いのかどうかはわかりませんが、現在来てくださる方は、そういったところも含めて気に入ってくれているのではないかと思っています。
最近多い主訴や症状などはありますか?

季節によって多い症状はありますね。例えば冬場は風邪の訴えが多かったり、夏になると皮膚炎の症状が多くなったり。皮膚については、普段から動物の皮膚の状態に気を付けていてほしいですね。皮膚炎を起こす子って、アトピー性皮膚炎やアレルギーという原因がひとつありますから、まずそういった可能性があるかどうか気を付けていただければと思います。あと犬の脂漏症もけっこう多いですが、それだけならサプリメントで防げることも少なくないんです。ほかにはイボができやすい体質の子もいます。そういった動物たちの体質の特徴を把握しておくことも大切ですね。
飼い主と同じように、動物にもそれぞれ個性がある
動物の健康管理についてはどんなことに気を付ければいいでしょうか?

ペットの体調は「元気、食欲、体重、便」のどれかに現われてきますから、日頃からその点には気を付けていてほしいですね。成長期には体重がどんどん増えていきますが、それを過ぎたらあまり変動しないはずなので、成長が止まっても増減する場合は何か問題があるのかもしれません。あとは毎日元気にしているか、食欲があるかどうか、便に変わった点はないかどうかなど。また、具合が悪くなった時は、どんな症状がいつ頃から始まり、どのような経過を辿ったかという情報も重要です。飼い主さんとしては、気付いたことは何でもいいですから、とにかく話していただきたいですね。事前に書きとめたメモなどがあるとすごく助かります。
犬のしつけについてのアドバイスなどもされていますか?
小犬が患者さんとして来た時に、健康としつけについてのポイントなどは伝えさせてもらっています。とはいっても「こうするといいよ」というぐらいのことですが。散歩については、一般的な情報をうのみにしてほしくないですね。例えば、一般論としてけっこう走らなければいけないとされている犬種でも、なかには散歩が嫌いな子もいるので、それならそれでいいんじゃないかと僕は思っているんですよ。犬にはとにかく運動させなければいけないと思われている方が多いですが、「本当にそうだろうか?」ということです。飼い主さんに一人ひとり個性があるように、犬たちにもそれぞれ個性がありますから。診療においてもそういったところがうまく引き出せればいいな、と思っています。
しつけに関して大事なことは何だとお考えですか?

おじいちゃん子、おばあちゃん子のようにしないということですね。かわいいからとなんでも許したりと、いい顔ばかり見せていると、いざという時に言うことを聞かなくなりますから。犬の世界は縦社会で、リーダーの言うことが絶対です。だから家の中でもリーダーが誰かということを教え込まないといけません。欲しがるままにご飯をあげていたら、相手に主導権を握られてしまいます。ご飯ができても必ず「待て」をさせ、許可を出してから食べさせるなどして、命令系統をはっきりさせることが大事です。なかなかいう事を聞かない子は、仰向けにしておとなしくなるまで押さえ込んでしまうのが効果的です。押さえると必死に逃げようとしますが、その時に解放してしまうと「嫌がれば止めてくれる」と覚えてしまうと、次に何か嫌なことをされそうになると、威嚇したり噛みつくこともありますから。普段の遊びの中で、そういったことを教えていくことも大事ですね。
気軽に立ち寄ってもらえる動物病院にしたい
ペットの健康に関する情報はインターネット上にも溢れていますが、どのように思われますか?

やはり重要なのは情報源の信頼性ですね。専門家の意見なのか、素人さんの間での情報なのか。専門家が言うことだとしても、それがすべての子に当てはまるわけではありません。だから安易に比べないでいただきたいですね。先ほども言ったように動物にもそれぞれ個性もあり、個体差も大きいですから。例えば同じ犬種を2匹飼っている場合、親子や兄弟なら体質が似ていることはありますが、血統が違えばまるっきり違うことも多いんです。1匹がこうだからもう1匹もそうだろう、などと決めつけないでほしいですね。
獣医師として発信したいことはありますか?
僕は練馬区獣医師会に所属しておりまして、そこで災害時の同行避難について、飼い主さんに正しい認識を持ってもらうための啓発活動を行っています。最近はペット同伴の避難訓練も増えてきていますが、避難所まで一緒に避難しても、必ずしもそこで一緒に暮らせるわけではないということは、知っておいてもらわないといけません。あとは避難袋が家にあるといいと思います。いざとなった時にちゃんと使えるだろうか、という不安はありますが、獣医師会でそういったことを積極的に発信するようにしていて、今年も練馬区の防災フェスタにブースを出す予定になっています。
今後の展望や読者へのメッセージがあればお聞かせください。

軽い気持ちで立ち寄ってもらえるようなクリニックにしたいですね。動物病院というと、やはり治療費が高額という印象があったりして、受診をためらわれがちなようです。何もない時に来ていただいて全然構いません。普段から飼い主さんとコミュニケーションを取り合っていれば、何かあった時の判断材料にもできるので。散歩の途中などでもいいので、ぜひ気軽に足を運んでいただきたいと思います。