木村 太 院長の独自取材記事
みなみ小金井動物病院
(小金井市/武蔵小金井駅)
最終更新日: 2025/01/29

桜並木が続く新小金井街道沿いにある「みなみ小金井動物病院」。同院の院長を務める木村太(きむら・とおる)先生の裏表のない明るさに心落ち着く飼い主や動物も多いだろう。スタッフたちも親切なアットホームな動物病院だ。待合室の大きなガラス窓に貼られた里親募集のポスターに目を止める近隣住人も多い。開業して20年目を迎え、すっかり町の中に溶け込んでいる同院。誰もが気軽に立ち寄れて幅広くシンプルな診療を受けられる場所をめざしてきた木村院長に、医療にかける思いなど詳しく話を聞いた。(取材日2024年12月27日)
小金井で20年間、動物の健康を守る
まず、獣医師をめざしたきっかけやこれまでの歩みをお聞かせください。

父が獣医師で、家でも犬、猫、ニワトリなどたくさんの動物を飼っていて、触れ合いながら育った影響は大きいですね。でも、高校まで将来の夢はサッカー選手でサッカー漬けの毎日でした。かなり本気でめざしていましたが、最終的には獣医師の道を選び日本大学農獣医学部に進学。正直なところ「虐待されている動物を助けたい」といった大志を抱く同級生のような熱意はありませんでした。獣医学に心底魅せられるようになったのは卒業後、診療にあたるようになってからです。足立区の大きな個人動物病院に勤務し、1日に数十件対応することも日常茶飯事。幅広い診療科で数多くの診療にあたりました。素晴らしい理念を持つ動物病院で、動物との接し方、飼い主さんとの向き合い方、獣医療についての考え方、すべてを学びました。今に至るまで大いに役立っています。
開業して20年。そもそもなぜこの場所を選んだのですか。
同じく獣医師である妻と開業地を探していて、たまたまこの物件に出会ったんです。小平出身の私にとって、武蔵野公園や野川公園などがある小金井はなじみ深い場所でもありました。地域の皆さんも親切で穏やかな方ばかりですし、20年過ごしてみてあらためてここで開業できたことを感謝しています。内装は古くからの友人である建築デザイナーに依頼したのですが、待合室からは目の前の桜並木をよく見えるようにしました。今では散歩の途中で立ち寄ってくれる方や、窓に貼った里親募集のポスターに目を止めてくれる方も。「地域に根差したハードルの低い動物病院」を目標にしてきましたが、診療だけではなく地域の方々に親しんでもらえる場所になれているならばうれしいです。
こちらではどのような診療をしているのでしょうか。

犬と猫を対象に内科、外科、皮膚科、歯科、眼科、整形外科など幅広い診療を行っています。大切にしているのは「的確でシンプルな獣医療」です。近隣には東京農工大学小金井動物救急医療センターなど二次診療施設も少なくありません。だからこそ一次診療、プライマリケアを担う当院は、気軽に一般的な診療を受けられる場所として機能しつつ、必要があれば高次医療機関に迅速につなげていきたいと思っています。また、エキゾチックアニマルと鳥を専門とする獣医師も在籍しているので、犬や猫以外を飼っている方はご案内することもできます。
超音波検査をフル活用した的確でシンプルな診療を
設備面のこだわりなどを教えてください。

超音波検査装置はできるだけ先進の機器に入れ替えていきたいと考えています。診察室に置き常に使用できるようにしていますが、触診、聴診と並ぶごく当たり前の検査という感覚ですね。特に役立っているのが消化器疾患で、嘔吐・下痢の原因などもきちんと把握した上で治療できます。飼い主さんに根拠に基づく説明ができるので、安心していただけているのではないでしょうか。動物に麻酔をかける必要もなく、負担が少ない検査である点も魅力的です。液剤を温める機器も導入し、動物がヒヤリとするのも防いでいます。また、超音波検査を専門とする獣医師が開催するセミナーにも定期的に参加。トレーニングを続けてますますスキルアップしていきたいです。
これまでの診療で忘れられない経験はありますか。
ひどい皮膚病で全身が真っ赤になり、血液検査の結果も芳しくないワンちゃんがいました。思いつく限りの方法を試してみましたが良くならず、このままでは命を救えない……と悩んでいたある日、東洋医学の考え方を取り入れてみたところ、治療をうまく進めることができたということがありました。西洋医学の観点では思いもよらないことだったのでたいへん驚きました。それ以来、東洋医学に興味を持ち、動物のための漢方や鍼灸に関する勉強会にも参加しています。鍼灸は痛みの緩和にも役立つんですよ。今後も西洋医学の中に東洋医学のエッセンスを取り入れて、診療を行っていきたいです。
診療において大切にしているのは何ですか。

診断も治療もシンプルに、すべてにおいて普通であることを大切にしています。なぜならば、それこそが飼い主さんにも動物にも負担になりにくいと考えるからです。症状だけではなく、病気の原因を突き止めるためにも普段の生活はどうなのかなど飼い主さんの話にしっかりと耳を傾けるようにしています。また動物に対しては、犬はそれほどではありませんが猫には細心の注意が必要です。まず、私は身長180cmと大柄なので怖がらせないようにかがみながら診察室に入るようにしています。ドアをバタンと閉めるなど大きな音を立てず、犬の鳴き声も聞こえないようにしていますが、それでも足りない繊細な猫ちゃんもいますよね。そんな時はすぐ近くで妻が新たに猫専用の動物病院を開業したので紹介もできますから、ご相談ください。
飼い主と動物とのより良い絆のためにすべてを行いたい
今後の展望についてお聞かせください。

これからも、どのようなお悩みでもシンプルな診療を受けられる動物病院であり続けたいと考えています。いつでも気兼ねなく足を運んでほしいので土日も開けていますが、スタッフたちが頑張ってくれているからこそできることです。動物病院はハードな勤務体制になりがちですが、そうならないようにこの10年さまざまな調整を行ってきました。「スタッフの生きがいになるような場所」でありたいというのも開業時から掲げてきた目標です。開業当初、初めて採用したスタッフが今もいてくれるのは心強いですし、新しいメンバーたちのパワーにも支えられています。新型コロナウイルス感染症がはやる前は、武蔵野公園でバーベキューなどもしていましたが、また再開できたらいいですね。
お忙しい毎日かと思いますが、休日はどうお過ごしですか。
今もサッカーは続けていて、実は東京都社会人サッカーリーグ1部のメンバーでもあります。どのポジションもオールラウンドにできますが、高身長ゆえバックを任されることが多いです。ただ、残念なことに現在は離脱中。少し前に靱帯を切ってしまい復帰をめざしてお休みしています。リハビリテーション中ですが、もう一つの趣味である山岳サイクリングはできるので、険しい山道をマウンテンバイクで駆け抜けるなどしていますね。また、妻も獣医師ですので症例に関しては相変わらず話が弾みます(笑)。動物たちが会話のきっかけになってくれていますね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

動物と暮らし始めてからはもちろん、それ以前から気兼ねなく利用できる場所でありたいと思っています。犬も猫も種類によって飼いやすさはかなり異なり、専門家でなければ飼育は難しい種類もあるほどです。「自分に合っている種類を知りたい」という方はもちろん、「この種類がいいけど、合っているか知りたい」といった方の相談にも乗りたいですね。たとえマッチしていなくても「この子がかわいい。一緒に暮らしたい」と真剣に願うのであれば、全力でサポートさせていただきます。飼い主さんと動物のより良い絆のためにできることをいつも考え、これからも末永く見守っていきたいです。