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- 山本 滋子 院長、山本 祟史 副院長
山本 滋子 院長、山本 祟史 副院長の独自取材記事
やまもと動物病院
(足立区/竹ノ塚駅)
最終更新日: 2023/01/22
コンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュな外観と、外のガーデニングがやさしく溶け合う「やまもと動物病院」。開業21年、院長の山本滋子(しげこ)先生と、息子で副院長の崇史(たかし)先生の親子に加え、崇史先生の妻も獣医師として勤務し、ファミリー感たっぷりのアットホームなクリニックだ。家族3人の普段の会話の中でも診療の話題が尽きず、「なかなか3人とも仕事から離れられないですね」と笑う。今回は院長と副院長の2人にさまざまな話を聞いた。 (取材日2017年4月25日)
一匹ずつ真摯に向き合い21年
まずは院長先生から、どんな動物病院かご説明いただけますでしょうか。
【院長】開業21年を迎える動物病院です。メインは犬・猫ですが、小鳥やうさぎなどに対してもできる限り処置を施し、場合によっては北千住などの、エキゾチックアニマルを専門に診ているクリニックにご紹介します。こちらでは、外科や腫瘍科など、さまざまなケースを診てきました。一例一例、一匹一匹すべて勉強させていただくというつもりで向き合い、そこで得た貴重な経験を次に生かしています。飼い主のペットに対する思い入れを聞いていると泣きそうになることもありますが、そこはぐっとこらえて冷静に対応しています。
日ごろ胸にとめているモットーは?
【院長】「動物の命と真摯に向き合う」「飼い主の心に寄り添う」「最善の獣医療のために努力を惜しまない」という3つが基本です。これらを実現させるための1つとして、オーナーさんと話す時間を長くとっています。例えば「昨日から元気がない」というのであれば、どういうふうに元気がないのか、いつもとどのように違うのか、その前後に何があったのかといった情報をお聞きし、診断に生かします。もちろん「なんだか具合が悪い」「なんだかいつもより食べない」といった状態でも拝見するということを心がけています。
そうしたモットーについて、副院長先生はいかがでしょうか?
【副院長】院長の言うように基本的にはすべてを診ることを前提としながら、個人的に関心がある分野に関しては特に掘り下げています。私の場合は神経内科、神経外科。CTやMRIなどの詳しい検査が必要な場合は専門の施設に依頼しています。また診察中、この症状は院長や妻が診たほうがいいと判断したら隣の診察室に移ってもらうなど、臨機応変に対応しています。また、女性の獣医師を希望される場合も、事前に言っていただければその都度応じます。
獣医師の仕事で大事な「飼い主の心のケア」
お互いをどんな獣医師だと思っていますか?
【院長】副院長は真面目ですね。オーナーさんに対して丁寧に、少しでもわかっていただけるような説明をするなど、真摯に向き合っており、非常に頼もしく感じます。またお嫁さんと2人で一生懸命やっている姿を見ると、うれしいし、安心しています。ちなみに家族で、診療が終わったあとも「あの子はああいう治療をしたけど大丈夫だったからしね」という会話はしょっちゅう。なかなか3人とも仕事から離れられないですね。 【副院長】院長に比べて知識量では負けないつもりでいたんですが(笑)、やはり相手は生き物ですから、教科書に書いてあることだけでは対応できないことがあることを日々実感しています。その点院長は、豊富な臨床経験に加えて人生の先輩でもありますから、オーナーさんとしっかりと信頼関係を構築して治療を良い方向に持っていく力は見習うべきものが多いです。
院長先生が印象に残っている症例はありますか?
【院長】余命わずかな犬と、飼い主さんの女性も病気で残念ながらあまり長くはないというケースがありました。ある時、入院のために家をあける飼い主さんに頼まれて、数日間ご自宅の鍵をお預かりし、犬の世話をさせていただいたこともありました。数日とはいえ、私を信頼してお願いされたことでしたから責任は重大でした。その後、飼い主さんが先に旅立ち、犬も追うように間もなく息を引き取りました。女性はもう1匹犬を飼っていたので、その方の妹さんが引き取って面倒をみています。獣医師というのは動物のケアもそうですが、オーナーさんの心のケアというのも非常に大事な仕事です。
院長の経歴を教えてください。
【院長】獣医師だった父の背中を見て私も同じ道を志しました。麻布大学を卒業後、最初は研究の道に進もうと、メーカーに就職。結婚して一度は専業主婦になりましたが、子どもを3人育て上げたとき、一念発起して1996年、自宅で開業しました。そこが手狭になったので2011年、ここに移転してきました。
副院長のこれまでをお聞かせください。
【副院長】母が実家で開業したのは、私が10歳くらいの時でした。実際に診療している姿はほとんど見られなかったのですが、自然と獣医師の仕事を知っていったという感じです。当時、家で犬・猫・ハムスター、リスといったペットも飼っていまして、一緒にいると優しい気持ちにもなれましたし、動物と触れ合うのは好きでした。ただ学校の勉強という意味では生物より数学や物理のほうが得意だったので将来の仕事については悩みましたが、サラリーマンとして働くよりも動物と接しているほうが楽しいのではと考えたのです。北里大学在学中に神経科の面白さに目覚め、卒業後は別の医院で3~4年勤務しつつ、総合病院で勤務したのち、こちらに入りました。
ささいな悩みでも一人で抱え込まないで
コンクリート打ちっぱなしの壁がおしゃれな院内ですね。
【院長】ありがとうございます。主人が早稲田大学でメカトロを教えていたのですが、キャンパスを覗かせてもらったとき、コンクリートの建物が鮮烈なイメージとして残っていたので取り入れてみました。 【副院長】においもなく、清潔感もあって良いと思いますね。吹き抜けや窓からは自然光も入ってきて開放的。外のガーデニングは院長がいつも世話しています。2階はオペ室、レントゲン室、トリミング室。トリマーは2人いますが、どちらも約20年のベテランで、一般的には対応が難しい子でも受け入れています。
先生方はペットは飼っていますか?
【院長】犬2匹と猫1匹を飼っています。犬種はどちらもウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアで、名前はグロブとラクト。血液成分のグロブリンと点滴の成分のラクトリンゲルからつけています。どちらの名称も私たちの世界ではなじみがあるので命名したのですが、やはり珍しがられましたね。猫は赤ちゃんの時に当院で保護した迷い猫で、里親を募集しようとした矢先に東日本大震災が発生。とても猫を飼うような状況ではなくなったこともあり、何か縁を感じて飼い始めました。名前は、春に来たので「ハル」です。今は家で、大の字になって寝ています(笑)。 【副院長】今は飼っていないのですが、毎年のように先ほどのような猫が保護されてきますので、引き取り手が見つかるまでミルクをあげるのが日課になっていますね。
最後にメッセージをお願いします。
【副院長】常に飼い主の近くにいられる病院でありたいと思います。またこれからの時代、専門分野もある程度磨いていかなければいけないと思っていますので、院長の良さを受け継ぎつつ、妻と協力しながらスキルアップしていきたいと思います。 【院長】インターネット上には動物に関するさまざまな情報があふれています。それらの中には必ずしも正しいものではないものもありますので、修正していくのも私たちの役割だと思っています。もちろん、抱えている悩みや不安に思っていることは何でも結構ですから、病院のドアを叩いていただければ一緒に悩んだり解決策を探ることができるかと思います。これからは、若い2人が、私たちが蒔いた種を大きく育ててくれるのを期待しています。街なかの小さな病院ですから、その特徴を生かして、こまかいところ、かゆいところに手が届くような獣医療ができれば素敵だと思います。