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渡邊 正俊 院長の独自取材記事

渡邊動物病院

(立川市/武蔵砂川駅)

最終更新日: 2023/01/22

立川駅周辺は商業ビルが林立し賑わいを見せているが、少し離れると昭和記念公園など広々とした空間が広がる。そんな中、五日市街道沿い、砂川町にあるのが「渡邊動物病院」だ。エントランスには、“もの言わぬ小さな命のために”という言葉が記されており、渡邊正俊院長の温かい思いが伝わってくる。待合室と診療室がオープンスタイルになっている点も印象的だ。「診察室を区切ると動物も飼い主さんもすごく不安になりますから」と渡邊院長はにこやかに話す。ホームドクターとして地域の動物と飼い主に寄り添うとともに、多くのレーザー機器を導入している同クリニック。その特徴や獣医療への思いなどについて話を聞いた。 (取材日2017年3月3日)

動物も飼い主も安心できるオープンスタイル

クリニック内はとても明るくて、オープンスタイルなのですね。

当初、開業する際に、クリニック内は明るくしようと考えました。動物たちは飼い主さんの気持ちにとても敏感で、飼い主さんが不安や不快を感じるとすぐに察知します。ですので、飼い主さんが少しでも快適に感じていただけるようガラス張りにして、室内は白を基調に明るく開放的な作りにしました。診察室をドアで区切りますと、中で何をされるのだろうと飼い主さんも動物も不安になると思います。かといって、治療の時に飼い主さんがべったりと寄り添っているのもよくない場合があります。時には動物を一人にさせなくてはならないのですね。そんな時は待合室から見守ってもらっています。動物の気持ちから考えれば、諦めても安心していられる、ということですね。中には、入ってくるなり診察室まで走ってきて、お気に入りのスタッフに抱っこをおねだりするワンちゃんもいますよ(笑)。

開業にあたってこの場所を選んだのには何か理由があったのですか?

私はもともと江東区亀戸の出身なのですが、高校の時に父の仕事の関係で国分寺に引っ越してきました。大学は、武蔵境にある日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)に通いましたので、ずっとこの地域に暮らしていました。卒業後は4年間名古屋で勤務医をしていましたが、開業にあたっては、やはりこの界隈が良いなと。しかし、動物病院は動物の出入りが多いですので、住宅街の真ん中ですとご近所に迷惑がかかるかもしれません。で、ご近所にも迷惑にならず車で来やすい場所ということでいろいろ探したところ、この場所が見つかったのです。開業当初はこの周辺にはまだ畑が広がっていて農家が多く、犬も外飼いの大型犬、いわゆる番犬として飼っていました。ですが、時代とともに小型犬を飼う家も増えてきましたね。

獣医師をめざされたのはどんなきっかけからでしょうか。

小さい頃から動物が好きで、犬を飼いたいと子どもながら思っていたのですが、案の定、うちではだめ、飼えないと親に言われて……。それで隣の家が犬を飼っていましたので、そのワンちゃんと遊んだり、自宅に連れてきて面倒をみたりしていました。高校になって進路を決める際に、生物学も好きでしたので理系の道に進もうと思いました。その時に獣医師という仕事があるのを知り、動物も好きでしたからやってみようと思ったのです。

眼科や歯科、腫瘍科に注力。各種レーザー機器も導入

こちらの診療方針を教えてください。

ここにやってくる動物たちは、みんな自分の大切な子どもであると思いながら診察しています。私自身、大学時代から飼っていた犬をがんで亡くした経験があるのですが、ここに来る犬や猫たちが、自分の犬や猫だったらどうだろう、どうするのが最も良いのだろうかということを常に考えながら診療しています。動物たちの体のコンディションに加えて、飼い主さん側の状況も考えながら、治療法については複数の選択肢をお話し、一番良い治療法を探るようにしています。動物たちは自分の口では話せませんから、その分、飼い主さんとのコミュニケーションが重要になります。初診の際は、じっくり時間をかけてお話を聞くようにしています。特に他院からの紹介や転院の場合は、診療時間とは別の時間枠を設けることもあります。

ほかに普段心がけていることはありますか。

常に清潔感を保つようにして、動物と飼い主さんが少しでも不快な思いをしないように気をつけています。オープンスタイルで、外や待合室の様子も見えますので、クリニックに入ってくる時の様子も随時チェックしています。外を歩いている時は足を引きずっているのに、クリニックの中に入るとしゃんとする犬もいますので、普段の様子を把握することが大切なのですね。待っている様子を見ると、飼い主さんとの関係性もある程度わかって、動物の生活状況全体を把握する参考にもなります。

診療動物と力を入れている診療分野を教えてください。

診療動物は犬と猫です。力を入れている分野は、眼科、歯科、腫瘍科です。眼科疾患では緑内障が多いですね。普段からペットの目が赤くなっていないか、涙が多いかなどよくチェックしていただきたいと思います。歯科疾患では歯周病が多く、歯周病は歯だけではなく心臓や腎臓、胆嚢など内臓の病気を引き起こす原因になります。最近ではいろいろなデンタルケアも出ていますので、普段からケアするようにしてください。このようないろいろな病気を早期に発見するためにも、健康診断はやはり重要ですので、健康診断にも力を入れています。もともと動物には病気を隠そうとする習性があり、飼い主さんでもわかりにくいことも多いのですね。定期的な健康診断で体調をチェックするとともに、日常生活などについてもお話を聞いて、総合的な観点から動物の健康状態を把握するようにしています。

各種検査機器やレーザー機器も充実しているようですが。

動物のコンディションを把握するためには正確な検査が大切ですので、コンピュータ画像処理レントゲンシステムや電子内視鏡、血液検査機器、デジタル顕微鏡画像処理システムなどのさまざまな検査機器を導入しています。また、獣医臨床レーザー研究所を1985年に立ち上げて、大学やメーカーなどと協力しながらレーザー機器の開発研究も行っています。現在、当クリニックでは、眼科、歯科、腫瘍科、一般外科などでそれぞれ目的に応じたレーザー機器を全部で11台導入しています。

普段から動物をよく見ることが早期発見につながる

これまで心に残ったエピソードはございますか。

小さなお子さんが親となり、そのお子さんがまた犬を連れて来られると、だいたい同じような犬の場合が多いのですね。世代は変わっても犬の飼い方は同じなのだなと実感することも多いですね。市役所の依頼で小学生に仕事の体験談を話す機会もあるのですが、その時、獣医師になりたいと言っていたお子さんが獣医系の大学に入ったと聞いた時もうれしかったですね。長く開業していますので、近隣の子どもたちの成長をずっと見守っている感じです(笑)。はす向かいの阿豆佐味天神社には養蚕の神を祭った社があり、蚕の天敵がねずみであることから、猫を守り神にしています。猫のお札を持ってくる飼い主さんも多く、治療後にお札を猫の首にかけてあげたりすることもあります。こうした地域の方々との触れ合いが印象に残っています。

休日はどのようにお過ごしですか。趣味なども教えてください。

開業しても日々勉強で、学会の論文など原稿を執筆している時も多いですね。なかなかゆっくりできないのですが、料理が好きなので友人を呼んでパーティーを楽しむこともあります。器や盛り付けにもこだわって、懐石料理のようなスタイルで作ることもあります。もともとモノを作ることが好きなのでしょう。スタッフの壊れた自転車を直したり、DIYでいろいろなモノを作ったりしています。実はレーザー機器なども色を統一したいと思いカッティングシートを張ってあるんですよ(笑)。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからも長く続けていけるよう努力するとともに若い獣医師スタッフを育てていきたいですね。それと動物により負担のかからない獣医療や機器の普及啓蒙にも努めていきたいと思います。そして飼い主さんの心に寄り添えるように、いろいろな相談にのっていきたいと思っています。動物は何も話せませんので、飼い主さんは普段からよく気を使って、よく見るようにしてください。そして、いつもとちょっと様子が違う、何か気になるということがあれば、気軽に相談に来てくださいね。

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