長田 武 院長の独自取材記事
セラピー動物病院
(稲城市/若葉台駅)
最終更新日: 2023/01/22
新しいマンションが建ち並ぶ若葉台駅から徒歩10分。一戸建てエリアの一角に、避暑地のカフェのような外観が目を引く「セラピー動物病院」がある。院長の長田武先生は昨年のリニューアルを機に、院内の雰囲気を一新。随所に間接照明が使われ、グリーンの壁や天然木を取り入れた院内は、飼い主にとって心地良い空間。そして、入院するペットのゲージをスタッフが通る場所に設置し、常に声をかけられるように工夫することで、ペットにとっても過ごしやすい場所になっている。長田院長は医療メーカー勤務から獣医師へ転身して25年。企業で社会経験を積んだ長田院長ならではの社会的な視点は、常にペットと飼い主にとって居心地の良い社会環境づくりを提案してくれる。親しみやすい人柄で評判の長田院長に、地域の印象や今後の展望など、興味深いお話をたくさん伺った。 (取材日2015年8月18日)
医療メーカー勤務から地域のペットを見守る獣医師へ転身して25年
まずは開業までの経緯について聞かせていただけますか。
僕は北里大学獣医学科を卒業後、30歳まで医療機器メーカーで勤務しながら社会人経験を積みました。獣医師の世界に入ったのが30歳だったので、早く開業したくて33歳で自分のクリニックを持つと時間を区切って計画を立てていたんです。そんな時に出会ったのが、新宿からほど近く、田園風景が広がるこの土地でした。1993年に開業した頃はもう少し中心街に近い場所でしたが、もっと人が少ないところにしようと思い、1997年に今の場所へ移転しました。当時はまだマンションや戸建ても少なく、当医院が初めてこの地域に建った病院でした。「今後、この地域は住人が増えて、新しい街が作られていくだろう」と思っての開業でしたが、予想どおり18年経った現在では、街の開発が進み新しいマンションや戸建てが増えてとてもにぎやかになりました。
この地域の飼い主さんの特徴はいかがですか?
都心から近く、比較的新しい街なので若い方々、そして、元々住んでいた住宅を引き払ってこの地域へ引っ越して来られた年配の方々がいらっしゃいますが、いずれにしてもペットに対する意識が高い飼い主さんが多いですね。例えば、ノミやダニの予防にも積極的に力を入れてくださります。僕がこの地域に開業する時に、一つ目標にしたことがあるんです。それは皆さんに、わんちゃんの排泄を、おうちでするようにしつけていただくことです。通常はお散歩中に飼い主さんがトイレ用の袋を持ち歩きますよね。そうではなく、散歩中に排泄をしないようにしつけるので、トイレ用の袋を持つことが恥ずかしいと思われるような地域にすることが理想です。なぜなら、都心のドッグランで、椅子などに排泄をしてしまうと嫌がられてしまうことがあるからです。それに、このような癖をつけると、わんちゃんが年を取って歩くのが大変になった時、外まで行かないと排泄ができなくなります。わんちゃんにとっても可哀想ですし、大型犬の場合、飼い主さんにとっても大変な負担になります。人間の生活の中でペットを飼うわけですから、こういうことも大切だと僕は思います。
クリニックの特徴について教えていただけますか。
現在、主に診療しているのはわんちゃんとねこちゃんで、特に得意な診療は膝関節の治療です。そのほかの外科と内科の手術も行いますし、もちろん入院も受け付けております。どうしても、さらに専門的な二次診療が必要な場合は、その部分の診療だけ専門医に任せることもありますが、必ず飼い主さんと相談して治療費を明確に提示しております。動物病院は治療費が高いイメージがあると思います。ただ、病気は突然起きる可能性もありますし、大切なペットの治療費だからこそ疑問に思うこともありますよね。ですので、当医院ではお金のことは明確にして、きちんとした見積書も作成しております。気になることは遠慮なくご相談していただければと思います。
ペットと人が過ごしやすい環境づくりにも配慮
飼い主さんに向けた情報提供にも注力しているそうですね。
これからペットを飼われる飼い主さん向けのセミナー、「知ってお講座」も行っています。体調管理やしつけ、マナーについてもお話しますが、何よりペットを飼うということへの覚悟を理解していただくことが目的ですね。ペットを飼うということは命を預かって育てること。毎日ごはんをあげて、世話をするというのは、自分の時間も削られますし、手間も労力もかかります。飼い主さんの中には、わんちゃんが床で排泄をしてしまったと騒がれる方もいらっしゃるほど、初めてペットを飼われる方はわからないことが多いもの。ですので、セミナーの中では、そういう覚悟をしていただけた上で、ぜひペットを育ててくださいとお伝えしております。現在、月に2〜3回開催しておりますが、おかげさまで参加された飼い主の方々からはご好評いただいております。初めてなのでわからないこと、イメージできないことがあるのは当然ですので、疑問があれば気軽に相談してほしいです。
これまで印象に残っているエピソードはありますか?
お腹の中で大出血を起こしているゴールデンレトリバーとその飼い主さんとのエピソードですね。出血が止まらなくて、いよいよ体内の血が3分の1くらいしかなくなり、手術をしないと出血を止められない状態でしたが、手術をしたら死んでしまう可能性も高かったんです。その事情を飼い主さんにお話したら「先生にすべてお任せします」と言ってくださったんです。そのわんちゃんは、手術中も不整脈を起こして危険な目にも遭いましたが、患部を治療して一命を取り留めました。その時、思いました。獣医師は助ける仕事だと思っておりましたが、飼い主さんの判断力に助けられることもある仕事なんだと。飼い主さんが僕を信頼して託してくださったので、あのわんちゃんを助けられたことに、今でも感謝しております。
先生が獣医師として大切にしてらっしゃることは何ですか?
獣医師になって一番うれしい瞬間は、やはりペットたちの病気が治った時です。僕はいつも午前0時までここに居て、入院している子たちのお世話をしております。当医院では入院中の飼い主さんの面会は、極力控えるようにお伝えしております。ペットは飼い主さんが面会に来ると、家に連れて帰ってくれると思って喜びます。ところが面会後に飼い主さんがいなくなると、落ち込んで病気の回復に悪影響を及ぼします。ですので、面会の代わりに何度お電話いただいても構いませんし、要望がある飼い主さんには、ペットたちの名前は公表せずホームページの「院内スケッチ」に、入院中の様子を毎日載せております。飼い主さんにも安心していただき、ペットも治療に専念できる環境をつくることで、早期回復に努めております。あと、もう1つ大切にしていることは、治療を尽くしても、どうしても寿命を迎えてしまう場合、わんちゃん・ねこちゃんに最期をおうちで迎えてもらうようにしております。なぜならペットにとって、病院で獣医師に心配されながら看取られるのではなく、家に帰って、大好きな家族に見守られながら、最期を迎えるのが一番いいと思うからです。獣医師として最も大切にしたいことですね。
動物の治療だけではなく、地域コミュニティの中の1つの存在に
先生の趣味や休日の過ごし方について教えてください。
休日は趣味を楽しんでいますね。興味の幅は広く、カヤックやサイクリング、アウトドアクッキングや読書などたくさんあります。自転車も人付き合いもお酒も大好きなので、楽しく過ごしております(笑)。あとはわが家のわんちゃんやねこちゃんと過ごす時間も大切ですね。僕にとってペットは良い意味で犬は犬。猫は猫なんです。それは、家族の中でお父さんはお父さんの役目、お母さんはお母さんの役目とそれぞれ役割分担されているのと同じです。ペットに対する愛情と、自分の子どもに対する愛情は質が違うと思うんですよね。ペットに人間を投影するのではなく、それぞれの立場で家族構成ができるようにしております。
今後の展望についてお聞かせいただけますか。
とにかく幅広く診療していきたいですね。膝の関節の外科治療に興味があるので、その手術に関して今後も新しい技術を取り入れていきたいと思っております。この度、娘が獣医の大学を卒業しますが、目を専門的に勉強してもらっているので、娘がいずれ当院で働くと同時に、その分野の治療に関しても専門的に取り入れる予定です。あとは、当医院は昨年リニューアルしたばかりでして、家内が病院の上でカフェをやりたがっているので、予防注射のあとに飼い主さんにコーヒーを飲んでもらうなど、リラックスしながら過ごしてもらえるようなつくりにしていこうと思っております。実は診察券と一緒のポイントカードも作ってるんです。ただ、動物の病気を治すだけではなく、地域のコミュニティの中の1つといった存在になりたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
とにかくわからないことは、遠慮なく聞きにきてください。当医院の強みはホワイトボードを使った丁寧な説明です。他院で診てもらっても不安が残り、セカンドオピニオンを希望される場合は、ぜひ土曜日に予約を取ってお越しください。しっかり診察・ご説明をさせていただきます。飼い主さんが理解できないまま、途中でお世話をリタイアされるのがペットに対して最も良くないことです。何度聞いていただいても構いません。飼い主さんにご納得いただけるまで、おしゃべり好きな僕がしっかりご説明しますので、ぜひご安心してお越しくださいね。