杉山観 院長の独自取材記事
杉山犬猫病院
(大田区/御嶽山駅)
最終更新日: 2023/01/22
東急池上線・御嶽山駅から徒歩3分。「杉山犬猫病院」は、環八通り沿いの西嶺町交差点 にある。飼い犬と共に成長するうちに、自然に獣医師になりたいと考えるようになったと語る杉山観(のぞむ)院長は、さわやかな笑顔と落ち着いた物腰の持ち主。都内の大きな動物病院や大学病院で、最先端の外科領域や画像診断の研究と臨床経験を積んだ後、なじみのある地元でじっくり腰を据えて街のかかりつけ医になりたいと、夫妻で開業した。近年の動物医療の高度化・専門化に対応しながら診療レベルを保つため、あえて診療対象を犬と猫に限定。休日診療や往診などきめ細かな対応をしながら、地域の獣医師や専門家との連携を深め、迅速に高度医療を受けられる環境を構築していきたいという。お散歩中につい立ち寄りたくなるような明るい院内で、日々の診療や街との関わりについてお話を聞いた。 (取材日2013年3月14日)
スピーディに専門的な医療を提供するために、あえて犬と猫の病院に
まず獣医師を志したきっかけを教えてください。
小学校2年の時、姉が修学旅行先から拾ってきた犬を家で飼い始めたのがきっかけといえると思います。それまでも動物が好きだったのですが、犬と一緒に仲よく育つうちに徐々に犬や猫の病気を治す獣医師になりたいと考えるようになりました。大学では外科教室に所属し、その後は八王子にある外科に強い動物病院でエコーやCT・MRIによる画像診断を専門領域として手がけてきました。また、大学病院の放射線科でも研修を受け、診断から治療に至るまでいかにスピーディに対応していくかを学びました。もともと実家が池上線沿線にあり、この地域は幼い頃から慣れ親しんだ地元です。開業するならば、なるべく土地勘のある慣れ親しんだところに腰を据えて、地域のかかりつけ医となりたいと考えていたので、こちらで開業するに至りました。
診療対象を犬と猫に限定されていますね。
自分が飼い主であったら何を最も重視するかと考えたとき、親しみやすさや信頼感は当然ですが、やはり診断力と治療力が大切だと思いました。そのため、最新鋭の超音波診断装置や、従来の検査法では捉えにくい免疫疾患の診断に役立つCRP(炎症反応)まで検査できる血液検査器材を導入したり、麻酔・手術機材なども完備して、高いレベルの診療を提供できるようにしました。また、入院設備は犬と猫に分け、大型犬も背を伸ばしてリラックスできる広い入院舎を設置しました。白い床は掃除がちょっと大変ですが(笑)、尿の色や、どこか出血している、などの異常もすぐに分かりますし、明るい雰囲気になってよかったと思っています。
奥様と2人で診療されているのも特徴ですね。
妻は眼科や循環器科を、外科は私が担当するというように役割分担しています。また男の人がだめ、女の人がだめというワンちゃんやネコちゃんもけっこう多いのですが、そんな時も問題ありません。そういう面で、男女の獣医師がいるというのはいいことだと思いますね。また、開業前に勤務していた動物病院の専門医に針治療を行ってもらったり、大きな外科手術の場合は近隣で開業する先輩の協力を得たりしています。今後もそれぞれの専門分野を生かし、この地域でも高度な医療を迅速に提供できる環境を作っていきたいと考えています。
飼い主としての視点を大切にしながら、スピーディな診断と治療を心がける
診療方針について教えてください。
私自身も犬と猫を飼っていますので、いつでも飼い主としての視点でも考えるようにしています。医学的に見て最適な治療法があっても、そのペットの住環境や飼い主さんの価値観により、一番いい方法は異なります。この地域は穏やかなで控えめな方が多いので、じっくり話し合い、飼い主さんの思いをくみ取りながら、ペットにも飼い主さんにもよりよい治療法を見つけられるよう努めています。ペットも飼い主さんも高齢化が進んでいるので、大型犬で通院が困難なケースや、病院に来るだけで興奮して血糖値や血圧が上がってしまうネコちゃんなどについては、往診も行っています。ペットの生活環境を実際に目で見ることができて、よりよいアドバイスができることもありますし、かかりつけ医として往診は欠かせませんね。
診療の際、大切にしていることはありますか。
ワンちゃんやネコちゃんは言葉を話しませんから、できるだけ長い時間、触診するようにしています。アプローチの仕方も大切で、まずは飼い主さんと穏やかな口調でお話をして、「ご主人が安心しているなら大丈夫」とペットに感じてもらいます。飼い主さんが緊張していると、「この相手には気を許せない」と、特にワンちゃんは警戒するんです。またペットの場合、早期発見というのは本当に重要な意味を持ちます。人間に比べて寿命が短いペットにとっては、人間の1日は4日分ぐらいに相当します。早いスピードで時間が流れていくので、3日間ごはんを食べないというと人間でいうと2週間近く食べていないことになるんです。吐いたり下痢したりというありふれた症状の中に、重大な病気が潜んでいるケースも多いので、いかに異常に早く気づいて、診断・治療するかが重要です。ですから当院では、スピーディな診療に対応できるよう、機材や治療薬をそろえています。
獣医師として忘れられないエピソードはありますか。
飼い主さんと、がんの治療について診察時間外にお越しいただいて2時間話し込んだことがあります。ペットを子どものように大切に思われている方も多いので納得して治療を選んでもらえるようにと考えると、ついつい話が長くなりますね。ペットは人間より寿命が短いので、お別れは避けられません。できるだけ痛みやストレスを少なく、残された時間を飼い主さんと穏やかに過ごせるようにするのも、獣医師の大切な役目です。ペットが亡くなると、通っていた病院に行くだけでも思い出が蘇ってつらいという方が多いようです。それを乗り越えて、飼い主さんが新しい子を連れて来られると私もとてもうれしいですし、改めて責任をもって診ていかなければならないと背筋が伸びるような思いがします。
飼い主さんにも、ペットにも信頼されるかかりつけ医をめざして
こちらの地域にはどのような印象がありますか。
それほどせわしい感じがなく、都内の中でも落ち着いたエリアだと思います。ただ、多摩川の河川敷などに散歩にいくとノミやダニの心配がありますので、予防意識も少しずつ高めていきたいと思います。地元の方が多く来院されるので、近所に買い物に行った時など飼い主さんと顔を合わせることも多く、ペットの様子を聞いたりすることもよくあります。反対に、私が子どもを連れていると「大きくなったねえ」と声をかけていただけることもあり、そんな地域とのつながりをうれしく思っています。
お忙しい毎日ですが、お休みの日はどう過ごされていますか。
開業以来、週に1度の休診日も入院の子がいることが多いですし、毎週のように急患もありますので、あまり自分の時間を持てないということはよくわかりました(笑)。そんな中でも夫婦共々好きなスウィーツ巡りは良いストレス発散になっています。デパ地下や街の美味しいケーキ屋さんに子どもを抱えながら足しげく通っています(笑)。今は子どもが1歳になったばかりで一緒に遊ぶのが一番楽しいですね。うちのペットはおっとりした犬とわがままな猫なんですが、子どもが生まれると意外に猫の方が兄貴肌で面倒をみてくれて、犬の方は子どもを見て見ぬふりをしているんです。面白い発見で、改めてペットの性格もいろいろだなあと思いますね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
インターネットなどに氾濫している不確実な情報に惑わされず、気になることや心配なことがあったらぜひ獣医師に相談してほしいですね。また、動物病院も多様化し、専門分野や得意な分野もさまざまなので、次々といろんな病院に行かれる飼い主さんもいます。しかし、日頃の状態を見ているからこそ気づける異常もあり、その後の状態も把握できるものです。初めての病院で嫌がるのは、緊張のせいなのか、痛みのせいなのか判断できないこともあります。理想は、すべてを把握したかかりつけ医が窓口になり、必要に応じて専門分野の医師と連携して治療し、最期はかかりつけ医が責任を持って寄り添い、診療に当たるという仕組みだと思っています。飼い主さんにも信頼できるかかりつけ医を見つけ、じっくりと付き合っていただきたいですし、私たちもその信頼に応えられる獣医師、病院でいられるように努力し続けたいと思います。