春日元美 院長の独自取材記事
さくら動物病院
(練馬区/下赤塚駅)
最終更新日: 2023/01/22
東京メトロ有楽町線「地下鉄赤塚駅」、東武東上線「下赤塚駅」から、ともに徒歩3分程の場所にある「さくら動物病院」。開業当初飼っていた犬の名前からつけたという医院名に、春日元美院長のペットを愛する気持ちが伝わってくる。そんな春日院長は、「ペットと飼い主が日常生活を送りやすいように治療を考えている」と話し、なるべく入院をさせずに通院で可能な治療計画を立ててくれたり、検査漬けにならないように触診や問診で状態を把握し、検査を最小限に抑えている。また、ペットの体にも優しい診療とされる東洋医学も取り入れており、整形分野における疼痛管理といった治療を行っている。ペットそれぞれに合った診療を、ペットと飼い主になるべく負担のかからないように提供してくれる心強い存在だ。そんな春日院長に、治療についてや開業の経緯、これからのことまでじっくり伺った。 (取材日2014年7月10日)
動物の自然治癒力を信じて最善の治療法を
まず、先生が力を入れている治療法について教えてください。
最初に研修医になった動物病院の院長先生が、診療の第一にすることは「動物の顔色を診ること」だと教えてくれました。当初、毛でおおわれた動物に顔色などあるのかと思っていましたが、経験を積むにしたがってだんだんその意味が分かるようになってきました。動物の目力や毛艶、勢いなど、動物の発する生気、エネルギーといったものを感じることができるようになりました。それによってこの子はちょっとした対症療法で力を貸してあげれば元気になるなとか、この子の場合はちゃんと諸検査をして病因を探らないと容易には治らないだろうと考えて診療を進めていきます。また、西洋医学だけでなく東洋医学に興味を持ち、動物の鍼灸治療について学びました。当院では、椎間板ヘルニア関節疾患などの疼痛緩和治療として、低出力レーザーにて各ツボに照射していくレーザー鍼治療を取り入れています。極力、検査漬けにしないように、また、動物にとって不安と痛みを与えないよう最善の治療を心がけています。
どんな動物の診療が得意ですか?
来院される動物は圧倒的に犬猫が多く、診療にも慣れている方だと思います。特に皮膚治療においては、たくさんの書籍からの知識や経験から得た技術などを駆使して、最小限の治療で済むように診断するようにしています。あとはうさぎやハムスターなどの小動物も来ますね。うさぎは歯牙疾患という歯が原因となる病気が多く見られます。食欲がない、あまり量を食べないなどの症状がある場合、不正咬合や噛み合わせが原因となっている場合が多いのです。そんな子には、歯を削ったり歯科治療を行い、咬合を調整していくことで改善していきます。
診療は予約制だそうですね。
診療はたっぷり時間をかけて行っていきたいと考えていますから、予約制にして30〜60分程の時間を確保しています。検査・診断はもちろん、診療の際にはしつけ指導も行っています。子どものうちからしっかりとしたしつけをすることで、「可愛いペット」だけでなく、「家族の一員」として共に過ごしていくことができるのです。その子その子でしつけ方法も変わってきますから、性格や癖、年齢などを十分把握した上で、飼い主さんもペットも楽しく暮らしていくためには、どんなしつけをするべきかを丁寧に指導いたします。また、しつけ方法や治療方針を決定するため、飼い主さんへの問診も時間をかけて行っていますので、次の診療を気にする必要のないように予約制を設けています。
飼い主と喜びを分かち合えることが何よりのやりがい
開業はずっとお考えだったのですか?
開業したい気持ちはずっとありましたが、結婚・出産としばらく休職していたため、なかなかタイミングがつかめずにいました。子どもが小学校にあがったことをきっかけに獣医師として復帰することになり、大変尊敬できる先生の下で5年ほど勤務医を経験しました。その後、子育てと両立していくため、そしてその先生の後押しもあり、自宅の近くで開業することを決意したのです。患者さんはこの地域に昔からお住まいの方が多く、近所のお友達のような感覚で通っていただいています。みなさんとても暖かく、恵まれた環境で開業することができたことに感謝しています。
開業して18年、率直な感想をお聞かせください。
私は動物が好きという気持ちだけで獣医師になり開業をしました。ですが、獣医師という仕事はそれだけでは勤まらないものなのだと実感する日々です。どんなに経験を積んでも、難しい病気にはずっと悩まされます。しかし、だからこそ常に勉強していきたいと思わせてくれる面白い仕事なのです。どんどん進化していく獣医学に取り残されないようにいつも上をめざしていきたいと考えています。開業医の最大の喜びは、ペットの症状が改善した時に一緒に喜びを分かち合えることだと思っています。それは、開業医としていつも近くで触れ合い、ペットや飼い主さんの気持ちを感じてきたからこそ、より強く飼い主さんの想いを理解することができるのだと私は思います。地域のみなさんの期待や信頼を裏切らないよう、私自身も医院も日進月歩していきたいですね。
飼い主やペットと接する上で気をつけていることはありますか?
飼い主さんとはしっかりお話し、今ペットがどんな状態なのかをこと細かくお伺いすること。治療のご説明は丁寧にわかりやすく行い、メリットやデメリットをご理解いただくこと。そして、ご納得いただき了解を得た上で治療に入っていくように心がけています。ペットと接する際には、まず怖がらせないことを第一に考えます。そのために、普段飼い主さんがどんな風に接しているのか、触っているのかをお伺いしています。触診は非常に大切だと考えていますから、嫌がらない子はなるべく撫でてあげて様子を見ています。触診をしてある程度の症状を把握することで、無駄な検査を省くことができますし、機械での検査で怖がらせなくて済むのです。
診療において大切にされていることは何ですか?
診療をする際に最も重要なのは、「症状の原因を根本から解明して提示すること」だと考えています。その上で、動物本来が持つ治癒力を最大限に生かした治療をサポートしていくことが獣医師の役目だと思うのです。なるべく入院しなくてもいい治療計画を立てることや、必要最低限の検査で済むように触診や問診を丁寧に行うこと、決して治療漬けにしないように自然治癒力を生かした診療を行っていくこと。そうして、飼い主さんやペットが毎日を笑って楽しく過ごせるように手助けしていきたいと考えています。
それぞれの「最善の治療方法」を探していきたい
先生が獣医師をめざされたきっかけは何ですか?
幼少期から犬を飼っていて、一番の遊び友達でした。物心ついた頃には、自然と犬に携われる仕事に就きたいと考えており、獣医師をめざしました。大学の授業はどれも新鮮で楽しかったですね。中でも病理学という授業には衝撃を受けました。病気の細胞を取り出し顕微鏡で原因を探っていくというものなのですが、臨床とは異なった視点から病気を解明していくことにとても感心し、必死に勉強したことを覚えています。今でも病理学に基づいた検査も行っているのですよ。特にがんなどの検査には適しており、良性や悪性を見分けることができるのです。
勤務医時代に学ばれたことをお教えください。
はじめに勤務した個人病院の先生の下では、動物への接し方や顔色の見方、臨床医としての心構えなど、獣医師としての基本を1から教えていただきましたね。その先生に大きな病院での研修を勧められ、2ヵ所の医院で研修させていただきました。大きな病院には当然難症例の動物が多く通っており、治療や手術にもたくさんの先生が携わっていました。そこで高いレベルのチーム医療を目の当たりにし、最新の医療機器とたくさんの獣医師がいればここまで治療ができるのだ、と感動したのです。当院は小さな個人病院ですので、ここでできない治療は信頼のおける大きな病院をご紹介しております。大きな病院でのチーム医療、そして個人病院での密着型治療、どちらも経験しメリットやデメリットを熟知しているからこそ、より良いタイミングを見極めた医療連携をご提供することができていると思います。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私は、飼い主さんによってペットに対する考え方や飼い方が違うように、最善の治療法も異なってくると考えています。そのため、ご要望をお伺いしながら最適な治療法を飼い主さんと一緒に探していきたいのです。だからこそ診療時間はたっぷりと設けていますし、時間を気にせず何でもお話ください。ちょっとした疑問や、しつけに関してわからないことは何でもご相談いただければと思っています。そういった何気ないことから症状を汲み取り、病気の早期発見につながる場合もございます。ペットと飼い主さんがより良い日常生活を送れるよう、身近でサポートしていける存在でありたいと考えています。