遠藤邦彦 院長の独自取材記事
府中えんどう動物病院
(府中市/府中駅)
最終更新日: 2023/01/22
京王線府中駅南口から徒歩約5分の場所にある「府中えんどう動物病院」。東京競馬場を見下ろす高台の閑静な住宅地にある全面ガラス張りの医院の玄関を入ると医院で飼われている可愛らしいトラとミケの猫2匹が待合室で出迎えてくれる。院長の遠藤邦彦先生はどんな質問に対しても丁寧に受け答えしてくれる真面目な獣医師。10年ほど動物看護専門学校で講師を務めていただけに飼い主への説明力やオペの技術も定評がある。町のかかりつけ動物病院をめざしているという遠藤院長に、医院の特徴や先生が力を入れている診療、さらに獣医師をめざした理由などについて話を伺った。 (取材日2015年2月24日)
めざしているのは、どんな時でも相談できる町のかかりつけ動物病院
ここに開業してそろそろ5年だそうですね。
開業したのは2010年5月です。私は埼玉県出身なので府中にはなじみはなかったのですが、この付近は東京競馬場に近くて緑も多く、歴史ある町の雰囲気が気に入りました。古くから住んでいる人が多いところですが、近年はマンションも増え、新旧の住民が入り混じってきていると感じます。最近では動物を飼っていない近隣の方にも声をかけていただいたり、散歩途中の飼主さんにばったり会ってお話ししたりと、地域に馴染めてきたことをうれしく思いますね。
医院の基本理念を教えてください。
診療対象動物は犬と猫で、どんな病気の時でも気軽に診療に来てもらえる町のかかりつけ動物病院をめざしています。ここで一体どんな治療をされるのだろうと不安にならないように、当院の前面はすべてガラス張りで、診察室の入口のドアもガラス面が大きいデザインにしています。そのため中でどんな診察をしているのかがわかるようにしてあります。診療の際もインフォームドコンセントを徹底し、きちんと説明を行い、飼い主さんに理解してもらった上で治療を始めるようにしています。
診療の特徴を教えてください。
ワクチンなどの予防接種から歯科も含めた外科手術などの一般診療全般に対応可能です。家で何か誤飲したトラブルが起きて開腹手術が必要になった時もすぐに対処できるようになっています。がんが疑われる場合は、CTスキャンによる検査や専門治療のために設備の整った近隣の大学病院を紹介することもありますが、通常のがん治療もここで診ています。末期がんの場合で飼い主さんも積極的な治療を望まれない時は痛み止めを中心とした疼痛緩和ケアを行うなど、飼い主さんの意向に沿った治療をするようにしています。
診療に際して気をつけていることは?
できるだけ飼い主さんにわかりやすく説明をすることです。以前は私は動物看護学校の講師をしていたので、生徒に接する時のように本や模型などを使って説明することも多いですね。また、診察時には飼い主さんに実際に顕微鏡を覗いて頂き、標本を見てもらったり、モニターで拡大した画像で説明をしたりしています。例えば、この時期(冬場)多い膀胱結石では実際に結石の結晶拡大画像を見てもらうことでその症状を実感して頂けます。そのため、結石に特化したフードに変えよう、飲み水の量を増やそうという意識が高まると思うのです。そのほか、子犬から飼い始める人にはその犬が一年間にかかりやすい病気や予防法の一覧をまとめた用紙を渡しています。予防接種、感染症予防薬を服用する月度、避妊・去勢の適性時期などを記載していますが、犬種によってその時期や内容は微妙に変わりますので、その犬に合わせて作成します。
歯のケア、トリミング時の皮膚のチェックなど、ペットの健康増進に注力
歯科に力を入れていらっしゃるそうですね。
ワンちゃんネコちゃんの場合の歯科診療は歯周炎、歯周病の予防・治療が主になります。人の場合には歯石を取るのに全身麻酔など考えられませんが、小動物は抜歯だけでなく、歯石を取るだけでも全身麻酔が必要となります。そうした体に負担のかかる手術をさせないためにも、できるだけ日頃から歯のケアを実践してほしいと思っています。具体的には、毎日歯を磨いてあげて、トリートメント剤を塗ってあげることがベストです。しかしそれが無理なら飼っているワンちゃんネコちゃんができること・飼主さんができることを優先したケアを考えています。例えば、かろうじて口の中に触れるワンちゃんでしたら、歯に塗るだけでの製品をお勧めしています。また口の中を全然触れさせないワンちゃんなら、フードに混ぜるデンタル製品を使うだけでもかまいせん。そうした日頃のケアを無理なく続けられるような製品の選び方や使い方をアドバイスしています。
健康管理のためのトリミングとはどういうものでしょうか?
トリミングは専門学校でトリマー教師をしていた妻が担当しています。トリミングは美容目的だけでなく、毛を切る時に湿疹やできもの、かさぶたなど皮膚の異常をチェックするなど健康管理の一環としてやっています。そのためワンちゃんの性格などに合わせ一頭一頭丁寧に向き合えるようトリミングは当院の患者さまに限らせてもらっています。その他、爪が折れている、耳の汚れ、口の中なども同時に見るようにしています。また、トリミングしてから体重を計ると、その増減がよくわかりますので、太り過ぎの場合はフードの調整にも役立ててもらっています。
先生が今特に啓発しておきたいことは何でしょう?
近年、犬や猫のアレルギーが増えているため、少し高額になるのですがアレルギー検査をお勧めしています。食物由来のアレルギーの多くは皮膚に症状が出ることが多いのですが、下痢や嘔吐として出ることもあります。皮膚に異常がないからといって安心しきるのは危険です。昔の検査では陰性・陽性など疑いがあるかがわかる程度でしたが、最新の検査では数値で表示され、原因物質となる食材も特定されやすくなっています。こうした原因物質を回避するうえために、当院ではできるだけ病院専用食の利用を勧めています。なぜなら、一般的なドッグフードの場合はAの商品の製造ラインで、Bの商品を製造することもあり、アレルギー原因物質の混入リスクがあります。しかし病院療法食は厳格な品質管理が行われるので安心です。また、最近では犬の花粉症も増えていて、花粉に反応して皮膚炎になったり、涙が一気に出たりといったことも増えているようです。
休診の時はできるだけセミナーなどに出席し新しい情報を修得
そもそも獣医師になろうと思ったのはなぜですか?
子どもの時はインコや魚を飼っていたのですが、犬や猫は飼えませんでした。飼えなかった分、ほ乳類への憧れが強くなったのかもしれませんが、将来は動物に関わる仕事がしたいと思うようになりました。大学卒業後は、都内の動物病院に勤務しながら、知り合いから紹介された動物看護学校での非常勤講師の仕事も始めました。最初は副業という感じでしたが結果的に10年続け、その後数年間は常勤で専任講師を務めました。動物看護学校では「看護実習」という科目を担当していました。診察台の上での動物の押さえ方や検査方法、手術の準備、手術の補佐の仕方など、動物病院で看護師が行うべき仕事について実践的に教えていました。
仕事を離れ、プライベートの時はどんなことをしているのですか?
大学が神奈川県藤沢市にあって海に近かったので、学生時代からマリンスポーツやスキーを楽しんでいました。しかし開業してからは時間がとれず1年に1回くらい行ければよいほうですね。最近はよく日曜大工をしています。病院待合室の猫の家も私が作ったものです。また休診日で、日程が合えば積極的にセミナーに参加するようにしています。昔は当たり前とされた治療法と現在の治療法が全く異なることも多いです。常に新しい知識をワンちゃん・ネコちゃんの治療に役立てるように心がけています。
地域活動もやっていらっしゃるそうですね。
避妊・去勢を推奨して野良猫を減らすという地域猫活動に協力しています。また、府中市の飼い主のいない猫の避妊・去勢手術の委託病院になっているので、ボランティアの人が連れてくることも多いですね。その場合も抜糸後一週間は預ってきちんと治ったことを確認してから返しています。たまに里親募集もしますが、まったく知らない人にあげることはせず、家庭環境、家族構成、お仕事などもお聞きした上で譲渡するようにしています。競馬場の周りにも野良猫は結構いますが、避妊・去勢済みの印である“桜耳”の猫も増えています。耳を切ること自体を虐待だという人もいますが、ボランティアの人に捕まって2回もお腹を切られないようにするだけでなく、野良猫を増やさない活動をしていることを猫嫌いな人にも理解してもらうために行っているのです。
最後にドクターズファイルの読者にメッセージをお願いします。
何か異変があった時しばらく様子をみる飼い主さんは多いのですが、一日半様子を見て手遅れになるケースも多々あります。食欲がなくなる、嘔吐、下痢、尿が濃くなるなどの症状を見つけたら、できる限り早くかかりつけの動物病院に相談したほうがいいと思います。また、来院する時は動物の体内から出た吐瀉(としゃ)物、下痢のときの糞などをその場で処分せずに、必ず持ってきてください。なぜならそれらは診断の大きな手がかりになるからです。そのほか、犬や猫は家の中で飼っているのでついつい人の食べ物をあげる人もいるかもしれませんが、基本的にドッグフードやキャットフード以外の食事は厳禁です。昔はご飯にみそ汁かけたいわゆる「ねこまんま」をあげている家庭も多くありましたが、ビタミン・ミネラル不足になり、体は太っていても栄養失調ということになりかねません。「いつも同じ食事じゃかわいそうだ」と思ってやったことがペットの健康を損ねることもあるので注意してほしいと思います。